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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
42/88

体育祭の練習─玉入れ

 水曜日の今日、遂に私達二年生は各自練習じゃない競技練習をすることになった。今日の練習は体育祭当日の流れの確認もあり、入場や退場の練習もする。だから時間がかかって全部の種目が今日やれるわけじゃない。

 

 そんな中、私が参加する玉入れは今日だった。女子が大人数で参加できる種目は綱引きと玉入れ。他は個人種目になるから運動音痴の私に出る幕はない。憧れとかがないわけじゃないけど、どうせ出ても散々な結果になるのが目に見えてるからやめておいた。

 で綱引きか玉入れが選択肢に残って、小柄な私が綱引きに出てもしょうがない、ということで玉入れ一択だった。玉入れだったら他の人に玉を集めてれば仕事は終わる。とか思ってたら渚ちゃんに「だめだよ、明ちゃんも楽しまなきゃ」と怒られた。だから今日の私は積極的に玉を投げようと思う。


 入場練習が終わり、競技開始のホイッスルが鳴る。渚ちゃんに教えてもらった玉入れのコツを活かして少し高めに投げることを意識して玉を投げる、投げる。沢山投げる。

 最初は全然入れられなかったけど途中から何個か入れられた。私でもやればできるっ。

 小学校の頃はいじめにあってたようなものだから、ほとんどたまに触らせてもらえなかった。まさか高校生にもなってこんなに楽しく玉入れをやるなんて……。この高校に入れてよかったな。

 玉を入れられた感動に浸っていると渚ちゃんに名前を呼ばれたので顔をそっちに向ける。すると私の手元めがけて玉が飛んでくる。渚ちゃんは笑顔で親指を立てている。私も親指を立てて答える。そして意気揚々と球を投げたところで競技終了のホイッスルが鳴る。

 ……私が最後に投げた球はホイッスルの音がやむと同時にポスンと音を立てて落ちた。なんだか無性に悔しかった。


「いやー、最後惜しかったね」

「本番はもっとがんばるよっ」

 玉入れの練習が終わった後に軽くお話をして渚ちゃんと別れる。この後はクラス対校リレーの練習があるからそっちへ向かって走っていく。


 颯爽と去っていく渚ちゃん、やっぱかっこいいな。


 私がぽけーっとそっちを見ていると後ろから声を掛けられる。

「ぐろちゃんも今暇なのか~」

 おっとりとした声で語りかけて来たのは保健委員の大鳥 友々里(おおとり ゆとり)ちゃんだ。渚ちゃんより暗めの茶色の天然パーマがいつもよりぼさぼさしている。

 友々里ちゃんはさっきまで私が見てた方を見ながら、

「あ~、渚ね。天は人に二物を与えずって言うけど絶対嘘だよね~」

 と言う。

「そうだよねー」

 と返しながら渚ちゃんのことを考える。

 かわいくって、勉強ができて、それでいてスポーツもできて、胸も私より……。はぁ……、考えれば考えるほどため息が出る。二物なんてもんじゃないな。私なんてかわいいだけなのにっ。


 そんな私の頭の中はさておき、

「そもそも日暮の三人がハイスペックすぎるのもあるけどね。ぐろちゃん最近よく一緒にいるよね~」

 と友々里ちゃんがこぼす。日暮の三人は晴気君と中岡君と渚ちゃんの三人のことだ。そう三人みんなハイスペックだ。私なんかが付いて行けないくらいに。……中岡君の勉強には目を瞑ろうかな。


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