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第2話 暗殺者との面接

 しばらくして俺たちは面接日当日を迎えた。俺とアマンダ、ユーリは領主の館の一室で応募者のイザベラを待っていた。テーブルの窓際の方に俺たち3人が座り、イザベラには俺たちの向かい側に座ってもらう。


 約束の時間まであと少し。俺は期待と不安に胸を踊らせながら、その時が来るのを待っていた。魔族で魔王軍に所属したことがあるS級暗殺者で、それでも勇者パーティに加わりたいという者。はっきり言って気にならないはずがない。


……数分後、コンコンとドアをノックする音が聞こえる。


「どうぞ」


 俺がそう言うと、扉が開き一人の黒い外套を纏った女性が入ってくる。外見は、背がやや高めでスタイルがよく、長い銀髪が特徴的だった。魔族なのに肌の色は人間のように見えるが、これは変幻魔法を使っているのかもしれない。


「イザベラ・バイオレットです。今日はどうぞよろしくお願いします」


 イザベラと名乗る女性は微笑みながら言った。


「イザベラさんですね、どうぞそちらの椅子へ座ってください」


 そう促すと、イザベラは前の椅子へと静かに座った。


「私が勇者クライスです。こちらはパーティメンバーのアマンダとユーリ」


 そう言って俺はイザベラと軽く握手をする。アマンダとユーリも同様だ。


「今日はイザベラさんと少しお話ができればと思い、こちらまで来てもらいました。軽く話をするだけなので緊張する必要はありません。リラックスしていただいて結構です」


 俺は笑顔でそう言った。ただ、実際に緊張していたのは俺の方だった。そもそもこういった面接をするのは初めてなのだから緊張しないわけがない。こればっかりはみんな同じで、アマンダも若干顔を引きつらせていたし、ユーリも何かギクシャクしていた。……しかし、ユーリは相変わらず面接でもフルアーマー装備で、多分イザベラもユーリを見て内心困惑していることだろう。


「えーと、まず領主秘書兼代理の仕事についてですが、こちらは勇者パーティへの参加が前提条件となりますが、大丈夫ですか? 例えばですが、勇者パーティが冒険に出たり魔王軍と戦ったりするときには同行して戦闘に参加してもらう場合がありますが……」


「それは構いません。むしろ楽しそうなので喜んでついていきます」


 イザベラは微笑んで言った。


「……そうですか。それでは領主秘書兼代理の仕事に応募した動機を聞かせてもらっていいですか?」


「はい。動機は簡単に言うと面白そうだったからですね。私は以前は魔王軍諜報部に所属していたんですが、もともと秘密工作とか諜報活動をするのが好きでして。それで領主秘書でもその経験を生かして色々やれるかなと」


「……なるほど」


(秘密工作や諜報活動が好き、か……。うーん、どうなんだろう)


 若干変わっている感じはあるが、そういう活動が得意というのは魅力的だ。


「できればで結構なんですが、魔王軍を辞めた理由を聞いてもいいですか?」


「それは…………最近の魔王軍、いえ魔王様の方針にこれ以上賛同できなかったからです。今の魔王国は民を蔑ろにし、他国を侵略することのみに力を注いでいる。昔と完全に変わってしまった。だからもうついていけないと思ったのです」


 イザベラは神妙な面持ちをして言った。


「それでなんとなく各地を放浪する旅に出ました。その途中で王国のジルータに滞在したときに、領主秘書兼代理の求人広告を見つけて……。ちょっと応募してみようかと思ったのです」


「そうでしたか……」


 本当かどうかはわからないが、少なくとも筋は通っていると感じた。


「王国では魔族の姿は非常にまずいと思うのですが、今の人間の姿は変幻魔法によるものですか?」


「そうです。……気になるようでしたら元の姿に戻ることも可能ですが?」


「そうですね。一応、元の姿の方も確認できればと」


 イザベラは「わかりました」と言って小さく呪文を唱えた。するとイザベラの肌が褐色になった。典型的な魔族の肌の色だ。


「アマンダやユーリは何か質問があるか?」


 俺はだいたい聞きたいことは聞いたので二人に話を振る。するとアマンダが遠慮がちに口を開いた。


「……え、えーと、イザベラはねくろまんしーとか好きな方?」


 俺は一瞬ずっこけそうになった。ただ、まぁ確かに仲間との相性を考えると妥当な質問かなと思った。


「特別好きということはないですが、嫌いということもないです。例え仲間にネクロマンサーがいたとしても特に驚きませんよ。私の知り合いにもネクロマンサーは何人かいますし」


