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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ちょっと不安な夏休み
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夏祭り─帰り道

 花火大会が終わり爆発音が無くなってことで辺りはさっきよりも静かになる。暗い公園が珍しいのか、走り回って遊んでいる子供を横目に俺たちは公園を後にする。……俺たちといっても俺と夜黒さんの二人だが。大地と渚の二人はこの後も話をするらしく、まだベンチに残っている。二人のイチャコラを弄って遊んでもよかったが、見ているこちらが胸やけしそうだったので途中で離れることにした。夜黒さんもややひきつった笑みを浮かべている。


 二人で適当な話をしながら先ほど登ってきた坂道を下り、橋に出る。まだ火薬のにおいが残っていて花火大会の残滓を感じさせる。公園で少し時間を潰したからか、さっきまであった人影はほとんどなくなっている。

 さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っている。河の流れる音がよく聞こえる。

 水辺だからか少し涼しい。でも夕方の屋台の通りが暑かっただけかもしれない。


「二人とも幸せそうだったね」


 橋の下で花火を片付ける人たちに目を流しながら、夜黒さんは呟いた。


「そうだな」


 と返事をする。

 お互いに長年思いあっていたからだろうか、それとも単純に彼女彼氏ができたのがうれしいのだろうか、残念ながら俺にはよくわからないが二人が笑顔だったことだけはよくわかる。

 ああいう関係には漠然とした憧れがあるが、誰かとああいう風になりたいとは思えていない俺には恋愛は向いていないのかもしれない。


「私もああやって笑顔になれる関係の人がほしいなー」

「美少女なんだからその気になれば余裕だろ」

「えっ? 美少女って……」


 不意をつかれたようにキョトンとしてこっちを見つめてくる。黙っていれば完璧だと思うんだけどなぁ、なんてことを考えながらも、面と向かって美少女といったのは良くないような気がしてきて、慌てて付け加える。


「最初にも自分で言ってただろ。かわいいから変な人が寄って来るって」


 すると夜黒さんは少し唇を尖らせながら、


「まぁ言ったけどさぁ……」


 何て言う。ぎりぎりごまかせたか……?


「そもそも外見で寄ってくる人ってあんまりいい印象ないからなー」


 何かを思い出すように夜黒さんは続けてしゃべる。……色んな事があったんだろうな。本当に色々。


 「私が声かければきっとOK貰えるんだろうけどさ。果たして大して関わりない人に向けてさ、さっき渚ちゃんみたいに私は笑えるのかなって思い始めてさ。まぁそもそも私には声を掛けるような度胸もなければ、声を掛けるような知り合いもいないんだけどネ……」


 段々と声の元気がなくなっていく夜黒さん。まぁこれまでボッチで生きてきたのだからそう思うのも無理はない。


「まぁ今は友達が沢山いるからそれで満足だけどね」

「確かにな」


 少しの沈黙の後、打って変わって笑顔になる夜黒さん。そして思いついたようにまた口を開く。


「ねぇ、どっちが先に付き合えるか勝負しない?」

「なんでまたそんなことを」

「おもしろそうだから? 晴気君だってほとんど高校ボッチだったんでしょ? いい勝負になると思うんだけどなー」


 こちらを見上げながら、明らかに挑発してくるような目で見てくる。ちょっとイラっとした俺は、


「いいぞ、乗ってやる」


 と乗ってしまった。後になって後悔するに違いない。


「……といっても、お互いに恋愛が分かんない以上は付き合ってもいいことないと思うけど」

「んー、それならどっちが先に恋愛を理解できるかで勝負にする?」

「まあそれくらいならいいんじゃないか」

「じゃあ決まりー。じゃあもうライバルなのでお話してあげませーん」

 そう言って夜黒さんは嬉しそうに手を叩いて会話が終わる。話をしないと言われたが、まぁどうせすぐにしゃべることになるんだろうな、なんて考える。


 しばらく無言の時間が続く。


 ただそれでもこの無言の空間にどこか心地よさは覚えたので、二人でいながら無言の空気に浸るのも悪くないかもしれない。視線を感じたのでふと横を向く。するとこちらを見ていた夜黒さんと目があい、夜黒さんは笑みをこぼす。俺もつられて軽く笑顔になる。これからは友達で、保護者で、ライバルというめちゃくちゃな関係になるのか。ずいぶんと複雑な関係だな。そんなことを考えながら帰り道を歩いた。




「じゃ、また明日」

「うん、バイバイ」


 今日は渚の家に泊ることになっている夜黒さんは俺の家を通りすぎて、渚の家に向かう。


 家の電気はついていない。どうやら深雪はまだ外にいるようだ。


 独りになった俺は、改めて大地と渚の二人について考える。二人が結ばれたことに対する祝福の気持ちがあるなかで、俺にはない何かを目の前で見せつけられたことに対する不満が少しはあるのかもしれない。みんなこうして大人になっていくのかな。……俺もいつかああいう風に笑える相手が見つかるのだろうか。


 そんなことを考えながら手を洗っていたが、急にチャイムが鳴り俺は慌てて玄関を開ける。するとそこには涙目の夜黒さんが立っていた。


「渚ちゃんがいないのに一人で入るのが気まずくて……」


 あー、分かるわー。ということで渚が帰ってくるまで夜黒さんはうちにいることになった。

 ちょっと拗ねていた可哀そうな夜黒さんを渚が迎えに来たのはそれから数十分後だった。彼氏ができて浮かれるにしても、もうちょっとしっかりしていて欲しいと思った今日だった。

『血を吸ってもいいですか? 』夜黒さんのセリフをちょっと修正してきました。

 今まで別の人から吸っていたように見えるセリフになっていたのでそこの修正です。夜黒さんは親くらいしか吸血相手いませんよね……。

 気を付けてはいたつもりですけど結構キャラがブレブレなので序盤の大幅修正が入るかもしれません。

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