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魔王様の婚活事情  作者: りん
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一望千頃①

「・・・・・・で、夜の飛竜籠に2人で乗って遊覧飛行したんですよ」

「へー」

「案内人さんもいるのに、彼女が「怖い」とか言って俺にべったりしてきて・・・・・・」

「フンッ落ちればいいのに」


謁見場ではいつものようにラースとメイド長は雑談をしていた、いや、一方的にラースが惚気話を語っていた。

魔王は相変わらず玉座の後ろの隠れている。


「・・・・・・でですよ、「らーたん、手を握ってて」とか言い「ちょっと待って」なが・・・・・・なんですか?」

「らーたんって何?」

「あ、俺らーたんって呼ばれてるんですよ、ラースだから」

「はっ?なんでたった3文字しかない名前を2文字にする必要があるの?っていうか「たん」ってアホなの?」

「いいじゃないですか、可愛いんだから」


玉座の後ろからはカリカリと何かを書き記す音が聞こえている。


「彼女の事はなんて呼んでるの?」

「「みーたん」です」

「・・・・・・よく恥ずかし気もなく言えるわね。本名は?」


躊躇いなく答えたラースだったが、他人に指摘されるとさすがに恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしていた。


「ミクです」

「・・・・・・可愛い名前じゃない」

「ですよね?名は体を現すとか言いますし」


否定の言葉が来ると思っていたラースはまさかの誉め言葉に調子に乗り出した。


「でも、名前は自分で付けるものでもないし、どうしようもないものだからね・・・・・・知り合いに物凄い美人がいるのよ、でも名前がアンゴ……ガタンッ!・・・・・・」


メイド長が話している途中で大きな音が鳴った。

そして手に紙の束を抱えた魔王が立っていた。ラースはすぐさま姿勢を正す。


「2人でなんの話してたの?」


白々しく聞く魔王。


「えぇ、知り合いの名前「もっといい景色があるわよ」」


にんまりと笑みを浮かべながら話しだしたメイド長を遮るように魔王は声をあげた。

たった今現れたばかりの魔王がなぜ景色の話を知っているのか?との矛盾に気づく事のないラース。


「そんな場所が?飛竜籠が最高って聞きますよ?」


飛竜籠とは、飛竜が窓のある大きな籠を持ち、その中に人が入って移動するというサービスだ。日本でいうところのヘリの遊覧飛行。人気も高いが料金も高い。


「景色が一望できる、素敵な場所よ」

「そ、そんなところが?」

「えぇ、そこでは魔人の姿を私は見た事ないから、彼女喜ぶんじゃない?彼女も一緒に連れて行ってあげてもいいわよ」

「お、お願いします!」

「ええ、任せて!明日の朝から4人で行きましょっ」


ドヤ顔で準備があると魔王はどこかへ走り去って行った。その後姿をメイド長は呆然といった表情で眺めていた。

魔人がいない場所+景色が一望できる+ドヤ顔、ここから導き出される結果は、どう考えても碌な事ではない。遥か上空に浮かぶ大陸である天界であろう事は想像に難くない。だが、どうやって行く気なのか?飛竜ではあの高さまで行けるはずもない。


「まあ、謝罪しないといけなかったからちょうどいいと考えるしかないわ」




翌日、飛竜に乗って4人は森の外れに来ていた。


「ここで乗り換えるわよ~」


ガイドのつもりなのか、小さな旗を振る魔王。

その指し示した先には巨大な龍が寝そべり、その隣に外洋用軍艦が鎮座している。

龍、それは飛竜とは比べる事のできないほど格上の存在であり、世界に3頭しかおらず、星の裁定者とも言われるその力は、遥か昔「明るくて眠れりにくい」といった理由で空に浮かぶ星の一つを消し去った者がいると伝え聞いていた。


「姐御の一の子分のエンドだ、姐御の知り合いなら俺のマブダチだ。気楽にしてくれ」


それは星を消した者の名だった。それを子分?今も親しそうに龍の鼻を叩いている・・・・・・

ふっと隣を見てみると、ラースも真っ青な顔で震えていた。


「わーカッコイイ!」


ラースの彼女のみくの声だ。

バカなのか?事態がわからないのか?


魔王はというと懐から紙の束を取り出して、必死な様相で何かを書き込んでいた。

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