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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
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体育祭─開会式

 体育祭当日の朝、いつもより早起きをして弁当を作る。折角なので体育祭仕様の弁当を作ろうと思い、昨日から下ごしらえをしていたのだ。下ごしらえのおかげで今から調理にかかる手間は少ないが、それでもいつもより時間がかかるのは確かだ。


 俺がキッチンで料理をしていると、深雪が起きてくる。


「なんか手伝うことある……?」


 料理をしている俺の様子を見て、深雪がそう聞いてきた。


「いや、特にはないかな」


 俺がそういうと深雪は不満そうな顔をして、


「じゃあ詰め込み作業するね」


 とだけ言って弁当箱の用意を始める。

 俺が作り上げた料理をどんどん弁当箱に詰めていく深雪。


「どういう風の吹き回しだ?」

「こういう日ぐらい手伝いしてもいいでしょ? 朝練があるわけじゃないし、たまには」


 俺が聞くと深雪はそう答えた。どうやら深雪は気を使ってくれたようだ。……特にないと言ったのは悪かったか。

 そのまま二人でキッチンで弁当の用意をすること三十分ほど、弁当の準備が終わる。 


 今日は普段と違い制服で登校する必要はなく、体育着を着て行ってもいいルールになっている。……胸元の名前が気にならなければだが。ジャージを着ていくことも許されているが、ジャージの胸元にも名前はあるわけで。今のご時世着ていく人は少ないんじゃないかな。学校指定のジャージは見た目もださいし……。

 ちなみに大月高校の制服には夏服と冬服があり、夏はワイシャツが半袖、冬は中にセーターを着ていくことが許されている。夏服の着用が認められるのは六月から、冬服の着用が認められるのは十月からだ。今はまだ五月だから夏服は着れないので長袖を着ていく。


 着替えも終わり用意が整ったのでもう学校へ向かおうとしたとき、


「あ、待って! 一緒に行こ!」


 と深雪に止められる。特に遅刻しそうな時間でもなかったので「いいぞー」とだけ返してリビングでテレビでもみながら過ごす。天気予報曰く、今日はずっと晴れだそうだ。体育祭日和でよかった。と言ってもずっと晴れていると誰かさんの目つきがずっと険しそうだな、なんてことも考える。……最近夜黒さんのことを考える時間がもしかして長いのか? そんなことに少しモヤモヤしながら深雪を待つ。


「お待たせー」


 そういいながら現れた深雪は、普段学校に行く時と違い、しっかり髪を編み込んでいる。体育祭のやる気の高さが窺える。


「おう、じゃあ行くか」


 深雪が部屋から出てきたところで、俺たちは出発する。もちろん弁当は忘れずに持っていく。忘れるなよ、と深雪に言ったら怒られたのは内緒だ。


 俺が玄関を開けるとすぐに、


「おはよう!」


 と挨拶が飛んでくる。はぁ、だから深雪は一緒に行こうと言ってきたのか……。


「おはよう、渚」

「おはようございます!」


 門の目の前で待ち構えていた渚につかまり、三人で学校に向かうことになる。


「今日は頑張りましょうね! 渚センパイっ」

「同じクラスでよかったよね」


 そう、深雪は一年二組だったので今年の体育祭は奇しくも仲間として共闘することになったのだ。体育祭の魔法にかけられ、どこかテンションの高い俺たちはそのまま学校へ向かう。


 学校もしっかり体育祭仕様になってて、校門の飾り付けが派手になっていた。


「じゃあまた後でな」


 教室に荷物を置きに行く必要があるので昇降口で深雪と別れる。教室に入ると椅子がなかった……、というのも昨日のうちに外に持ち出していたからだが。別にいじめがあるとかそういう訳じゃない。教室にいる人はまばらで、もう外にいる人が多いらしい。教室にいてもやることがないので俺も外へ向かう。


 外の二組の陣地に行くとテンションの高い大地や康祐がいてうざいことこの上なかった。きっと俺は悪い笑顔をしながら一緒にはしゃいでいたのだろうが。


 大地たちと騒ぐことしばらく、遂に開会式の時間になったらしく、校庭に整列するように放送がかかる。

 開会式で校長先生の話が終わった後に、体育祭実行委員長が台に上がり挨拶をする。

 流石は委員長、校長先生と違い、短く、しっかり場の温まる挨拶をしてくれた。


「では、皆さん精一杯体育祭を楽しんで下さい! 体育祭を開会します!」


 委員長の掛け声に呼応するように会場が盛り上がる。こうして俺たちの体育祭が始まった。

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