プロローグ
ーー神などいないこの世界の中で
神に対して嘆き、叫ぶ、そんな世界の中で
神に対する哀歌が響く、その中でも
神は神を求め続ける。
ーーこれが、全ての始まりだった。
始め、其処には何もなかった。一言で言えば「無」の広がる、“世界”とは言いがたい世界だった。
しかし、その世界の中に突如光が生まれた。その光は徐々に人の形を成していき、一人の神を創造した。
そう、その神こそ全てを創造し、この長きにわたる物語の「始まり」を作った神、世界の創始者・始祖神であった。
始祖神はその世界の中に基盤となる土台と人間を作った。だが、「無」の中に作った土台と人間は所詮「無」のままであった。世界の中に彩はなく、人々は心のない人形のように、ただ土台を彷徨うだけであった。
そこで始祖神は、世界を司る7人の神を創造した。
*全てを創造せし光の神・聖天神
*全てを死へ誘う闇の神・魔天神
*全てを詠む風の神・風天神
*全てを浄化せし水の神・水天神
*全てを欺く炎の神・炎天神
*全てを忘却せし無の神・無天神
*全てを牛耳る心の神・心天神
これら7人の神は七天神と呼ばれ、世界に彩を与えた。無の基盤となる土台は大地へと姿を変え、人間は意思と感情を持って行動するようになった。
こうして世界は”世界“と言えるようになったのであった。
しかし、時が経つにつれて人間はだんだん悪に染まるようになった。力のある者は力の無い者を支配し、人々は争いを始めた。その中で、怨み・憎み・悲しみ、そして膨大な悪の心を持ったまま死んだ人間の魂は、それを核として形を成し、「悪霊」となって人々の魂を喰らい始めた。
これを受け、始祖神と七天神は話し合いの末、対策をすることとなった。そして、1つの解決策を見出だした。
その解決策は、七天神を地上に向かわせ、七天神自ら悪を倒すというものだった。
始祖神を始めとする神々には、肉体は存在していないため、七天神は“魂”というかたちで地上に向かった。そして、各々が選んだこれから生まれる人間の中に入り込んだ。そうして出来上がったのが、『神継』である。これは、人間の体と心を持ち、同時に神の魂と力を持つ、選ばれし7人に与えられる称号であった。
神継たちは次々と悪霊や悪に染まった人々を倒し、世界は元の姿を取り戻した。
だが、100年もすれば人々は変わり、世界もまた、悪に染まってしまった。人間にとって悪とは、それほど影響力があるものだったのだ。
そこで始祖神は100年に1度、七天神を地上に送り、神継として世界を元に戻すことを任命した。七天神はこれを受け、100年に1度地上に向かい、悪を倒し続けた。
それこそが今も続くこの長きにわたる物語の序章であった。七天神は現在に至るまで、この物語を紡ぎ続けている。
これは、その長きにわたる物語の中で、その歴史に最も名を刻んだある代の神継の物語である。