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111話 プリズムに照らされた地下街
十一章 ルカが壊したオールブライト
その街は地下にあったけれど、住人たちはみな視界に困ったことはなかった。
空の明るさを感じることもできたし、しっかりと天井のある地下だというのに、朝も昼も夜もあった。
そのアリの巣状に広がった地下都市の中心には、一本、大きな大きな石が――プリズムが、柱のようにはまり込んでいる。
その石は地上に頭を出していて、空が明るければその明るさが石に当たって、石の内部で複雑に反射して、そうして地下の街の最下層にまでとどくのだ。
すべてが輝いた街。
だからその街の住人は、特に石の反射の都合でもっとも明るい場所を「すべての輝きが集まる場所」と呼ぶ。
名前は識別のための記号というだけではなかった。
人々は誇るものに名前をつけたがる。
『あのやつ』『あれ』などとぞんざいに呼ぶにはもったいないものには、たとえ日常会話の中で通じても、名前がつけられることがあるのだ。
さる赤毛の少年もまた、この街を誇っていた。
なんの疑問を抱かず、まじめに、真摯に誇っていた。
本当に、誇っていたんだ。