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■第12話 突如発覚した ”その正体 ”

 

 

 『ねぇ・・・ ミスギ君・・・。』

 

 

ミコトは逸る気持ちを抑えられずに、ソウスケに詰め寄った。

自転車のストッパーを立て、どこかすがる様な不安定な表情で見つめる。


その時横断歩道の信号は青色に変わり、音響式信号から鳴き交わし音の

ピヨピヨという音が流れ出したけれど、ミコトのその表情を目にソウスケも

動き出さずに二の句が継がれるのを黙って待った。


すると急に思い出したかのように、ミコトは学校指定カバンに大切にしまい

込んでいる茶封筒を取り出そうと、バックルをはずしてカバンに手を入れ

それを掴み引っ張り出しかけて、止まる。

 

 

 

 (最初から作者だって言うつもりなら、とっくに言ってるか・・・。)

 

 

 

歯がゆく甘酸っぱい恋物語の作者だと気付かれたくなくて、ソウスケは

ペンネームだけ記してミコトの机にこっそりそれを置いて感想を求めたの

かもしれない。


そうだとしたら ”それ ”には気付かぬフリをしていた方が良いのではないかと。

 

 

『ん?』 ミコトのカバンから何か出て来るのかと、ソウスケはキョトンと

した顔でまっすぐ見つめ待ち続ける。

 

 

  

 『ぁ、ううん・・・ な、なんでもない!』 

 

 

 

ひとりアタフタと慌ててカバンを自転車のカゴに再び納め直すと、小さく俯き

手持無沙汰に顔のサイドに掛かる髪の毛を耳にかけたミコト。

 

現れた小さな片耳は、思いがけず突如発覚した ”その正体 ”に激しく狼狽え

夕陽より真っ赤に染まっていた。 

 

 

『ねぇ・・・ ミスギ君・・・。』 もう一度だけ、小さく小さく呼び掛ける。

 

 

『なに?』 なにか言いたげに、しかし中々言い出さず口をつぐむミコトを、

ソウスケは不思議そうに見つめ返すと、やや暫く黙りこくってそして囁くよう

にミコトは呟いた。

 

 

 

 『相変わらず・・・

 

  ・・・本読むの、好き・・・ なんだよね・・・?』

 

 

 

なんだか勇気を絞り出して言葉を紡いだようなその空気に、たかがそのひと言を言う為に何故そんなにミコトがかしこまるのか理解出来ないまま、ソウスケは

コクリと頷く。

 

 

 

 『うん、好きだけど・・・ それが、どうかした??』

 

 

 

『・・・ううんっ!!』 ミコトはぶんぶんと顔を大仰に大きく横に振った。 

ついでに両手の平も左右に揺らして慌てふためいている。


そして、『なんでもない、ごめん。』 と小さく続けた。

 

 

再びそっと俯いたミコト。


足元を見つめると、内股になったダークブラウンのローファーの爪先に夕陽が

反射してキラキラ輝いている。 

思わず、ぎゅっと目を瞑った。

 

 

 

頬がジリジリと火照り、心臓が急速に早鐘を打ち付けていた。

 

 

 

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