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第33話 新たなる展望

 祝勝会から数日後、俺は王から王宮へと呼び出された。どうも魔王軍遊撃隊撃破の功績はかなり大きかったらしく、俺は王直々に褒美をもらうことになった。そんなわけで今、俺は王宮の謁見の間で王を前にして跪いている。


「勇者クライスよ、このたびの戦での活躍は見事であった。そなたのおかげで魔王軍による侵略の被害を最小限に防ぐことができた。礼を言おう」


「……身に余る光栄です。私は私が為すべきことをしたまでです」


「そうか、ではこれからもお主が為すべきと思うことをするがよい」


 王は少し笑みを浮かべながらそう言った。


「……ところで褒美の件についてなのだが、クライスよ、そなたはちょっとした『統治』に興味はあるかな?」


 王の口から出た統治という言葉を聞いて、俺は王の『褒美』が何なのかすぐにわかった。


(統治……か。まさかこれほど早く手にすることができるとは……)


 王が与える褒美で統治に関するものとなれば答えはほぼ一つだろう。俺は溢れ出る喜びを隠しながら王に答える。


「統治……ですか? 質問の意図をはかりかねますが、それがすべきことであれば私はそれに全力を尽くします」


 俺はやる気が十分あることを言葉に込めて言った。王はそれを聞くとニヤリと笑った。


「そうか、では全力で頑張るがよい。勇者クライスよ、そなたには此度の戦での活躍への褒美として王国保護領ディナンの『領主』の地位を与える!」


 王はそう高らかに宣言した。


 この時から、俺は勇者兼領主という立場になったのだった。



 ◇



「それにしてもクライスが領主様とはねー♪ まーそもそも勇者様ってのも驚きだけど♪」


 馬車の中で前に座っているアマンダがそう言ってケラケラ笑う。……一応、これでも元王子だし、勇者はともかく領主になるのはそんなにおかしくないんだけどな。


「そうか? まぁ確かに俺は元はD級冒険者だしな。似合わないと言われればそうかもしれないが」


 もちろん、元王子ということは秘密なのでここは適当なことを言っておく。


「えっと経歴の話じゃなくてね……性格の問題? なんていうかクライスの性格的に悪徳領主に向いてそうな気がするんだよね! 領民を操って自分の利益になることばかりしてそうというか♪」


「あ、それわかるかも……」


 ユーリがアマンダに同調する。


「……いや、それはさすがにないだろ。二人とも俺のことをそんな風に思ってたのか……? これでも割と真面目にやってるんだぞ」


 俺はこれでも勇者らしく誠実に振る舞ってきたつもりだったので、そう言われるのは少し心外だった。というか、俺は今まで特に勇者失格のような悪いことをした覚えはない。


「まぁ、リーダーとしては信用はしてるけどさ……結構悪知恵が働く感じ? ときどきなんか悪い顔してニヤニヤ笑ってたりするし」


「そうそう。そもそも最初僕のことストーカーしてたり、魔王軍との戦いでは僕に変装させて一騎打ちさせて自分は遠くの安全な場所で観察してたりしたでしょ! ……ちょっとひどいと思う」


 ユーリがここぞとばかりに不満を口にする。


「ま、待て待て。ストーカーの件については前にちゃんと謝っただろ。それに魔王軍との戦いは最善の策を取ったまでだ。俺はユーリなら絶対に勝つって信じていたからな」


「えっ? い、いや、そういうことじゃなくてさ……」


 ユーリはそう言って明後日の方向へと顔を向ける。ふふ……、ユーリが褒められることに弱いというのは既に把握済みなのだ。


「まぁそんなに気にするなよ。今後は当分、領主生活で冒険もしないしのんびり生活できるだろうからさ。今までのことはきれいさっぱり水に流して心機一転だ」


 俺はあまりよくわからない理屈でとりあえず場をまとめる。


「お、それより目的の町が見えてきたぞ!」


 馬車が森の街道を抜けると遠くに町が見えた。それは俺が領主を任せられたディナン保護領で一番大きな町『ルナミュール』だった。領主が住む館もルナミュールにある。あの町がこれから自分が治める町になるのだと思うとちょっとした高揚感を覚えた。


(父上、兄上……。王家を追放されてから幾年の歳月が過ぎただろうか。俺は今、遂に自分の領地を得るまでになった。俺はまだまだ上り詰める。それまで遠いレザリアの地で何も気づかず待っているがいい……)


 俺はそう心の中で語りかける。ここからが真の意味での始まりなのだ。


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