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吸血姫様は今日も不機嫌  作者: 笹葉きなこ
ご機嫌斜めな一学期
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間の悪いこと

 新学期が始まり、早三日目、妹の深雪(みゆき)もそろそろ学校になれてきたらしく、今日は俺を置いて先に家を出ていった。ちなみに深雪も俺と同じ大月高校に通っている。昨日と一昨日はまだ少し不安だったということで、二人で一緒に最寄り駅まで行き、そこから別行動で登校をしていた。そんなわけで昨日と一昨日はかなりギリギリな時間に教室についていた。


 今までと違い、今日はかなり早めに教室に着いたことにより、いつもより静かな教室に入ることになった。活動が活発な部活に入っている人たちは朝練があり、教室にいないので、教室の活気はなかった。スマホをいじる人、授業の不安について語る人、個々人が勝手に座席で好きなことをしている。


 春先の朝の程よく温かい空気が教室を満たしている。


 俺も特にやることもないので適当に今日やる授業の教科書をめくることにした。別に予復習を真面目にやる性格でもないが、せっかく昨日買ったばかりの教科書だから目を通してみたいという好奇心から目を通すことにした。

 教科書を開いてからしばらくたった時、机の目の前を誰かが通ったので目を上げるとそこには夜黒さんがいた。


「おはよう、晴気君」

「おはよ、夜黒さん」

「朝から勉強? 真面目だね」

「別に勉強したくて教科書開いたわけじゃないんだけどな」

「そうなんだー」


 そういいながら夜黒さんは席の方へ移動する。

 これ以上教科書のことで話が膨らむことはないだろうと感じ、俺は話は終わったものかと思ったのでそのまま教科書に戻る。

 ……しかし妙なプレッシャーを感じたので振り返ると、若干顔をしかめつつこちらを見てくる夜黒さんが目に入った。


「この学校には慣れた?」


 振り返った以上。このまま無言でいるのもよくないと思い声をかける。

 すると少し驚いた顔をして返事をくれる。


「ん、大体大丈夫かな。一昨日渚ちゃんに案内してもらったから」

「そっか。渚に変なことされなかったか? 」

「変なことって、そんなことされないよ。……あー、でも結構抱き着かれたかな」

「渚結構べたべたするもんなー、うちの妹もしょっちゅう抱き着かれてたし」

「そうなんだ。晴気君って妹居るんだね、今何歳なの?」

「1個下。高校も一緒だしワンチャン校内で会うかもしれない」

「それは楽しみだな」


 だから面倒見もいいのか、なんてつぶやいている夜黒さん。

 そういえば、気づいたかのように話題が切り替わる。


「昨日の帰りに渚ちゃんになんで晴気君の名前覚えてるのか聞かれちゃった」

「やっぱりか、なんて答えた?」

「ケガしたとこを助けてもらったとだけ。他は流石に言いにくかったかな……」

「それはグッジョブ。これ以上は詮索されなくて済むから」

「そっか。よかった。あと重ねてお願いなんだけ……」


 夜黒さんがそう言いかけたところで、急に驚いた顔をして、それから苦笑いに変わる。一体何が、と思っていたのも束の間、後ろから衝撃を受ける。


「んー? 何が余計な詮索受けなくて済むのかなー、快人君よ。ここは素直に吐いといたほうがいいんじゃないかね?」


 するとそこには、なんと間の悪いことか、渚が立っていた。

 勘の良さに加えて、タイミングの良さ、……この場合は俺達にとっては悪いが、もあるので敵に回すとなかなかの強敵になる。


「いやほんと、何でもないから」


 あまり詳しく話すとボロを出しそうだったので、何でもないとだけ言っておく。


「なんでもないなら話そうかー。あ、別に明ちゃんに聞いても良いからね。それっ」

「あっ、やめっ、ひゃっ」


 渚がそう言った次の瞬間には夜黒さんの目の前に移動していて、わき腹に手を当てている。


「明ちゃーん。なーんで隠し事してるのかなー」

「んっ、待って、しゃべるっ、からっ、やめてっ」


 さすがにくすぐられる夜黒さんを見捨てる訳にもいかず、俺も隠すことをあきらめ、


「あーもー分かった分かった。話すからやめてやれ」


 そう言い切る。

 さすがにこの教室で夜黒さんが吸血鬼だということを広める訳にもいかないのでその部分だけは上手く伏せつつ、一昨日のことを話した。



「なに、明ちゃんもう男の子を家に連れ込んだの? 私も入ってないのに? 」

「そんなに切れんなって渚。事故だからしょうがないだろ」

「ん。まぁねー。でもうらやましいなー、美少女の部屋に入るだなんて」

「美少女の部屋に入ったことは認めるが、部屋の散らかり方はマジやばかったんだって」

「そんなに言わないでよ……」


 その後もホームルームの開始まで俺たちは会話を続けた。

 渚が来る前に夜黒さんが言いかけた言葉が気になるが、結局そのことは話題に挙がることはなかった。

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