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げんしょのおはなし 改訂版

作者: 御陵一茶

以前書いたものを加筆修正してみました。

それは、はるか遠い遠いハジマリのお話


なにもないところからふと何かが存在しました。それは徐々に形を成していき、無色は透き通るくらいの蒼となります。


世界の誕生です。


そして、まだ世界がうまれたばかりの頃でした。


世界と一緒に5人の神様がうまれ、この世界をよいものにしたいと、そう考えました。

まず神様は青い海だけの世界に空と大地をつくりました。


世界はまわりだします。それはそれはとても綺麗な世界になりました。


ですが世界にはそれしかありません。


いきものがいないのです。


神様たちは悩みました。どうしたらいきものがうまれるのか、頭のいい神様たちでもまったく思いつきません。


それにはワケがありました。


どうやって神様たちはうまれてきたのか、神様たちはわかっていないのでした。


あるとき一人の神様が言いました。

きれいなきれいな女の神様です。


わたしたちの身体からつくれないかと。


その言葉を聞いた他の神様はとても悩みます。


なぜならそれは泣いてしまうくらい、痛いからです。


それにもしかしたら失敗するかもしれないのです。


きれいな神様はつよく訴えました。けれども他の神様は首を左右に振ります。


他の4人の神様が悩んでいるあいだに、きれいな女の神様は自分の身体からいのちをつくってしまいます。


痛い痛いと泪を流しながらもいのちをつくります。


世界にあたらしい産声があがりました。


いのちがうまれたのです。


きれいな神様はよろこび、笑いました。


それを見たやさしい女の神様はこう言いました。


わたしたちもいのちをつくりましょう。


やさしい神様はすぐに自分の身体からいのちをつくります。


もちろんとても痛いので悲鳴をあげました。

ですがきれいな神様がずっと側にいてくれました。がんばってと応援してくれます。


こうしてやさしい神様もいのちをつくります。


3人の神様もついには自分たちの身体からいのちをつくります。


そうしてうまれたのが49人の神様のつかいです。


神様のつかいは神様からとても愛されました。


神様のつかいも神様を愛していました。


神様たちはこれ以上のいのちをつくることができなくなりました。疲れてしまったからです。神様はかつてのつよい力を失ってしまいます。


いちばんつよい男の神様は言いました。


おぉなんてことだ!わたしはこんなにもよわくなってしまったではないか!


