夏祭りに行こう
あのドタバタから一週間と少し、今日は日暮祭りが開催される。正確には今日と明日に開催されているから少し語弊があるかもしれないが。ただ俺たちが行くのは今日の一日目になっているのでメインは今日みたいな感じだ。
深雪は今日は中学の友達と祭りに行くらしいので同行はしていない。とっても、明日の夕ご飯もおそらく祭りの買い出しになるので二人で行くのだろうけど。
「お待たせ―」
自分の家の玄関の前で待っていると、隣の家の玄関から浴衣姿の渚と夜黒さんが出てくる。渚は濃い藍色の浴衣を着ていて、普段は簡単に縛っているだけの髪を編み込んでいる。とても落ち着いていて、大人っぽく見える。……みんな大人になっているんだよな、なんて当たり前のことをしみじみと感じる。
となりにいる夜黒さんは、紺色の生地に、黄色い花の描かれた少し子供っぽい感じの浴衣を着ている。……これは深雪の昔の浴衣だな。深雪があれを着てたのももう昔なのか、なんて当たり前のことをしみじみと感じる。……中身の夜黒さんがいつもより子供っぽいので浴衣とマッチしていることは置いておこう。
かくいう俺も甚平を着ていて、なんだかんだ祭りモードになっている。草履のようなサンダルも履いているので雰囲気はしっかり出せているだろう。
そんなことを考えながら無言でいると、
「あ、なにー、見とれちゃったー?」
と夜黒さんが嬉しそうに言ってくる。見惚れてはいないが見つめてはいたので、
「あー、見つめてはいたな」
と、素直に返す。すると夜黒さんは、「あ、うん、そっか」と顔を赤らめながら言っている。渚は真意に気付いているっぽく、ニマニマしながら夜黒さんの肩を叩いている。まったく、恋する乙女みたいな顔をしてもかわいいだけだぞ。……かわいいのならいいのか? よくわからないことを考えながら、大地との合流の為に駅へ向かう。
今更になってから気づいたが、女子を夏祭りに誘うのは大変な行事だったな。ほんとに今更だけど。




