秋・雨の合間の浜辺にて
朝から気まぐれに土砂降りを繰り返し、ようやく晴れ間が覗いたのは15時を過ぎた頃だった。
盛夏にはたくさんの人で賑わっていたビーチも、浜辺から少し離れたバーベキュー用の東屋で、飲み食いをしている人が疎らにいるだけであった。
ビーチの横の整えられた歩道から、堤防に沿って作られた遊歩道をぐるりと歩く。遠くのビルの合間に見えるクレーンには、生えてきたばかりの虹の根元が被さって、クレーンは虹色の霧から突き出ているように見えた。
向かい風に目を細めると、沖の手前では力強い白波が鱗のように綺麗に弧を描いている。それらを眺めながらそぞろと歩いている内に一周してしまい、ビーチと道を隔てた遊泳禁止の奥まった浜辺に辿り着いたので、何か面白いものがないかと中腰に屈みながら目を凝らした。
最初に目についたのは、どこまでも軽い白色の半分透けたような小さな蟹で、蟹は風に飛ばされているかのように砂浜を過ぎていった。そうして更に歩くと、打ち上げられた細かな木々と一緒に、白と黒の模様のウミヘビらしき死骸があった。物珍しさはあれど直視は出来ず、抜け殻のようなぼんやりとした白黒を遠目に見ることしか出来なかった。
欠けていない貝殻を探し、また下を向いて進む。人の腕ぐらいの流木のそばで、時折カサカサと動く貝殻がある。流木をどかしてみると、ヤドカリが集まって隠れている。10匹ほどはいるだろうか。貝殻の大きさもそれぞれ違って、小石ほどのものもあれば、砂粒より少し大きいぐらいのものもおり、皆己の身体に合ったサイズの家を背負い、気配を窺うようにちょこまかと出たり入ったりしながら歩き回っていた。
貝殻は結局、細かく砕かれたものばかりであった。
茸の笠を裏返して束ねたようなサンゴの死骸があった。桃色のシーグラスと、海水に長いこと浸かっていたであろう焦げ茶色の楕円の種子もあった。砂浜は、墓場であり、住まいであり、揺りかごであった。
浜辺にきらきらと光る波が寄せて来たと思ったら浅瀬に迷い込んだ小魚の群れが一斉に跳ねて、光となっていた。
遠くに見えた根元だけの虹が、いつの間にかのびて街の向こう側に橋を架けていた。
沖の方では雲から濃く青い柱が立ち、雨が降っているのがはっきりと分かった。私はサンゴの死骸を放って、雨がこちらにやってくる前に来た道を戻って行った。