やさしい神様は言います。


力はこの世界にはいりません。あなたはつらいでしょうが、わたしはこれでよかったと思います。


やさしい神様はいつも自分の力をきらっていました。誰よりもやさしい神様でした。


つよい神様はそんなやさしい神様を愛していました。


それから永い時間が流れます。完全な世界のなかで誰もがしあわせに過ごします。


何不自由ない暮らしと神様からの愛をもらっていました。


つよい神様は言います。


これですばらしい世界になったと。


神様のつかいはみんな揃って頷きました。


ですがきれいな神様だけが頷きませんでした。


きれいな神様は永い時間の中であることを知ってしまうのです。それはとてもとても悲しい真実です。


かしこい男の神様が聞きました。


あぁどうしてきみは頷いてくれないのですか。


きれいな神様は答えました。


この世界にはわたしたちしかいないからです。


かしこい神様はよくわかりませんでした。


まじめな男の神様が聞きました。


この世界にはぼくたちとぼくたちのつかいがいます。


きれいな神様は悲しい顔で言います。


それはわたしたちなのです。新しいいのちはうまれません。


まじめな神様はよくわかりませんでした。


やさしい神様もつよい神様もきれいな神様を理解できません。

きれいな神様は誰よりも世界を知っていました。


ですがそれはきれいな神様だけです。


そして誰にも理解されないきれいな神様は泣きだします。


世界にきれいな神様の哀しみがひろがりました。


神様たちが何を言っても泣きやみません。

きれいな神様の泪は空から落ち続けます。それは雨となりました。


ずっと降り続ける雨に神様のつかいたちは落ち込んでしまいます。


かしこい神様はそんなきれいな神様を元気にさせたいと思いました。


かしこい神様は何度もきれいな神様を泣きやませようとしましたが、失敗ばかりです。

かしこい神様は考えました。


もっとも頭のよいかしこい神様でもまったく思い浮かびません。


どうしたらいいのか。


神様はもういのちをつくれません。


まじめな神様も手伝います。まじめな神様はとても神様思いな神様でした。


永い時間が流れます。


きれいな神様の泣き声はやがて雷となっていました。


きれいな神様のため息はやがて嵐となりました。


ついには神様と神様のつかいが考えるようになります。


あるとき神様のつかいがかしこい神様のもとに来ます。


神様のつかいが言います。


かみさまがつくれないのなら、わたしたちがつくりましょう。


かしこい神様は言いました。


おまえたちに出来るのですか。


神様のつかいは胸を張って言いました。


わたし一人では出来ませんが、わたしたちなら出来ます。


その言葉を聞いたかしこい神様は神様のつかいに命令しました。


新しいいのちをつくりなさい。

神様のつかいたちは仲のよいものと一緒に新しいいのちをつくりました。


13のいのちです。


それはとても小さいいのちでした。

神様のつかいでは小さいいのちしかつくれなかったのです。とてもよわいものたち。


不完全ないのち。


4人の神様は落ち込んでしまいました。かしこい神様は誰よりも哀しみました。


よくもこんな醜いいのちをつくってくれたな。


かしこい神様とまじめな神様は神様のつかいを滅ぼそうとします。


つよい神様とやさしい神様がそれを止めました。


かしこい神様は言います。


なぜ止めるのですか。


つよい神様は言います。


滅ぼしても意味はない。


まじめな神様は言います。


こんないのちしかつくれないのですよ。


やさしい神様は言います。


それでもいのちです。つかいたちはよくやってくれました。


神様たちが対立してしまいます。


ですが、不思議なことにきれいな神様は不思議ないのちを見て泣きやんだのです。


神様は首をかしげました。


きれいな神様は笑ってこう言いました。


あぁなんて不思議で素晴らしいいのちでしょうか。


かしこい神様とまじめな神様は不完全ないのちを嫌いました。

つよい神様とやさしい神様は不完全ないのちを知らんぷりでいました。


神様のつかいは不完全ないのちを失敗作だと言います。


きれいな神様だけが不完全ないのちを愛しました。


不完全ないのちはどうしてきれいな神様が愛してくれるかがわかりません。


羽の生えた不完全ないのちが聞きました。

どうしてわたしたちを愛してくれるのですか。


きれいな神様が言います。


わかりません。


きれいな神様はすぐに言いなおしました。


ただわたしがあなたたちを愛するようにあなたたちはあなたたちを愛してほしいのです。


大きい体の不完全ないのちが言います。


ぼくたちは神様からも神様のつかいからも捨てられました。


耳の長い不完全ないのちが言います。


わたしたちは醜いから捨てられたのです。


特徴のない不完全ないのちが言います。


そんなわたしたちがわたしたちを愛せるわけありません。


きれいな神様は言います。


どうかそんなことを言わないでください。確かにあなたたちは捨てられたのかもしれません。


不完全ないのちが悲しみました。


きれいな神様は笑って言います。


だからわたしがあなたたちを拾い上げましょう。ひたすらに愛しましょう。


きれいな神様の言葉に不完全ないのちは泣いて喜びました。


不完全ないのちはきれいな神様をお母さんと呼びます。


あるとき、きれいな神様はやさしい神様に言いました。


あのこたちを自由にしてあげたいのです。


やさしいかみさまはいいます。


大地に下ろしてみればよいのではないでしょうか。


きれいな神様はうなずきます。

やがてきれいな神様は不完全ないのちたちを大地に帰します。

かれらはじゆうになったのでした。それはきれいな神様との別れでもありました。


つよい神様もかしこい神様もまじめな神様も怒ってしまったのです。


勝手なことをしてはいけないのです。


きれいな神様は檻に閉じ込められてしまいました。


まっくらな部屋に一人でした。


やさしい神様はいつも謝りにきました。


きれいな神様は怒りません。


かなしんだやさしい神様はきれいな神様の代わりに大地へとおります。


不完全ないのちはきれいな神様が閉じ込められたことを聞いて泣きだします。


7日も泣きつづけました。


やさしい神様は少しだけきれいな神様の気持ちを知ります。


あぁどうしてわたしは気付かなかったのでしょう。わたしたちは完全でした。それはなんて悲しいことでしょう。


やさしい神様も一緒に泣いてくれました。

不完全ないのちはやさしい神様を好きになりました。


やさしい神様は少しだけ不完全ないのちと一緒にいました。


他の神様に見られたらいけないのでやさしい神様は帰るしかありません。


それからのことでした。


なんと不完全ないのちが大地から上がってきたのです。


取り戻せ!わたしたちのお母さんを!


