深夜バスにて
最終のバスに乗った。
バス車内には私を含めて四人いた。
30才ぐらいのカバンを抱えたサラリーマン、季節外れの白いワンピースを着た青白い女性、そして運転手、最後に私。
さすがに、私のように残業するようなOLは多くないようだ。
しかし、バスに乗り込んだとき、白いワンピースの女がこちらをじっと見つめてきたときは気味が悪い。
できるだけ彼女との近くには座りたくない。
四人しかいない車内。
席はいくらでもある。
そう思い座ろうとすると、もしもしとサラリーマンが声をかけてきた。
「貴女も残業ですか?」
「ええ、そうです。お互い大変ですね。」
声をかけられたこともあり、なんとなくサラリーマンの前の席に座った。
私の斜めにはあの女が座っている。また、彼女はこちらを見つめてくる。
幽霊みたいな人…。少し寒気がしてきた。
「あの、あなたにあの女の人が見えますか」
小声でサラリーマンに話しかける。
「ああ、あの幽霊のような人ね」
私は、ほっと胸を撫で下ろした。良かった彼にも見えているようだ。
そうそう、聞いた話ですけどねと、サラリーマンは言った。
「このバスには、幽霊が出るらしいですよ。ある駅で惨殺された女の人がこのバスに、現れるそうだよ。そして、このバスに乗った客にその幽霊がつきまとうらしくてね。」
「やめてくださいよー。私、怖い話は苦手で…。」
私が降りるのは次の駅だ。
「もうそろそろ駅に着くんですよ、ああ降りたくない。」
「僕も次の駅なんですよ。二人なら大丈夫ですよ」
男はカバンを握りしめていった。
この人も実は、怖がりなのでは?そう思うと安心した。
そうこうしているうちに、着いたようだ。
いつの間にか停車ボタンを押してくれていたらしい。
私はいつも定期を使っている。
定期入れはあったが、どうやらお財布は会社に忘れたようだ。
「先に降りてます、」
とサラリーマンは降りてしまった。
私も降りようと思い、定期を見せるが
「お客さん、この定期期限切れてますよ」
と運転手に引き留められてしまった。
どうしよう、財布もないし…。
あのワンピースの女は相変わらずこちらを見ているような気がする。早くバスから降りたいのに。
「とりあえず、最後まで乗ってて貰えますか」
そう言われ、私は頷くことしか出来なかった。
次は⚪⚪⚪
最後の駅に着いたようだ、
運転手に話しかけると、すみませんと謝られた。
「実は、あなたが降りようとした駅ではちょっと事件がありましてね。」
「女の人が惨殺されたという事件ですか。」
「そうそう、ちょうど最終バスの時間帯でね。僕の知る限り、あの駅で降りるのはさっきの彼ぐらいしかいないから。」
運転手仲間で噂がたっているんだよ。
「彼が犯人じゃないかと。確かまだ、その事件の犯人は捕まってないらしい。」
ぞわっと鳥肌がたつ。
「本当にありがとうございます。」
今日は、何だか気味の悪い日だ。
誰もいないところに止まるバス
誰かと話すサラリーマン
私が降りようとすると、運転手さんは誰かと話していた。
あの、と声をかける。
「先程から一人で誰と話しているんですか。」