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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
17/87

真っ黒再び

 深雪と一緒に食べていた晩御飯も食べ終わり、俺は食器の片づけを始めた。しかし、待てども待てども夜黒さんからの連絡は一向に来なかった。もしかしたらそもそも写真を送る約束を忘れているのでは? と思ったが、こちらから先に夕食の写真を送っているのでそれはないだろうという結論に達した。


 その後、しばらくしてから一通のメッセージと共に写真が届く。


『失敗した……』


 フライパンの中にはところどころにほぼ炭化している物体がこびりついている。ただ部分的に程よい色合いの場所もある。見た感じキャベツだろうか? となるとホイコーローか何かの残骸になるのか。

 こないだの卵焼きほど真っ黒ではないが、それでもなお黒焦げの部分は多々ある。


『どうしてまたそんなことに』

『キャベツ切りながら炒めたら焦がしちゃった』

『時間かかりすぎでしょ』


 どうやら並列作業をしようとして失敗したらしい。後半に追加したであろう部分の色は良いので、それさえやめれば何とかなりそうだ。


『なれないうちは一つ一つ丁寧にやって下さい』

『わかりましたぁ

 ていうか晴気君の作った肉じゃがすごくおいしそう』

『お褒め預かり光栄です』

『追いつけるようにがんばるよ』

『いつになるのかな』

『言ったなー。すぐに追いついてみせる』


 正直一つ一つ丁寧にやればいいだけなのですぐに追いつかれるような気もする。……いつになってもやらないような気もするが。


 その後も少しメッセージのやり取りを続けていたが、ふと明日の準備をしようと荷物の整理を始めた。料理に夢中になっていたので頭からすっかり抜けていたが、明日は模試なのだ。教科書類はこれと言って特に必要はないので鞄が軽くなり、気分も軽くなった。二年生最初の模試だといえども出る内容は一年生のもの。宿題の課題真面目にやったのでそこまで恐れる必要はない。


『夜黒さんは明日の模試は大丈夫? 』

『うえぇ……

 嫌なこと思い出させないでよ、大丈夫なわけないじゃん』

『まぁなんとなく知ってた』

『失礼だね、事実だけど』


 宿題の調子的にばっちりではなさそうだが、壊滅的な点数は取らなくて済みそうだった。からかってばっかりいるとさすがに怒られそうなので、このとこも伝えておく。


『まぁよっぽど変な問題が出ない限り点数は悪くはないと思うけどね』

『うわ、急に持ち上げる』

『事実だし』

『ありがとねー』


 メッセージのやり取りをしている間に荷物の整理は終わり、やることはもうなくなった。さてこれからどうしたものかと考えていると夜黒さんは今からお風呂に入るというメッセージが届く。それに対し、いってらっしゃいと送る。


 これ以上特に起きていて明日寝坊をしてもたまったものじゃないのでもう寝ることにする。無言で寝ても夜黒さんに怒られるような気がしたので一応おやすみと送る。これでほんとにやることが無くなった。明日の模試でどのような問題が出るかに思考を巡らせつつ、俺は眠りに落ちていった。


 次の日の朝、スマホの目覚ましを止めるとともに画面を確認する。夜黒さんから、『おやすみー』と送られていた。別にもう夜ではないのでそのまま既読を付けてLINKERを閉じる。

 いつも通りに朝の日課をこなしつつ、深雪を送り出す。

 やることも一通り終わり、一息つく。俺もそろそろ家を出ようかという頃に一通のメッセージが届く。


『おはよー』

『起きてるならおはよう言ってくれてもいいじゃんー』


 どうやら返事をしなかったのは、夜黒さんのお気に召さなかったようだ。


『はいはい』

『おはよう』


 そう適当に返事をして家を出る。

 教室に着くといつもより勉強をしている人が多かった。さすがに普通の授業ではなく模試ともなるとやっぱりこうなるか。俺も席に着くと春休みの宿題の確認をする。


「快人―、助けてくれー」


 死んだ顔をしながら助けを求めてきたのは大地だった。どうやら今日はサッカー部の朝練はないようだ。


「ずいぶん死にそうな顔してんな」

「今回の模試で変な点とったらバツがあるって先生が。無理に決まってんだろ、春休みに勉強する時間なんてなかった」


 どや顔でそう言い切る大地。サッカー部の顧問の先生は文武両道に熱心な先生で、独自で補習も行う程度にやる気がある。そんな中で悪い点を取ったらどうなるか、わかりやすい未来が待っている。去年の大地は一年生でありながらレギュラーとして活躍していて一目置かれていたが、その一方、勉強についても一目置かれていた。もちろん悪い意味でだ。

 そんなわけで今日の朝は大地の勉強に付き合った。人に教えるのでも十分勉強になるからこれはこれでありだった。


 HRの予鈴が鳴り、俺は席に戻る。すると夜黒さんと渚の二人は二人で勉強をしていた。夜黒さんの表情が険しいのを見るとどうやら芳しくないようだ。その様子を横目に座る。

 席に座る俺に気付いた渚と夜黒さんがおはようを言ってくる。俺も返事をする。しかし夜黒さんはこちらをジト目で見てくる。

「今日はなに用ですか」

「朝の対応はあんまりじゃないですか? 」

「返したからいいだろ」

「そうじゃなくてー」


 どうやら朝のLINKERの返事の仕方がよろしくなかったようだ。適当に返しすぎたかなと思わなくもないが、あれ以上特に言うこともない。そしてこんな会話を渚の前でしてしまったのが運の尽き。そこから俺と夜黒さんの二人はHRが始まるまで渚に質問攻めにされてしまった。HRが始まる頃には二人ともぐったりしてしまっていた。

 どうやらこの疲労の中模試と戦わなくてはならないらしい。俺と夜黒さんは模試が始まる前から不機嫌だったとか。

 料理は別に丁寧に書かなくてもいい案件。まったく書かないと不自然になっちゃうけど。

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