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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
41/88

体育祭の練習─全員リレー

 体育祭の練習が始まって、段々とみんなのテンションも高くなっているのがよくわかった。クラスのみんなで団結していってる感じかな? 三年生の先輩たちの熱気に押されてみんなもどんどん練習を積んでいる。


 昨日の大繩の練習はここ最近の練習の成果もあって、かなり調子よく跳べたからとっても楽しかった。

 けど問題は今日のリレー練習だった。私達二組の全員リレーは、男女が交互に走って女子が走る距離と減らしちゃおうという作戦で走順が決められた。と言ってもどこのクラスも似たような戦法を取ってるっぽいから定石なのかもしれないけど。

 いいの、ここまではいいの。問題はここから。相変わらずともいえる運動音痴でバトンパスがうまくいかない。そして何回かバトン練習をしている間に私は転んでしまった。つまり傷ができるんだけど……。



 今までの学校生活では私はいつも一人だった。最初はみんな外見の珍しさで集まって来るんだけど、私の体質、傷の治りが異様に早いことを見ると気持ち悪がって距離を取るようになっていた。だから自然といっつも孤立していた。

 そういう意味では晴気君も渚ちゃんも、深雪ちゃんも、……中岡君もみんな私の体質を受け入れてなお優しく、いつも通りに接してくれてものすごくうれしかった。中岡君が私の体質を知ったのは四人で大繩の練習をしてた時に私が引っかかって転んだから。……相変わらず私はポンコツだ。

 これで運動神経が良かったり、器用だったりしてれば傷ができることがなくって体質がばれることもなく普通に過ごせてたのかな、とかも小さい時はよく考えてた。大きくなってからは別に一人になったらそれはそれでいいや位にしか思ってなかったけど。人間一人でも生きられる。実際一人暮らし初めてからも何とかなってたし。……私人間じゃなかったね。


 でも今はちょっと違った。私の体質を知ってなお優しくしてくれるみんながいる。みんなのことだからきっと他の人が気持ち悪がって近寄らなくなってもきっとかまってくれる……のかな。でも周りに流されて話を聞いてもらえなくなったりしたらどうしよう。また元の一人に戻るのかな……。


 転んだ直後の私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。もともと一人だったらこんな心配しなくて済んだのに……。ちょっと涙が出てきた。


「あー、遂に明ちゃんが転んだ!」

 転んで動きが止まっていた私にそう言って、渚ちゃんが駆け寄ってくる。


「ほら、傷口洗いに行くよ、立てる?」

「あ、うん」

 別に洗わなくてもいいのにな、なんて考えながら渚ちゃんと水道に向かう。私の膝には軽く血がにじんでいて、そこに傷ができているのは明白だ。他のクラスの人たちも心配そうに私を見てる。これで戻って傷がなかったらみんなにばれて終わりだな……。


 ネガティブなことを考えてると、渚ちゃんが私の暗い顔をみて何を思ったのか、


「これでもね、私はできる女なんですよ」


 とどや顔で言ってくる。確かにこの速度で対応してもらってるし、もともとできる女なんてことは分かるのに、なんでわざわざこのタイミングで言ってきたのか理解できなかった。


「ここにありますは絆創膏」

 ポケットから絆創膏を取り出す渚ちゃんに対し、


「でも傷治ってるよ?」


 私はきっと不思議そうな顔をして言ったのだろう。すると渚ちゃんは、


「……バレたくないでしょ?」


 とにやにしながら言ってくれた。

 そこで初めて私は気づいた。そっか、傷口なんて上から隠しちゃえばいいのか。なんでこんな簡単なことに今まで気づかなかったんだろう。……ポンコツだな。


「うん、ありがとう」


 私はそう言って絆創膏を受け取って、もう傷がない膝に貼る。

 そういえば最初に晴気君と料理したときも絆創膏にお世話になったな。あれは……バレたくなかったからか。今更になって気づく。わざわざ心配してくれる人だって久しぶりだったし。結局後でバレちゃったんだけどね。でも自分の口からはっきり宣言できたのは良かったかな。


「じゃあ戻ろっか」

 笑顔で渚ちゃんに言われる。

「うん!」


 きっと私も笑顔だったに違いない。

 唐突なフラグ回収。

 本編6万文字なんで文庫本だとちょうど山場くらいですよ。この後もちょくちょくこんな感じの話がある予定です

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