もっと周りに頼るべき
「それにしてもお昼の人怖かったー」
「ああいう人見たの久しぶりだったよ~」
夕食の時間、夜黒さんと大鳥さんの二人は、昼間の男について話していた。俺も、まさか本当にあんな迷惑な客がいるとは思いもしなかった。毎日のように手伝いをしているであろう大鳥さんが久しぶりに見る程度には珍しい人に、二日間という短いバイト期間で遭遇するのもなかなかなものだ。
「それにしても、晴気君も一人でどうにかしようとしちゃダメでしょう」
「ん、あぁ。そうだな」
急に話を振られた俺は生返事を返してしまう。恐怖心こそなかったものの、自力ではどうにもできなかったことだどうしても歯がゆかった。
そんな思考が顔に出ていたのか、大鳥さんが続ける。
「別にあんなの高校生がどうにかできる物じゃないし~。気にしなくていいんだよ~」
「つってもなー」
どうにかできるものではない、と言われてもどうにかできたのではないかと考えてしまうのが悲しい癖だ。
「まぁまぁ、困ったら周りの人に頼るのもいいと思うよ」
「厚さん」
背後の厨房から厚さんが声を掛けてくれる。
「僕みたいにね、ははは」
「親父はすぐに私に頼るんだから~」
「友々里にはいつも助けられてるよ」
「ほんとだよ~」
そんな二人のやり取りを見て食卓は笑いに包まれた。
「「ごちそうさまでした」」
夕食を食べ終わった後、大鳥さんと食器の片づけをしに厨房へ向かう。
「スポンジってどこにある? 」
「えっ? スポンジならそこの棚の上~」
「えっと……、ここか。ありがと」
「ん~。……てかお客さんなんだからみんなと一緒に戻ってていいのに~」
「なんか悪いじゃん」
「はぁ……」
大鳥さんは軽くため息をついてから口を開く。
「さっきの話の続きになるけどさ~、晴気君はもっと周りの人に頼るべきだと思うよ」
「……そんなにか? 」
「そ~、そんなに。そこに関してはうちの親父を見習ってもいいくらいだと思うよ」
急に話に出された厚さんは軽くむせる。
「こら、友々里、何を言ってるんだ」
「でもそうじゃん」
「……。確かに快人君はもっと肩の力を抜いてもいいかもしれないね」
少し考えてから厚さんが再び口を開いた。肩の力を抜いてもいいかもしれない、と言われてもやっぱりどうにもわからない。
「もう少し抱え込む量を減らしても良いと僕は思うかな。まぁ分からないにしても、もう少し自分でやることを減らしても良いと思うよ。ほら、そういうわけだから戻った戻った。子供は子供らしく遊んで、片づけは僕がやっておくよ。友々里も快人君と一緒に戻ってあげなさい」
「ラッキ~、じゃあ晴気君、戻ろっか」
そういわれて俺たちは厨房を離れる。ありがとうございます、と軽く会釈をして部屋を出てみんなのところへ向かう。
部屋ではみんなでゲームをして遊んでいたので俺と大鳥さんの二人も合流した。大人数でやるパーティーゲームをやって眠くなるまで時間を過ごした。ビリになるのはほぼ決まっていた、誰とは言わないが。
「もー! もう一回やろ、もう一回!!」
最初こそうるさかった夜黒さんだが、夜遅くになるにつれてだんだんと元気がなくなってきた。夜黒さんの睡魔が限界を迎えそうなところで今日の遊びはお開きになった。
明日は海の家の手伝いもなく、待ちに待った海で遊ぶ時間だ。久しぶりの海遊びに胸を高鳴らせながら布団にもぐるのであった。