「そ、そう! それはよかった♪」


 アマンダは途端に笑顔になって言った。……それじゃまるで自分はネクロマンサーですと言っているようなものだぞ。まぁ格好でだいたい想像はつくけど。 


「ユーリはどうだ?」


「え、ぼ、僕!? 僕は特にないよ! い、いいんじゃないかな、うん!」


 ユーリがあたふたして言う。何がいいのかわからないが、ユーリ的には特に問題ないということなんだろう。


「えーと、一応こちらから聞きたいことはだいたい聞いたのですが、何か質問とかありますか?」


 俺は特に聞くこともなくなったので、適当にイザベラに話を振る。


「――そうですね、一つあります。勇者様は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは考えなかったのですか?」


「!!」


――言うが早いか、イザベラは目にも止まらないスピードで懐からナイフを取り出し、俺の胸に突き刺そうとした。


 キィン!


 しかし、そのナイフはユーリの剣によって弾き飛ばされる。


――気がつけば、ユーリの剣の切っ先がまっすぐにイザベラの喉元へと向けられていた。さらに外で待機していたスケルとヘルぞーが部屋に入ってきて、スケルがイザベラへ剣を向け、ヘルぞーは警戒態勢を取る。


「……どういうつもりだ?」


 俺は静かに言った。予想外の事態ではない。こういう事態もあらかじめ想定してあった。


「ふふっ」


 イザベラは剣を突き付けられつつも笑みを浮かべる。


「……やあねぇ、冗談よ、じょ・う・だ・ん♡ でもまぁ、さすがは勇者パーティと言ったところかしら? 私の一撃をこうも簡単に弾き返すなんてね! ……決めたわ。私、勇者パーティに入ってあげる! 改めましてイザベラよ。ま、私が加わるからには大船に乗ったつもりでいるといいわ」


 イザベラは得意げに言った。俺はどう反応したらいいのかわからず、ぽかんとしていた。


「さ、そうと決まったらこの剣を下ろしてくれないかしら?」


 イザベラはそう言ってユーリの剣を指差す。


「……イザベラさん、その前にちょっと両手を出してくれるかな?」


「え、いいけど……。こんな感じ?」


 イザベラはそう言って両手を差し出す。俺はその両手に事前に用意しておいた手錠をはめる。


「え、何これ。どういうこと?」


 どういうことも何も、見たままのとおりだろう。


「スケル、とりあえずこいつを地下牢に入れておいてくれるか?」


 俺はそう言って手枷に付いている縄の端っこをスケルに渡す。スケルはそれを受け取ると、首を縦に振りイザベラを連行していく。


「ちょ、ちょっと! これどういうことよ! 私、仲間になるって言ったでしょ! なんで私が連行されるの!? ま、待って……!!」


 抵抗もむなしく、イザベラはスケルに部屋から連れ出されていく。俺はイザベラがいなくなると「はぁ……」とため息をつく。


(一体何がどうしてこんなことになったんだ……。俺たち勇者パーティの実力を試すつもりだったのだとしたら、時と場合が悪すぎるだろ……)


 うーんと考えていると、ユーリが弾き飛ばされたイザベラのナイフを持ってきた。ユーリはナイフの先をテーブルに立てて軽く押す。するとナイフの刃は柄の中へと引っ込んだ。


「おもちゃのナイフだ。冗談っていうのは本当だったかもね」


「あはは、イザベラってなかなか面白い人だったねー♪」


 おもちゃとはいえナイフを向けられた俺としてはあまりいい気分ではないのだが……。とりあえず俺は、今後のイザベラの処遇を考えることにした。


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