夏祭り─花火会場へ
二人でまた大通りを歩き始める。花火の時間が近づいてきているため、さっきまでより人混みは空いているように感じる。俺たちもその人の流れに沿って花火の会場に向かって歩く。
「あの二人どうなったかな?」
隣で夜黒さんが首をかしげながら聞いてくる。
聞かれたところで明言できるはずもなく、
「んー、流石になんかあると思うけどな」
という俺の適当な返事に、
「だといいよねー」
安心半分、不安半分といった感じで同意した夜黒さんだった。
しばらく二人で無言で歩く。といっても無言はやっぱり気まずいので適当な話題を振っておく。
「もう食べなくていいのか?」
「もう沢山食べたから大丈夫ですー」
頬を膨らませながらこちらを睨んでくる。……まぁ睨まれても怖くないのだけど。
「もうそんなにほっぺに肉が付いたのか。すごいな」
「……吸血鬼だから消化が早いんで」
ちょっとの間が空いた後、俺たちは顔を見合わせて笑う。
ひとしきり笑った後に、はぁ、と一度ため息をついてから口を開き、
「やっぱ晴気君といると楽しいや」
と満面の笑みでそう言い切った。
どうしても素直な好意を向けられると照れてしまう。……そしてそれを茶化してしまうのも悪い癖かもしれない。
「渚はどうなんだよ」
「渚ちゃんはね……。楽しいけど疲れちゃうんだ……」
少し遠い目をしながら言う。確かに普段から(物理的に)いじられ続けているのを見ていると確かに疲れるというのもよくわかる。あいつのスキンシップは少し過剰なところがある。……そして夜黒さんにもそれは少し伝搬していて、最初よりスキンシップが激しくなってきている。ある意味でそちらの方が素なのかもしれないが。
「ねぇ、晴気君は恋愛とか興味ないの?」
渚の話題から恋愛の話に移動する。といっても渚と大地は絶賛現在進行形なので話題としては地続きだった。
……恋愛か。興味がないわけではないし、できるならしてみたいが、今までそういう感情を特に抱いたことはなかった。身の周りのこと、宿題やクラブ活動、それから深雪の面倒を見ているので小さい時は忙しかった。今もまぁ、身の回りのこと、勉強、……深雪の面倒を見ているので忙しいことに変わりない。
その辺が落ち着いたら周りを見るようになるのかなぁ。何て考えたが、そもそも深雪も渚も、最近は夜黒さんが身の回りにいるがやっぱりそこのレベルが高すぎて普通の女子には靡かない気がしている、外見に限った話だが。恋愛は外見より中身、みたいな話もあるので実際どうだかわからないが。
なんてよくわからない自分なりの恋愛観を考えながら適当に答える。
「あるかないかで言えばあるんだろうけどさ。正直そこまで余裕がなくてわからないかな」
「あー、分かるー」
「夜黒さんは?」
「うーん。私はそういうお話は好きなんだけどさ、実際だと周りの人には避けられてたから。そういう感情を持ったことはないかな。だからおんなじ感じ。興味はあるけど全然わからないっていう」
「あー、分かるわー」
俺たちは互いに分かるーとだけ適応な相槌を打っていたが、それでもお互いの理解はしっかりできてたんじゃないかなんて、勝手ながら思った。たどってきた道こそ違えど似たような場所にいる。……ちょっと厨二臭いかな。
まぁそんな恋バナとも呼べるかどうか怪しい話をしながら、俺たちは花火の会場に向かって歩き続けたのだった。




