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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
彼女は吸血鬼
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すこしだけ散らかっている

「少し散らかってるけど許してね?」


 部屋に入る前に夜黒さんがそう言ってきた。まぁ掃除が苦手と言っていたのと、アポなしでお邪魔するのとで、ちょっとはしょうがないと思っていた。思っていたのだ。

 リビングのドアを開けるまでは。


「えぇ……。ちょっと散らかってるってレベルじゃないだろコレ……」


 夜黒さんは1LDKのマンションに住んでいた。玄関を開けるとキッチンがあり、突き当りにリビング、右手に寝室がある。キッチンはまるで使っていないかのように整理整頓されていた。そこだけ見ると掃除が苦手と言っていたのはやっぱり謙遜だったのかな? なんて思う。しかしだ、奥のリビングに魔境が潜んでいた。

 

 学生の一人暮らしの割には広々としている洋室。ソファーがあり、低いテーブルがあり、向かいにテレビがあり、それとは別にテーブルがあり、かなり充実している。

 ……そして充実しているのはそれだけではない。窓側の床一面に広がっている衣類。飲み終わったと思われるペットボトル。食べかけのお菓子の袋。床は充実してなくていいんだよ……。


「かなり問題のある部屋だな」

「いやー……、まだそんなに散らかってないと思うよ……。これでも頑張ってきれいにしてるんだよ……」

「嘘でしょ?」


 ここで驚愕の事実が発覚した。これでもまだきれいらしい。一体これ以上にの散らかり具合にしようと思ったらどこを散らかせばいいのか……。


「そういえばキッチンの方はきれいだったよね。あそこは掃除頑張ってるの?」

「いや? 使ったことないだけ」

「うそでしょ……」


 さらに立て続けに出てくる驚愕の事実。料理もしていない。まるで使っていないかのようなキッチンではなかった。使ったことのないキッチンであった。これは大変だ。


「ご飯とかどうしてんの? ていうかさっき食材買ってなかった? 」

「今までは買ってきたお弁当で済ましてた。今日からは心機一転、お料理もしようかなと思って買い出しに。」

「いや絶対無理じゃん……」

「ひどいなー。あ、分かった。じゃあお礼もかねて私の手料理をふるまってあげましょう。そこ座って待っててね」


 そう言って夜黒さんはキッチンへ消えていった。絶対に見ないでね、なんていいながらドアを閉めていくので、ついていくについて行けなかった。かと言ってこんなに散らかった部屋に取り残されても困るんだけど。

 ソファーの上に脱ぎ散らかされている制服、明日はどうするんだろう。そういえば自己紹介の時の取っつきにくさはあまり感じない。むしろ残念な感じから渚みを感じる。あいつも外見から想像できないくらいにポンコツだったからな。最近まともになってきたけど。


 隣から聞こえてくる、「痛っ」や「あっつ」といった悲鳴を無視しながら、申し訳ないと思いつつ部屋の中を見回しながら、俺は夜黒さんが戻ってくるのを待っていた。こんなんでよく一人暮らしをできるな……。これは心配でしょうがない……。

残念な美少女いいよね

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