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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
12/87

宿題は早めにやる

 新学期初日の授業はすべて問題なく終わり、帰りのHR(ホームルーム)も終わった。今日の科目は授業と言いつつも週末(と言っても金曜日)の模試に向けての復習の面が大きく、特に新しい内容はやらなかった。わざわざ模試に備えて授業時間を削るなんて本末転倒な気がするが、春休みに鈍った頭を活性化させるにはいい役割だった。もちろん春休みの宿題もあったが、そんなものはさっさと終わらせているので記憶の片隅くらいにしか残っていない。

 ……人によっては答えの丸写しかもしれないし。


 部活に所属している人達が慌ただしく部活へ向かって行くのを横目に、配られたプリントを眺める。

 これくらいの量ならそんなに時間はかからないかな。

 夕食の時間までまだ余裕があるので、今日は出された宿題を終わらせてから帰ることにした。家に帰ってから手を付けるより今やってしまった方が気が楽だ。家に帰って一度落ち着いてからまた頑張るのはなかなかめんどくさいしな。

 

 人の流れが落ち着いて、少し静かになった教室。朝の静かさとはまた違う雰囲気になっていて、これはこれで心地よい。

 

 あまりぼやぼやしていてもしょうがないので、鞄から筆箱を取り出してプリントに取り掛かる準備を始めると、帰ろうと荷物をまとめていた夜黒さんがこちらを覗きながら声をかけてくる。


「また勉強? やっぱ真面目じゃん」

「ため込むと後で苦労するからね」

「えらいなー……。私もやってこうかな」

「なんだ、夜黒さんも真面目かよ」

「部屋は汚くても根は真面目ですー、たぶん」


 そう軽く自虐を言いながら夜黒さんは再び席に着き、勉強道具を出す。

 暫らくすると俺たち以外の人はみんな教室からいなくなっていた。夕日の差し込む教室には俺たちがシャーペンを走らせる音しか聞こえない。


 あらかたの問題を解き終わり、シャーペンを置いて見直しを始める。

 すると後ろからなにも音が聞こえないことに気付く。気になったので後ろを振り返ると問題としかめっ面でにらめっこをしながら、手が完全に止まっている夜黒さんがいた。


「大丈夫?」

「いやー、全然わかんない……」

「ヒントいる? 」

「ぜひください」

「この問題はここをこうすると……」

「あっ、なるほど。天才じゃん」

「それほどでも」

「ほかの問題も教えてもらってもいい? 」

「どれ? 」

「これなんだけど……」


 暫らくたってあたりが少し暗くなってきたころに俺はふと時間を確認する。時計はそろそろ六時を指そうとしていた。


「夕飯作んなきゃいけないからそろそろ帰ろうと思うんだけど 」

 

 そういうと夜黒さんも時計を確認する。


「えっ、もうこんな時間。ごめんね、遅くまでありがとう。」

「夜黒さんはどうする?」

「私も帰ろっかな」

「じゃあ帰ろっか」


 そう言うと俺たちは荷物をまとめて教室を出る準備をする。

 さっきまでずっと後ろを向いていたので体のあちこちが固まっている。向きを変えながら伸びをしていると、机を蹴ってしまい、夜黒さんの消しゴムを落としてしまった。


「あっ、ごめん」


 俺は慌てて消しゴムを拾おうとすると、同時に夜黒さんも拾おうとして手が重なってしまった。


 一瞬俺たちの間に沈黙が生まれる。


 そして慌てて手をどけながら、夜黒さんが謝ってくる。


「なんかごめん」

「別に今さら手くらい良いけどな。もう噛まれてるわけだし」

「まあそうだよねー」


 俺は笑ってごまかしながらそう言う。噛まれるときは心の準備をしていたがやはり不意の接触は意外と来るものがある。向こうも笑いながら返事をするが、多少顔を赤らめているように見えた。


 多少ぎこちなくなりながら俺たちは昇降口へ向かった。

 なんとなく俺たちの距離は離れていた。

こういう思わぬ触れ合いってドキッとしませんか? 初々しさは正義

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