第10話 仲間を求めて
「……それで、これからの予定は? まさかずっと盗賊退治をするわけじゃないわよね?」
とある都市のとある食堂でミアが言った。時刻は午後三時過ぎ。俺たちはお茶を飲みながら休憩していた。席はテラス席だ。天気は快晴で風が気持ちいい。
「そうだな……」
俺は紅茶のカップを片手に答える。
「ミア、今の俺たち勇者パーティに足りないものはなんだと思う?」
「なにその質問」
「いいから」
「……うーん、ありすぎて一つに絞れないけど、敢えて一つ言うとしたら勇者の実力かしらね。クライスって基本的に神剣ゼルフィウスによる雷撃しかできないでしょ。相手が雑魚ならそれでもいいけど、強力な敵相手だと通用しないと思う」
ミアの答えは、まさかの俺の戦闘能力へのダメ出しであった。確かに俺の戦闘能力は依然としてD級冒険者のそれだ。魔法もろくに使えないし、剣の腕も一般人に毛が生えたレベル。神剣ゼルフィウスがなければゴブリン相手でも苦戦するかもしれない。……いや、さすがにゴブリンは倒せるけども。
「なるほど、確かに俺はお世辞にも強いとは言えない。しかし、だ。俺は別に勇者が強くなくてもいいと考えている。大切なのは勇者が強いことではなく、勇者パーティが強いことだ。勇者が知略担当としての軍師とかリーダーでもいい、そうだろ?」
「……まぁそういう意見もあると思うわ」
「であれば、今の俺たち勇者パーティに足りないものは、ずばり『仲間』だ。そもそも勇者パーティが勇者とその補佐官しかいないってパーティとすら言えるのかも怪しい」
俺はそう言ってお茶の入ったカップに口をつける。
「それには同意するわ。というか盗賊退治の前に先に仲間を集めるべきだったと思う」
……全くもってその通りだ。なぜ最初に仲間集めを思いつかなかったのか、自分でもわからない。
「……というわけで、今後の予定は仲間集めだ。世界最強の勇者パーティにふさわしい仲間を集めるんだ」
「世界最強?」
「そう、世界最強」
俺は力強く言った。ミアは何がおかしいのかちょっと笑っていた。……全く、一体何がおかしいというのか。勇者の仲間といったら世界最強クラスと相場は決まっているだろう。
「それで、具体的にはどんな人を仲間にしようと考えてるの?」
「真っ先に仲間にしたいのは、やはり魔法が得意なやつだな」
ミアはそれなりに魔法が使えるが、自身を強化するものがほとんどで強力な攻撃魔法やら治癒魔法やらはあまり使えない。もちろん俺も魔法は苦手でごくごく初等のものしか使えない。今の勇者パーティには魔法担当の人員が決定的に欠けているのだ。
「魔法使いね……冒険者ギルドや傭兵斡旋所で求人出してみる?」
「いや、その必要はない。驚くかもしれないが、俺は世界最強クラスの魔法使いと知り合いなんだ。そいつとは俺が以前に冒険者として任務をこなしていた時に知り合ったんだが、魔法なら自分は世界最強クラスだって言っていた」
「……それ、信用できるの?」
「もちろん。というか有名人だからミアでも聞いたことがあると思う。『マーク・スタイロン』っていう名前なんだが、聞いたことはないか?」
「マーク・スタイロンってあのマーク・スタイロン!?」
ミアは驚いた様子で言った。
「あぁ、王国で最高の魔法使いと言われる『大賢者』マーク・スタイロンだ」
大賢者……その称号はエステニア王国でも当代最高と言われる魔法使いに贈られる称号だ。マークに直接聞いたことがあるが、自分は史上最年少で大賢者の称号を贈られたという……。世界最強の勇者パーティの魔法担当として、これほどふさわしい人物もいないだろう。
「そんな有名人とどうやって知り合ったの?」
「それは……話せば長くなるんだけどな。簡単に言うとヤツが行き倒れていたところを偶然俺が助けて、そのあと一緒にいろいろ行動してたら仲良くなったって感じかな」
「行き倒れって……どうして?」
「道端に生えていたきのこを食べたら中毒になったらしい。俺は動けなくなっていたヤツを近くの民家まで運んで薬草を飲ませたりして介抱したんだ。結構、大変だったんだぜ?」
「なんで道端に生えてたきのこなんて食べたの?」
「ヤツ曰く、『おいしそうだった。毒キノコとは思わなかった』」
「…………」
ミアは呆れた顔をする。
「い、いや、でも毒キノコ食べて倒れるとか人生でもたまにあることだろ? そりゃちょっと変わったところはあるけど全然いいやつだし、大丈夫だって!」
俺は精一杯擁護した。実際、いいやつというのは確かだ。俺自身、マークの魔法には何度か助けられたことがある。例えば、俺は過去にマークと一緒に仕事をしたときにとてつもない数のオークの群れに遭遇して死を覚悟したことがあったのだが、そのときにマークはまるでちょっと掃除でもするかのように最上級炎熱呪文でオークの群れをまるごと焼き払ったのだ。あの威力はまさに大賢者といって然るべきだろう。
「……まぁ、最終的に決めるのはクライスだし、あなたの判断を尊重するわ」
ミアはそう言ってお茶が入ったカップに口をつける。意外と物分りがいいのがミアのいいところだと思った。




