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泡沫の物語(ミソロジー)  作者: 月ノ葉
2/5

第0頁 その本の読者


カツカツカツカツ……

トントントントン……


部屋の中に響く2人の足音。

主らしき男と、その従者らしきむすめだ。2人がいる部屋の壁には無数の本がきれいに並べられている。


「やはりこの部屋が1番落ち着くな。」


主らしき男は言った。この男こそ世界の創始者と言われ、世界の人々にイザナミともイザナキともガイアとも呼ばれる者、始祖神しそがみである。


「そうですね。」


従者らしきむすめもそれに応えた。このむすめは始祖神補佐という立場で、始祖神に仕えている者、白蓮びゃくれんである。


「仕事と言ってもやることはいつも同じ。実につまらない。たまには休憩をとらないとやっていけないな。」


「そうですね。ですが1つ間違いがあります。(わたくし)には、たまの休憩ではなく、いつも通りの光景に見えますが。と言うか、仕事を真面目にやっている方が珍しいのでは?」


「相変わらず厳しいな。お前は。」(汗)


「長年の付き合いですから。」


そんな会話をしながら2人は広い部屋の中を歩いていた。


「それより、今日はいつもと違いますね。いつもならお1人でこの部屋に参られますのに、今日は私も連れて。一体何をなさるのですか?」


「あぁ。今日は珍しく仕事が早く終わったからな。自由な時間がたくさん出来た訳だ。一人で暇を潰すのも悪くはないが、今日は少し振り返りたい物語があってな。お前も一緒にと誘った訳だ。」


「私と共に振り返りたい物語ですか?」


「そうだ。久しぶりにあの者たちの物語が振り返りたくなってな。お前と見るのがいいと思ったんだ。」


「“あの者たち”ですか。お好きですね、その物語が。」


白蓮はそう返した。始祖神が“あの者たち”と言うのには、心当たりが1つしか無かったからだ。


「あぁ。あの者たちは神継としての使命を、それ以前にもそれ以後にも無いほど果たしてくれた。この者たちを越える者たちは、恐らく現れないだろう。」


「あの方たちの活躍は稀に見るものでしたからね。神継の物語の数々は戦いが主ですが、この者たちは人間としての心の動きがよく分かるものでした。当時の私はすごく衝撃を受けました。」



2人はある本棚の前で立ち止まった。

始祖神は数ある本の中から1冊の本に手をかけた。そして、その本を開いた。それと同時に本の中から魔方陣が出現し、ペラペラと本のページをめくり始めた。


「“暗闇を明るく照らす太陽のようにならなくていい。ただ、暗闇の中に小さく輝く無数の星のようになればいい。”」


「神に囚われず、人間としての心を大切にした者たち。その者たちが紡いだ物語メソロジーを、楽しむとしよう。」


「神継の歴史史上、最もその名を刻んだ者たちの物語メソロジー……ですか。まぁ、始祖神様が珍しく仕事をちゃんと終わらせたと言うことですので、いいでしょう。久々に振り返りましょうか。」


「……相変わらずの辛口だな…。」




ーーその本のページはペラペラとめくられていった。



第0頁 終

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