これには神様も神様のつかいも驚きますが、すぐに怒りに変わりました。


不完全ないのちは為す術なく大地へと落とされました。


やさしい神様は頭を下げました。


お願いします。不完全ないのちを見逃してください。


つよい神様はやさしい神様の言うことを聞きました。


ですがかしこい神様とまじめな神様は許してはくれません。


やさしい神様はきれいな神様と一緒に檻へと閉じ込められます。


きれいな神様は嘆きました。


やさしい神様は笑います。


やっとあなたの想いを知りました。わたしも一緒にここにいましょう。


2人は慰め合いながら永い時間を檻で過ごしました。


そしてようやく檻から出られるようになりました。


すぐにきれいな神様とやさしい神様は大地へとおります。


不完全ないのちに会えることを楽しみにしていました。


ですが、大地におりて見たものは


じごくでした。


植物が枯れています。


海が汚れています。


血が流れています。


不完全ないのちが死んでいます。


あらそいでした。


不完全ないのちたちは13のいのちであったため、自分がいちばん偉いとあらそいはじめたのです。


不完全ないのちがきれいな神様とやさしい神様を見つけます。

ただ攻撃されました。


不完全ないのちは神様を忘れてしまったのです。


きれいな神様とやさしい神様はつらい気持ちになりました。


戦うことなど出来ません。


逃げるしかないのです。


きたない世界となったことに他の神様は怒り狂いました。


罰をあたえます。


不完全ないのちはたった1日で滅びました。


きれいな神様は絶望してしまったのです。


やさしい神様も泣きつづけました。


他の神様は2人を長い眠りへとつかせます。


そして事件がおきました。


世界がこわれはじめたのです。


神様の罰が世界に傷をつけてしまったのです。


大地がくずれます。


空が落ちてきます。


海が割れていきます。


世界を救うため神様は自分の身体を使いました。


つよい神様は空を持ち上げました。


かしこい神様は大地を支えました。


まじめな神様は海をつなぎとめました。


ですが、いつまた世界がこわれるかわかりません。


神様たちはその場にとどまることにしました。


それぞれを守るために深い眠りにつきます。


残されたのは神様のつかいです。

神様は大切なことを忘れていました。


神様のつかいに世界を継がせることです。


神様のいない世界に5つの椅子がありました。

神様の座る椅子です。


神様のつかいたちは椅子に座るためあらそい始めるのでした。


醜い醜いあらそいでした。


仲がよかった神様のつかいがあらそいます。


笑い合っていた神様のつかいが次には憎しみあいました。


ですが、かみさまのつかいは死なない体をもっているのでした。


意味のないあらそいがつづきました。


誰も椅子には座れません。


長い時間が流れます。


いつしか神様のつかいはかつてつくりだした13の不完全ないのちをまたつくり直しました。


不完全ないのちは4人のかみさまのつかいから1つをつくります。


13のうち一番つよい不完全ないのちを決めましょう。


勝った不完全ないのちと不完全ないのちをつくった4人が椅子に座ります。


神様のつかいは不完全ないのちが再びあらそうのを楽しく観ているだけでした。


神様のつかいはすっかり忘れていました。


神様は5人いることを。


眠りから目覚めたきれいな神様とやさしい神様は見てしまいます。


笑いながらあらそいを観ている神様のつかいを。


神様は神様のつかいを弱くしました。

それはふかんぜんないのちとよばれるものとおなじちいささになってしまうことです。


力を失った神様のつかいはもう何もできなくなりました。ただ見ることしかできなくなりました。


不完全ないのちはあらそいが終わることに喜びました。


きれいな神様とやさしい神様が大地へとおります。


もう誰も攻撃しませんでした。


あらそいに疲れたからです。


そこでかみさまは驚くものを見てしまいます。


不完全ないのちは神様とは違う方法でいのちを生み出しているのです。


はじめてつくられた時はそんなことはできませんでした。


不完全ないのちは愛しあっていのちをうみます。


それはとてもすばらしいことでした。

かみさまのつかいもかみさまでさえもできないことをふかんぜんないのちはできるのです。


やさしい神様は聞きました。


どうしてあなたたちはいのちをつくりだせるのですか。


羽の生えた不完全ないのちが言います。


わかりません。


そのあとすぐに言い直しました。


いつかだれかが教えてくれました。

愛することを。


きれいな神様は声をあげて泣きました。


やさしい神様もつられて泣きます。


不完全ないのちたちも何がなんだかわからず涙を流しました。


きれいなきれいな泪が流れ、傷ついた世界を癒やしていきます。


不完全ないのちはこの世界にもっともふさわしいのではないか、きれいな神様もやさしい神様もそう考えました。


ですが、悲しいことに不完全ないのちはいつか死んでしまいます。

新しいいのちは古いことを忘れてしまいます。


うろこの尻尾を持つ不完全ないのちが言いました。


わたしたちはずっとお母さんたちをわすれません。


また泪が流れそうになりました。


毛のはえた耳の不完全ないのちが言いました。


古いわたしたちが新しいわたしたちに伝えていきます。


おでこに目がある不完全ないのちが言いました。


愛することと一緒にあなたたちを忘れません。


きれいな神様はもう十分なくらい幸せな気持ちになりました。


やさしい神様は言いました。


わたしたちは帰らなければなりません。そして、もうここへ来ることはないでしょう。


きれいな神様が頷きます。


かえりましょう。

そして子供たちを見守りましょう。


やさしい神様は不完全ないのちに言います。


もしあなたたちが忘れ、またあらそいが行われ世界が傷ついたのなら。


そして真剣な目で言います。


わたしたちは罰を与えましょう。


不完全ないのちは力強く頷きました。


そして不完全ないのちたちは決して忘れないようにきれいな神様とやさしい神様の名前を聞きました。



きれいな神様の名前を


リィルアリア


やさしい神様の名前を


ペルセリューン



こうして2つの偉大な神様の名前とその教えを不完全ないのちたちは語り継げていきました。


これがのちに


リィルアリア教



ペルセリューン教


をつくりました。



これが5人の神様と小さないのちのお話。


おしまい。

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[一言] 前の物から読んでいました。改訂版になってさらに読みやすくなってます。 これからも頑張って下さい!
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