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120話 戦争
十二章 くじらと死の戦場
そこにはあまりにもたくさんの人がいた。
ただいるだけではない。活動していた。みんなが必死で活動していた。
その熱気に思わず気圧されて、よろけて、その背中をそっとアレクサンダーに支えられる。
カグヤはそれでも、目の前で起こる『なにか』から目を離せなかった。
どうやら『たくさんの人』は二つの集団にわかれているようだった。
その集団同士は遠くから互いの集団に向けて駆けて、ぶつかり合うと、手にした武器をふるって、相手を傷つけ始めた。
傷つける、というか、それは身のこなしや鎧によって防がれているだけで、どう見たって、『殺そうとしている』というような様子にしか見えなかった。
数えきれないほどの人数の、二つの集団が、殺し合っている。
カグヤはこの現象を知らなかったけれど、
「ああーまずいモンにでくわした」
アレクサンダーがうんざりした調子でつぶやく。
振り返ってそちらを見れば、アレクサンダーは心底うんざりした様子で肩をすくめて、
「こりゃあ、『戦争』だ。人間同士の殺し合いだよ」




