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第16話 閃光の貴公子ユーリ

 ユーリは山の中腹に広がる大きな湖のそばまで来るとそこで足を止めた。そして、腰から剣を抜くと虚空に向かって剣を振り始めた。俺たちはその様子を近くの森の中に潜みながら観察する。


「はぁッ! やぁッ! とぉッ!」


 声を上げて流れるように剣を振る。仮想の相手を前提としたイメージトレーニングのようなものだろうか。数十分ほど剣を振ると少し疲れたのか、ユーリは一旦休憩を取った。革袋の中から水筒を取り出しゴクゴクと飲む。もちろん水を飲む時も兜は被ったままだ。どうやって兜を被りながら飲食するのかと思うところだが、ユーリの兜は口元が開く仕様になっていて食べたり飲んだりは簡単にできるようになっていた。


 休憩を終えると、ユーリは今度は剣を構えたまま、先ほどとは一転して全く動かなくなった。すると、ユーリの体から何かオーラのようなものが漂い始める。


「あれって身体強化系の魔法か?」


 俺は隣にいるミアに小声でささやく。


「……違うと思うわ。あれは多分『闘気』ね」


「闘気?」


「そう。簡単に言えば肉体や物体を強化させる力のようなもの」


 ミアは闘気について簡単に説明し始めた。何でも闘気というのは、身体から湧き出るエネルギーのようなものらしい。そういう意味では魔力と似ているが、闘気と魔力は相反する性質を持つらしく、闘気が使える者は魔法が使えず、魔法が使えない者は闘気が使える場合がほとんどだとか。


「身体強化の魔法と違うのは、闘気は自分の肉体の一部だけ強化できたり、闘気そのものを放出して攻撃することができたりするところかしらね。近接戦闘でより応用が利きやすいのは闘気の方だと思うわ」


「……なるほどな。じゃあユーリは実は闘気使いだったというわけか。それで、今はその闘気を出す訓練をしていると」


「そういうことね」


「……えっとね、私は魔法使いだからあまりわからないけど、あのユーリって人の闘気は魔力換算で私と同じぐらいあると思う! ちょっとびっくりした♪」


 ミアの説明を聞いていたアマンダが言った。……アマンダと同じぐらいということは、相当なレベルなのではないだろうか?


 ユーリはそれからしばらく自身に闘気を纏わせる訓練をしていた。簡単そうに見えてなかなか大変なのか、ユーリの額にじんわり汗が浮かんでいる。その訓練を一時間ちょっとした後、ユーリは再度休憩を取った。ユーリは革袋からりんごを取り出して食べ始めた。りんごを齧っては水筒の水をゴクゴクと飲む。


 二回目の休憩が終わった後、ユーリは今度は湖に向かって剣を構えた。さらに闘気を体に纏わせる。


「……闘気解放《フォース・フィールド》!!」


 ユーリがそう叫んだ瞬間、ユーリの纏う闘気が爆発的に大きくなった。闘気はユーリだけでなく、ユーリの持つ剣からも発せられている。その状態でユーリは、湖に向かって剣を振り下ろした。


――刹那、信じられない光景が目に映った。……文字通り、湖が衝撃波によって真っ二つに割れていたのだ。ユーリはその後も何度も湖に向かって斬撃を繰り出す。そのたびに湖が何度も真っ二つに割れる。しかもたまに湖の底が見える。信じられないほどの威力だった。


「凄まじいわね……」


「すごい……」


 これにはミアとアマンダもかなり驚いていた。……正直俺も、これなら魔王ですら簡単に倒せるのではないかと思うレベルだった。


(……ユーリを仲間にするのは確定だな。これほどの実力を持つ剣士、剣闘士にしておくにはもったいなさすぎる)


 ユーリはその後も思う存分、剣を振るった。……しばらく経つとさすがに闘気を使いすぎて疲れたのか、今日の修行は終わりという感じでユーリは後片付けをし始める。そして、ユーリは周りに人がいないことを慎重に確認すると、そっと兜に手をかけた。どうやら兜を脱ぐつもりらしい。俺は遂にユーリの素顔を見られると思い、ユーリから目を離さなかった。ミアとアマンダも同じように固唾をのんでユーリを見つめている。ユーリは俺たちの存在に気づくことなくそっとその兜を脱いだ――


――兜を脱いだユーリは、びっくりするほどの美少年であった。かなり中性的な雰囲気で貴公子という二つ名がとてもよく似合う。もし素顔のまま試合をしていたら、きっとかなりの数の女性ファンができたことだろう。


 兜を脱いだ後、ユーリは革袋から布切れを取り出し、湖の水に浸した。そして、それで汗ばんだ顔や首を拭った。ユーリは今日も頑張った! というようなとてもさわやかな顔をしていた。その後、ユーリは再び兜を被り、荷物を持って来た道を戻り始めた。きっと街に戻るのだろう。俺たちはユーリが完全に去ったのを確認し、森の中から出る。


「なんていうか……色々と衝撃的だったわね」


「……そうだな。まさに貴公子って感じだった」


「すごいかっこよかったね!」


 みんなユーリの素顔とその実力に驚いていた。


「……二人ともユーリを仲間にするのに異論はないな?」


「ええ、もちろん」


「私も!」


 ユーリを仲間に誘うのは全会一致で決まった。後はユーリに話をして本人の了承を得るだけだ。……それは翌日することにして、今日は宿まで帰った。


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