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まずは毎回恒例となっている、つまり日によっては朝・昼・放課後の三度繰り返すこととなる説明をする。
三六五日とは言わないけれど、それくらいの回数はとうに超えた。
カンニングペーパーでもあるかのように、言うべき言葉がスラスラと口から滑り出ていく。
「まず、僕はプロではありません。
素人です。
貴女方が僕を呼び出したのは、僕の通称や噂を聞いたからでしょう。
僕は誇りを持ってフィッティングをしていますが、どうしても現場のプロと比べたら、劣る部分があると思います。
それをご了承ください。
また、服の上からでもある程度採寸は出来ますが、より正確にするため、直接肌を見る必要があります。
その際は勿論、僕の手が皆様の身体に触れることになります。
嫁入り前の、大事な身体です。
途中で不快感を覚えたら中断することも可能ですが、想像するだけで無理だ、と思われるなら、今の時点で辞退してください。
下着売り場にいるインティメントアドバイザーの方々はプロですし、異性である僕よりも、余程悩み相談を気軽に出来るでしょう。
それでも尚、光栄にも僕をご所望いただき、注意事項を了承頂ける方のみ、このシールを受け取って下さい。
フィッティングは無理だけれど、急を要するということであれば、口頭でのカウンセリングのみも承ります」
言って道具袋の中から、二枚ワンセットになっているシールを五組、差し出す。
やはり気になっていたモデルっぽい後輩は、受け取らない。
それ以外の女性は、全員受け取った。
つまり昼の仕事は四名か。
昼飯が食べられるか、微妙な人数だ。
手渡したのは肌色の、ハートや星型のシールだ。
受け取った女性達の頭上に、疑問符が浮かんでいるのが見えるようだ。
何に使うものなのか、分かっていないな、これは。
日本ではあまり普及しなかったもんな。
昨今では、コスプレイヤーなんかが使っているようだけど。
「ニップレスシールと言うものです。
僕はカーテンの向こうで待っていますので、ジャケットとワイシャツを脱いで、コレを貼って準備ができたら、声を掛けて下さい。
現在つけている下着は、身につけたままで結構です」
「えっと……センパイ、これ、どこに貼るんですか?」
妄想フィルターを通して見たら、四角いアレに見えなくもないソレを、指先でいじりながらモジモジと上目遣いで、そんなことを聞いてくるんじゃありません!
……こんなキワドイ状況ですら、息子氏に反応はない。
いや、今この瞬間反応されても、勿論困るんだけどさ。
それだけでセクハラだと、訴えられる案件になりかねない。
え、ニップルって単語じゃ分かんないの?
そんな直接的な言葉、言って怒らない??
訴えない???
大丈夫?????
「肌に直接貼るタイプのシールで……
えぇっと……乳首を、隠すための物、です。
ご使用ください」
言うと予想通り、後輩ちゃんは火が吹きそうなほど顔を赤くした。
他の人たちも釣られたのか、同様に顔を赤らめた。
見ているコッチが恥ずかしいわ!
頼む、言われる前に察してくれ。
「でわ。
準備が出来たら、お声かけください」
言ってそそくさと逃げるようにカーテンを閉め、こちらも準備に取り掛かる。
保健室の外に面している厚手のカーテンを引き、相棒のメジャーを肩から下げる。
ガンちゃんが用意してくれた全身の姿見をガラガラ引きずり、彼女たちが居る奥のベッドの手前まで運んだ。
布の擦れる音や、この布一枚の向こうに、あられもない姿の、タイプの全く異なる魅力的な女性たちがいると考えると、妄想も捗ると言うものなのだが……
……僕の想像力が足りないのだろうか。
妄想だけでは、興奮のこの字もしないな。
よき、とは思うのだが。
中学時代はまだ多少は反応したと言うのに。
やはり、病院でED検査をするべきなのだろうか?
この若さでバイアグラの世話にはなりたくないし、何より診断が降りてしまったら、役たたずの烙印を押されることとなる。
死刑宣告を受けたも同然だ。
自信を喪失するので却下だ。
……あ。
「準備の途中で申し訳ありません!
聞き忘れていたことが一つありました。
みなさん、月の物の最中や前ではありませんか!?」
大きな声で尋ねた途端に、カーテンの向こうからはざわめく声が。
僕の後頭部からはスパンッ! と小気味の好い音が響く。
聞き忘れていたことがあって慌ててしまったがために、配慮が欠けていた。
それは事実だ。
だけどさぁ……
ガンちゃんめ。
乙女レーダーでアウトになる発言があったら遠慮なく言って欲しい、とは言っていたけどさ。
ハリセンを用意しなくても良くない?
一応、生理だとか月経って直接的な言葉は避けたのに。
いや、普段使わないから、言葉に出なかっただけだけど。
「えぇっと……
すみません、浅慮な発言をして。
ただ、月の物の前や最中は、女性ホルモンのバランスが崩れるために、胸が張って二カップとか変わる人もいるんです。
むくみやすくなるから、アンダーサイズも変わりますし。
もしそうなら、身体を冷やすのも良くないですし、何より乳房が張っているので他人に触られたら、痛いでしょう。
日を改めて、ご依頼ください」
そう言うと少しの間を置いて、再び布の擦れる音がし始めた。
位置的に、後輩ちゃんの一人がそうだったようだ。
体つきに対して、胸のふくらみが結構あったもんな。
せっかく覚悟をさせて脱いで貰うまでしたのに、申し訳ないことをした。
朝の呼び出しが無かったからと、気が抜けてしまっていたようだ。
なんたる失態。
制服の胸ポケットから小さな紙を一枚取り出し、そこに詫びの言葉と、プラスもう一文を書いておく。
お詫びになるかは分からないけれど、後で渡そう。




