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華のない男〈1〉

 「大丈夫、何も心配することは無い。」

 その日、フラッシュの洪水を前に僕の手を握り、父さんは言った。

 「お前はこの世界に、愛されるために生まれたのだから」

 その横顔を見上げ、僕は自分の本当の役割を知った。

 「お前ならできるさ…アトム。」

 そう、僕の名はアトム。

 すべてのロボットに未来を与えるのが僕の役割だった



 華のない男だ。


 テーブルを挟んで向いの席に腰をかけた男と、彼の登録書の画像を交互に見つつ、

カナデはぽつりと思った。

 他人の容姿を喩耶するような事が彼女の好みな訳では無い。加えて言えば彼の容姿は嫌悪感を抱くようなものでは決してなく、至って普通の成人男性といった要望であった。


 ただそれは彼が「人間」であれば、である。


「登録ナンバー、HM−0305−R5874。登録名、ヨシオさん。間違いありませんか?」

彼女がその丸い目を見開いて物珍しそうに彼を見つめる隣で、上司であるタカノは淡々と彼の登録情報を確認し、今後の審査の説明を始めている。


「本日を審査開始日として原則14日の間に、

担当の審査官がヨシオさんの普段の生活を拝見させて頂きます。

その審査に基づいて現在のヨシオさんが特別人権の譲渡を許可出来る状態にあるかを判断させて頂きます。

その審査を通過後、人口知能の最終検査を通過されれば

約1週間後には特別人権制度によりあらゆる権利が認められます。」


「担当の審査官の方はどなたになるんでしょうか?」

その男、ヨシオは一通りの説明を真剣な表情で聞き入り、最後に尋ねた。

「ああ、担当者は彼女です。」

そう言ってタカノに指定され、カナデは背筋を延ばしヨシオにぴょこんと頭を下げた。

「間宮 奏と言います。よろしくお願いいたします。」

「よ、よろしくお願いします。」

ヨシオが不安げにタカノに目線を遣ると、タカノは全てを理解しているように

微笑みながら頷き答えた。

「大丈夫ですよ。彼女、若いですがきちんと試験に合格した審査官ですから。

 まあ新人なので、私が指導員として同行して補佐させて頂きますし。」

「そうなんですか……」

ヨシオは依然不安げな様子だったが、カナデは丸い瞳を好奇心で輝かせ彼に最初の質問を投げかけた。


「ヨシオさんのその地味な外見には何か意味があるんですか?」


室内の空気が一瞬止まり、奥の室長室から偶然のように顔を出した室長の大笑いと頭を抱えたタカノのため息がその空間に時間を取り戻した。






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