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番外編-2

 俺は書かれている内容を一度読んだ。

 だが一度では理解できないのでもう一度読んだ。

 きっと気のせいで俺は何かを見間違えているのだろうと思うってもう一度読む。


 だが内容は変わらない。

 これは悪い夢かと空を仰いでから、どうしてここにこれが来たのかと思う。


「何でこっちなんだろうな。……あいつらの考えが分からない」


 そもそもお見合いが嫌で逃げ出した先でこうなったのだ。

 それで婚約という形で収まったはずである。


「どうせ俺は、他の人達に比べて重要度が低いからな」


 大人しいからという理由で貧乏くじを引かされてしまった。

 という事になっているけれど。

 メイベルの事が俺の頭をよぎり自然と笑みが浮かぶ。


 彼女の様な快活な女の子に出会えると思わなかったのだ。

 それを思えば凄く幸運に思える。

 ただ……ちょっと普通と違って、強いのが気になる。


 とても気になる。

 だがそれはたいした問題じゃない。

 むしろそれよりも、


「明日会いに行くよ、カナタ by エリト。……来るってここにか? だが城では無くこちらに来るって事は、俺がよくここに来ているのを知っているってことか」


 それはそれで面倒だなと俺は思いながらも、あの、色々な意味での“変態”というか“あくの強い”エリトについては事前説明をしておいた方が良いかもしれない。

 心の準備はあればある方が良いなと思いながら俺はは開いた手紙を閉じた。そこで、


「きゃああああああ」


 メイベルの悲鳴を聞きながら、ああ、またかと俺は思いながら走りだしたのだった。








 急いで階段を下りて、一階の店の前にまでやってくると……予想通りの人物が店の中にいた。

 肩までの銀髪に青い瞳の男。

 優男といった雰囲気で、普通の恰好をしていれば女性にもてる。


 実際にその濃い性格を差し引いても、もてていた。

 だが温かいこの時期とはいえ上半身ほぼ全部を惜しみなくさらしている彼の服というか……薄布は、ちょっとこの辺りの常識も含めておかしい。

 そしてそれだけなら個人の趣味で済むのだが、彼は美しい物が大好きなのだ。


 しかも美しい女性には芝居がかった様な態度を取るのだ。

 それが人にとってはとても“気持ちが悪い”らしい。

 現にメイベルがプルプルしているのが見える。


 それを見ながら俺が中に入ると、


「カナタ!」


 メイベルが俺に向かって走ってきて抱きついてくる。

 何、この可愛い生き物! と俺が心の底から萌えているとそこで、


「ふむ、愛し合う恋人同士という物はいいね。これはこれでいい物だ」

「エリト……なんで突然来るんだ」


 そこでエリトは深々と嘆息をして、


「まさか君が本当にメイベル姫と結ばれてしまうと思わなかったのでね」

「どういう意味だ?」

「……まさかこんな美形ぞろいだったなんて、思わなかった」


 そう嘆くように言うエリトに、何処からかメイベル姫はび気だの何だのと聞いてやってきたらしいと俺は思う。

 このエリトの厄介な性癖として、ひたすら美しい物を愛でるというのもある。

 その中には、自信の肉体もはいるが。


 だがそれだけでは満足できないらしく、美しい物があると聞きに行くと見に行く癖がある。

 そこで、クロの手伝いに奥に入っていたらしいフィリアが出てきて、エリトに気付いた。


「あら、貴方は?」

「僕はカナタの従兄弟でエリトと申します。美しい方」

「……そう」


 若干、あのフィリアも引いておいるようだった。

 普段から褒められるのが大好きな感じではあったが、ちょっとエリトは違うらしい。

 だがそんなフィリアの手を取り、エリトはキスをしようとした所で、


「んー、フィリアに君には触れて欲しくないかな」


 優しげな声音で、でも瞳がが笑っていないクロ。

 つまり俺の“女”に手を出すなといいたいんですね、クロ師匠! と俺が思っていると、そんなクロを見たエリトが、


「この漆黒を纏いし貴方も美しい」


 陶酔するようにエリト言うのを聞いてクロが珍しく一歩後ろに下がりながら、


「……僕は男ですが」

「男性でも美しい物は素晴らしい」


 その一言をエリトが告げた瞬間、エリトは店から吹き飛ばされた。


「しまった、つい気持ち悪くてやり過ぎた……」

 

 道に出ると同時に爆発音と煙が噴き出す。

 よほどクロが気持ち悪かったのか、その魔法は俺でもよく分からなかった。

 だが俺は知っているのだ。


 この程度で彼が死ぬはずはないのだと。

 案の定、煙が晴れてくれば無傷のエリトがいる。

 しかし服はクロの魔法に耐え切れず……急いで俺は上着を持ってエリトに近づき、


「いいからこれを着てこっちに来い。そして、変な行動を取るな」

「? 変な行動とは心外だね」

「幾ら、魔法防御、物理防御が異様に高いからといっても、それを越えたらダメージを受けるだろうが」

「心配してくれるのは嬉しいね。カナタは相変わらず素直だ」

「おかげで貧乏くじばかり引かされているよ」


 そう俺は言い返しながら俺はエリトをとりあえず服で体を隠させたまま店に連れてきて、


「とりあえず俺から説明を。彼が、俺の従兄弟のエリトで、物理攻撃も魔法攻撃も聞かない、代わり魔法の全く使えない人物です」


 そう説明したのだった。




 

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