光の守護者
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泣きじゃくる少年は声を震わせながら必死に叫んでいた。
「クレアァァ!やだ!ダメだ!オレを、おいていかないでくれ」
腕に抱かれ、今にも息絶えそうな少女は最後の力を振り絞って言う。
「泣かないで?フィル。私は死んじゃうかもしれないけど、君と出会えたことは後悔しないよ。
私、幸せだったの。君が灰色だった私の毎日に彩りをくれた。私の生きる理由になった。」
「でも...死んだら意味がないっ!俺はこんな力を持っていながら間に合わなかった!俺は...」
彼女の血は無情にも流れ続ける。
「こんなだなんて言わないで?私はね、あなたの包み込んでくれるような優しい光が好きよ?
これからあなたはその力できっとたくさんの人を助けることができる。だからもし、私みたいな子がいたら助けてあげてね?
ほら、いつまで泣いてるの?
私、笑ってるフィルが好きなの。」
消え入るような彼女の声を聞いてオレは涙でくしゃくしゃになった顔を必死に笑顔にする。
「ありがとう、フィル...」
それだけ言うと彼女は切なげにしかし、満足そうに笑って、いってしまった。
「わかったよクレア。約束だ。もう、二度と君みたいな最後は迎えさせない!必ず助けてみせる。
ありがとう、そしてさよならクレア。」
その時には少年は自然と泣き止んでいて、心の中に静かにしかし決して揺らぐことのない決意を固めた。
*
〜6年後〜
「君が王都オリュンピアの我が魔導十隊に入ってもう5年か。時が流れるのは早いものだな。」
机に肘をつき、楽しそうに笑う男はしかし、こんな状況でも全く付け入る隙がない。
「それでマリウス総隊長、いったい俺に何の用なんです?」
「ふむ。零番隊の隊長である君にふさわしい任務だ。」
「十まである隊の中で唯一団長の顔が割れてない俺にふさわしいってことはそういうことですか?」
訳ありげにニヤリと笑うと
「ああ、これは極秘任務であり潜入任務だ。君には魔法学園アトラスに潜入してもらう。」
*
任務の内容はこうだ。
最近、アトラスでは妙な噂がある。
なんでもアトラスの所有している訓練用の森の魔獣が急激に凶暴化したり、生徒が急に正気を失って攻撃魔法を乱発したりと黒い噂が絶えないのだ。
そして今年の新入生にはオリヴィア・オリュンピア、そうこの国の王女がいるのである。
そして俺の役目は新入生としてアトラスに潜入し、王女の警護とこの噂を解決してくることだ。
(どうもこの噂、裏があるようにしか思えないんだよなぁ)
そんな風には思いながら学園に向かい歩いていると、近づくほどになんだか騒がしい。
近くにいた女性徒達が目を輝かせて言う。
「あれ、オリヴィア様じゃない?」
「ほんとだ!!オリヴィア様だ!なんて美しいのでしょう...」
そう、騒ぎの中心にはこの王国の王女であり、俺の警護対象であるオリヴィア・オリュンピアがいたのだ。
太陽の光を透くような金髪を腰まで伸ばし、空みたいな澄んだ青い瞳をしたオリヴィアは言う。
「皆さま、この学園では身分など関係ありません。ですから、このようなことは...」
そこにはオリヴィア様!オリヴィア様!とたくさんの生徒が詰めかけていた。
そんな喧騒の中で遠くから何かが聞こえる。
ドンドンドンドン!
地鳴りのような音が聞こえる。それもだんだん近づいてくるような。
ドンドンドンドン!!
そしてその輪郭があらわになる。遠くに見えるあれは間違いなく魔獣であった。
(ここまで露骨にやるのか!?間違いない、これは単なる噂なんかじゃない。確実に誰かの手引きによるものだ。)
その魔獣はゆうに3メートルはある黒い体をした狼のような姿をしていた。そして目には魔獣の証である赤い瞳。
(こんなの並の学生じゃ歯も立たないぞ!?状況は思ったより深刻なのか。クソッ!)
俺は悪態を吐きながら人目につかなそうな路地に駆け込む。
校門付近が悲鳴に溢れ、逃げ出す生徒でごった返している。
そんな中彼女は
「落ち着きなさい!あなたたちは魔法という稀有な才能を認められたアトラスの学生でしょう!」
魔法で拡声されたであろうオリヴィアの凛とした声が響き、周りの生徒が固唾を飲んで彼女を見つめる。
「障壁魔法は入学試験にあったので皆使えますね?」
周りが無言で頷くのを見ると
「ここにいる全員で障壁魔法を使って時間を稼ぎます!ここは校門です。時間さえ稼げばすぐに誰か来てくれる可能性が高いでしょう!」
オリヴィアがそう声高らかに言うと
「確かにそうだ!俺たちは認められたんだ!」
「これだけ人数がいるんだもの!魔獣の一匹くらい止められるわ!」
これが王女のカリスマというべきか、さっきまで慌てふためいていた生徒を一瞬でまとめ上げると障壁魔法のタイミングを即座に説明する。
狼の魔獣が近づいてきたのを見計らうと
「......今です!!」
そこにはオリヴィアの障壁魔法を大本に作られた巨大な一枚の壁が現れた。
壁が現れて少しもしないうちに魔獣が激突する。
通常ならばオリヴィアの判断は誰1人怪我もしない完璧な策だったのかもしれない。
ーーーーーそう、通常ならば
「嘘...?障壁にヒビが...!」
本当ならゆうに10分は稼げていただろう障壁がわすが数十秒で砕け散ろうとしているのだ。
皆、悲痛に顔を歪ませながらも懸命に魔法を維持している。
その魔獣は普通のものの3倍は強化され凶暴していると見られる。
この場における最善策は1人でも多く逃げ切ることだったのだとオリヴィアが気づいた時にはもう手遅れで障壁は今にも砕け散ろうとしている。
パリンッ!!
オリヴィアの表情が絶望に変わり、大きく開けられた口が生徒たちを屠ろうとしたその刹那、光が割り込み
ーーーーーースパァンッ!!
そこにいたのは真っ二つになった魔獣と魔道十隊の白い隊服を着て目のところだけくり抜かれた仮面をつけて光の剣を携えた男だった。
「え...?助かったの...?」
周りの生徒が自分の安全確認して困惑している中
「あ、あれって...!魔導隊!?」
「あの純白の隊服に仮面、光の剣って...!」
「零番隊の隊長だわ!!光剣よ!!魔導隊が助けてくれたんだわ!!」
周りが歓声一色になる。
そう、そこには魔法を扱うものなら誰でも憧れの対象である魔導隊のそれも隊長、光剣と呼ばれる男が立っていた。
(っと、なんとか間に合ったか。王女は...無事か。よし。しかし、あれだけの魔獣、そうそう用意できるものじゃない。この裏にいるのは相当でかい組織だぞ。)
「なんで零番隊の隊長がこんなところに...?」
皆歓声を上げる中1人オリヴィアは助かったことに安堵しながら、考えるのだった。
その疑問に答えるように光剣が言う。
「最近この森の魔獣が凶暴化していると聞き調査に来た。これからもまま見かけると思うが気にしないでくれ。」
そういうと辺り一帯が急激に明るくなり、視界が元に戻った時、そこには誰もいなかった。
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