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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
32/88

悪いのは俺だから

 六限目が終わる。

 いつもより集中力が足りなかった気もするが仕方ない。

 帰りのHRも終わり、教室の空気が柔らかくなる。ちゃっちゃか帰ろうかとも思ったが、体育の先生に挨拶しておいた方がいいなと思い職員室へ向かう。がそこにはいなかった。

 ならばきっと体育教官室だ。体育館まで行くのか……。少しめんどくさく感じでしまったがわざわざ職員室まで来たのだ。一手間増えたところで変わらない。

 そう考えた俺は体育館に足を向ける。


「失礼します」

 体育教官室のドアをノックして入る。

「晴気か、体調はどうだ?」

 入ると同時に先生が気づいてくれる。

「普通にしてる分には問題ないです」

「無事だってんなら何よりだ。最後まで調子よく走ってたから成績は考慮してやりたいんだが記録が残ってない以上無理なんだよな。悪いが今度また頑張ってくれ」

「はい、わかりました。心配おかけしました」

「晴気はほんと真面目だな。お大事にな」

「ありがとうございます。では失礼します」


 そう言って俺は教官室を出る。一部の人にとっては体育教官室は魔境らしいが、俺は特に感じない。

 用事も済んだのでふとあたりを見回す。


 体育館を使う部活がパラパラ活動を始めている。この時間はバドとバスケか……。大月高校の体育館はそこまで広くないので体育館を使う部活はローテーションで使っている。外の部活は校庭が広いので特にローテーションなどなく利用できる。格差になってしまっているが、場所の問題はどうしようもない。

 そんなことを考えていると、体育館に深雪が入ってくる。こちらに気付いたのか、小走りでやって来る。


「あ、お兄ちゃん、体調はもう大丈夫……?」

「大丈夫。心配かけたな」

「帰ったら私が家事やろうか?」

「いや、俺がやるよ。それは心配すんな」

「うん……、分かった」


 そこまで心配をかけてしまったのか、少し元気のない返事が返ってくる。

 深雪と話している間に渚も体育館に入ってくる。話している俺たちに気付いてこちらにやって、

「明ちゃんが待ってたから用事終わったら早めにもどってあげて」

 と教えてくれる。

 別段これ以上ここでしゃべって二人の足止めをする理由もないので、「おっけ、じゃあまた今度」とだけ返し、二人と別れる。


 体育館から校舎に戻ると校舎内は閑散としていた。最近よくこの光景を見るな、と思ったが、部活をやらないで少し長めに校舎に残ればこんなもんか、と気づく。

 日は少し伸びてきているモノのそれでもまだ夏ではないので空はもう赤く染まっている。

 去年まではゆっくり感じることのなかった放課後の校舎の雰囲気を楽しみながら教室へ戻る。

 二年二組の教室にはもう夜黒さんしか残っていなかった。


「お待たせ」

 俺はちょっと気取って教室に入る。

「なにそれ」

 少し泣きそうな顔をしていた夜黒さんだったが、小ばかにしながら笑いながら返してくれる。作戦は成功だ。


「別に夜黒さんの所為じゃないから。気にしなくていいよ」

 先手を打って気にしなくていいように告げる。

「でもっ」


 夜黒さんの言葉を遮って俺は続ける。


「俺が早めに引かなかったのが悪いだけだし。あの体調で気を遣えって方がむりだよ」

「今回はたまたま大丈夫だったけど、ほんとにやばかったらどうしてたの……。それに責任を感じるなって方が無理だよ……。全部俺のせいで片付けないでよ、私が悪いんだから」

 再び泣きそうな顔で言ってくる夜黒さん。


「……そうだよな。俺だけが抱えてもしょうがないよな」

 責任を感じないようにしてもらいたかったが、さすがにそこまで簡単にいく問題でもなかった。

「分かってくれたなら何より。少しは私にも責任振ってくれてもいいんだよ」

 俺が抱え込まなくなったのがうれしいのか、さっきより明るい声で夜黒さんは言った。

「じゃあ料理でも振ってやるか」

「それとこれとは別ですー」

 おかげで重かった空気も少しは軽くなる。


「……帰ろっか」

「うん」


 俺たちはそのまま教室を後にした。

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