海遊び─日焼け止め
砂泉駅方面から来る人混みの様子を尻目に、一通りの準備が終わっている俺たちは、パラソルの下でゆっくりしていた。朝っぱらからがっつり走ったので若干の疲労を感じるが、これくらいでへばっていてはしょうがない。疲れていたところで、どのみち海に来ているのだから、どこからか遊ぶ体力も湧き出してくるだろう。こんなことなら普段からもっと走っておけば良かったなとも思うが、今更どうにかなるものではない。そんなことを考えるくらいなら、今目の前にある砂浜を満喫した方が楽しいに決まっている。
という訳で疲れているという言い訳もほどほどに活動を開始する。
ネットや浮き輪といった、遊具の準備は完了しているので後は、日焼け止めを塗ったら準備完了となる。
「ぐろちゃ~ん、日焼け止め塗ってあげる~」
「えっ、いや、自分で塗……」
「いいからいいから~」
「ひゃっ」
隣のパラソルから、変な声が聞こえてくるが、そっちを見たら危ない気がするので俺は、自分の日焼け止めを塗ることに専念する。康祐も俺と同じ考えの様で、苦笑いをしながら俺の方を見てくる。
命知らずの大地はと言うと、すごい勢いでそっちを見てしまう。いいねぇ、なんて呟きながら見ているが、彼女持ちがそんなんでいいのかと不安に思う。しかも当の彼女もすぐ側に居るのっていうのに。そんなことを考えていたのも束の間、大地の後頭部に向かって途轍もない勢いでタオルが投げつけられる。それを投げた主は……、もちろん渚だ。満面の笑みで親指を立てているので俺と康祐もサムズアップを返す。大地が我に返って振り返ると、渚は満面の笑みを浮かべたまま、親指の向きだけが上下入れ替わっている。笑顔の裏からあふれ出る殺気を殺し切れていない。
触らぬ神に祟りなし、ここは大地に人柱になってもらうことにする。元凶が人柱になるのは至極当然な気もするが。
いてぇと文句を言いながら頭をこする大地が日焼け止めを塗り終わると、7人全員の準備が終わったことになる。
いくら他の観光客より早く準備を始められたとはいえ、あまりにもゆっくりしすぎるとビーチが混雑してしまう。朝練をしていた時にはまだ暑くなかったが、だんだん砂浜に熱が籠ってきていて、遠くの景色が揺らいで見える。
「ほらー、大地の準備が遅いからビーチが混み始めちゃった」
「いや、誰のせいで遅くなったと」
「ん? 他の女の子に色目使ったのは誰かな?」
「使ってねぇから」
隣で言い合いをしているカップルがいるが、仲裁してもいいことがなさそうなので放っておくことにする。
なんだか、もう一日たったような気がするが、まだ午前中なので時間はたっぷりある。海を満喫するのはこれからだ。




