夜の散歩
布団に入ってからどれくらいの時間がたっただろうか。どうにも目がさえてなかなか眠れない。
「困ったら周りの人に頼るのもいいよ、か」
夕食後に厚さんに言われたことが頭の中を繰り返しよぎる。頼るのもいいよ。勝手な自負だが、俺はどちらかと言うと周りに頼られる方だと思っている。なので、周りに頼るということはあまりしてこなかった。……いつからこうなったかははっきり覚えてはいないが。それでも小学校に入る頃には周りと比べてしっかり者だったような気がする。
余計なことを考え始めた所為で完全に寝れなくなってしまった。部屋には月明かりが差し込んできていて、電気が付いていなくても時計が見える。時刻は12時過ぎ。明日は特に早起きをする必要もないのでこのまま急いで寝る必要もない。みんなが寝てるのは早起きをした上に一日中活動して疲れてるからであって、今日は夜更しをしてもいい日だった。という訳で眠れないまま布団にこもっていても仕方ないので部屋を抜け出してそのまま海の家の外へ行く。
朝は水平線から太陽が昇ってくる綺麗な朝焼けが見えたが、今はキレイな満天の星空が頭上に広がっていて、天球の真ん中には満月が鎮座している。地元に比べて余計な明かりも少なく、星がいつもより多く見える。
朝と同様に波の音と、自分の足音をBGMに散歩をする。薄暗い砂浜には生き物の気配が感じられない。そういえばいくら静かだったとは言え朝には鳥が賑やかしをしてくれていたんだな、なんて思う。
しばらく歩いていると足元にヤドカリを見つけた。ヤドカリの実物を見るのなんていつぶりだろうか。俺はなんとなくでその場に立ち止まってしゃがみこむ。
波が来るたびに流されて、ひっくり返ってはまた戻ったりを繰り返す。何度か流されたタイミングでヤドカリは波が届く範囲から抜け出した。確かに時間はかかったが、無事に苦難を乗り越えることができたようだ。苦難を乗り越えることが出きた、なんて大層な言い方をしている自分に少しおかしさを感じながら立ち上がる。
聞こえてくるのは波の音と、砂を踏みしめる音だけ。
そろそろ時間もたったし帰ろうかなと思い海の家の方向を向こうとする。
……砂を踏みしめる音? 立ち上がったばっかで歩き始めてないのに砂を踏みしめる音がするのはおかしくないか? 俺は慌てて振り返る。
「あ、バレちゃった」
振り返った先には見つかって少し驚いた顔をした夜黒さんがいた。
「バレちゃったじゃないよ……。寝てたんじゃないの? 」
「夜は吸血鬼の時間だから。……嘘々、目が醒めちゃったから外来ただけ」
少しふざけた夜黒さんをジト目で見続けると、すぐに撤回して慌ててほんとのことを言ってくる。俺はやれやれと言った感じで肩を上げる。
「晴気君は? 」
「……俺は寝れなかったから夜の散歩に」
「だよね。ちょっと眠そう」
「そうか?」
「うん、珍しく眠そうだよ」
「珍しくってなんだよ」
「だって学校で眠そうにしてることないんだもん」
「夜黒さんは眠そうな時多いよな」
「余計なお世話ですー」
夜黒さんが舌を出しながらムスッとした感じで言ってくる。それでも目元は笑っているのでいつものやり取りだななんて安心する。
「……眠いんなら戻る?」
夜黒さんが心配そうにこちらを見上げてくる。
「そうしよっかな」
そういう訳で俺の夜の散歩は終わり、部屋へ戻った。さっきと比べて大分リラックスした状態だったのでスムーズに眠りにつくことができた。
一周年です。やったね




