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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
彼女は吸血鬼
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たまごやきっ

「そういえば冷蔵庫に入ってた赤い奴なに? 」


 卵焼きを食べ終えたタイミングで気になっていた事を聞く。

 すると夜黒さんはバツが悪そうな顔をしながら、


「えーとあれはね……。うん、トマトジュース」


 と、歯切れ悪く答えた。……なんというか怪しすぎる。あ、そうなんだ、と返答をしつつも気になって少し考え込んでしまうと、


「そ、そんなことはおいといてさ、玉子焼きの作り方教えてくれないっ?」


 あからさまな話題の転換を狙って、料理の教えを聞いてくる。


「……それくらいならいいけど。妹に遅くなってもいいかだけ確認させて」

「はーい」


 俺はLINKER(リンカー)を起動して妹の深雪にメッセージを送る。

『料理教室開くことになったから帰るの遅くなるかもしれない

 最悪適当になんか買って食べてて』



『わかったー』


 するとすぐに返信が来る。これでいくら時間がかかっても平気になった。さすがに玉子焼きの練習で帰れないなんてことはないだろうけど、あいにく、夜黒さんを見ているとすぐに帰れる気は全然しない。


「はい、オーケイだよ。それじゃ始めようか」

「おねがいします、先生! 」


 スカートをふわりとさせて振り返ると、夜黒さんはキッチンへかけていく。今はどう見ても子供にしか見えない。まるで初めて料理をする子供の様だ。というか実際しっかりやるのは初めてかもしれない。怖くて包丁なんて持たせられない。


 いざキッチンに来ると驚いたことに夜黒さんは卵を割れない。いや、この言い方だと語弊がある。卵は割れるのだ。ただし粉々になる。さっきは頑張って殻を取り除いたらしい。一周まわって器用だと思う。……20分で殻を全部取ったと考えると普通にすごい気もする。


 そんな夜黒さんを、とりあえず卵が割れて、焦がさない程度に上手く焼けるようになるまで特訓した。といっても二回目でできたので意外とすんなりいった。一回目はちょっと目を離したすきに強火にして焦がしてしまった。その教訓を活かして、といっても夜黒さんが強火にするのをやめたのではなく、俺が目を離すのをやめたら上手くいった。

 つまり夜黒さんは上達してないのでは? そう思わないこともないが、まあ真っ黒物体にならない方法を知ってくれただけで充分である。


「おいしく作りたかったらしっかり分量と時間を守ること。分かった?」

「さすがに守りますー」


 最後に念をおすと、夜黒さんはほっぺを膨らませながら不服そうに頷いていた。さすがに分かってくれたらしい。ただ、1人にするとどうなるかやっぱりわからない。


 片づけを始めてから少しすると、隣で小さな悲鳴が上がる。どうやら卵の殻で指を切ってしまったらしい。


「大丈夫? 片付けとくから戻ってていいよ」

「うん、大丈夫。どうせすぐ治る。けど一応絆創膏付けとこうかな」


 そう言って夜黒さんはリビングへ駆けて行く。


 どうせすぐ治る、どこかで聞いたようなセリフだと思ったらさっき足首をひねったときにも似たようなセリフを聞いた。いやまぁ確かに治るけど、とも思っていた。しかしよくよく考えると先ほどから夜黒さんはちょこちょこ走っている。

 まさか本当にもう治ったとでもいうのか……?

あの飲み口のついている袋はスパウトパウチというらしい

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