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適当な長話  作者: 二本指
3/3

そのさん

「映画とは唯意義なものですね、佐久間さん」

映画館から出ているのに未だ食べきれていないポップコーンの箱を抱いているのは創作志望の子だ。

「誰かを感動させるにはやはり勉強や研究が大切ですよね」

彼の各部の教授である甘地はそうだなと軽くあしらうように答える。

この二人がデート同然の付き合いを今しているのは数日前にさかのぼる。

「小室君は物語を組み立てる能力にはたけてるんだけど、なんというか盛り上がりに欠けるなあ…」

と言っているのは物語に置いてのグラデーションのつけ方の具合とかそういう話ではなく単にキャラクターが物語のために動く義骸と化しているそうに見えるからとそういった意味を込めての無口すぎるアドバイスだったのが災いし、教え子の勘違いを引き起こしてしまった。つまり小室はアドバイスの内容を自身が今までの人生を通して痛感してきた空気の読めなさがそうさせているのだと思ってしまったのだった。

「つまり、たくさん物語を見ればいいんですね」

実際この解決策自体彼の考えている彼自身の精神的な欠陥の得策になるというわけではないのだがぎこちなくだが歯車のあってしまった台詞だったため甘地は「まあな」と受け答える。

「では、一緒に行きましょう。」甘地自身学生らの程々なプロットを読むのに退屈していたところだったから誘いに乗っかって今に至っている。

ところでちょっと前から巻き戻そう。

「誰かを感動させるにはやはり勉強や研究が大切ですよね」

「そうだな、収穫はあったのか?」

「はい、母親が主人公の友達であると知っていながらもクマを撃ち殺すシーンは皆怖がってたので、人は人の大切なものを壊すと怖がると知りました」

「確かに、映画館でしかできない経験だな」

「ホラーフィルムを作るときのアイデアが一つ増えました、よかったです」

甘地は、小宮の抱いているたらふく残っているポップコーンを見てほしくなり、「頂戴」と頼んだ。

「あ、ここで僕がポップコーンを大切なものとして認識している場合は怖がればいいわけなんですね。」

「いや、頂戴よ」

教授がごねるわけもわからないまま小室はさらに自身のポップコーンへのホールドを強めて離さないようにした。

教授は心底けだるげな表情でやっぱこいつ変だわと心の中でぼやいたのだった。

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