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咲良のおっぱいが僕に当たってくれているおかげで、彼女が僕にピッタリと身体を寄せようとしない限り、下半身には空間ができている。
流石にこれ以上は、デカくはならないだろう。
暴れん棒が彼女に当たる心配はしなくていい。
しかし、牧師である父親が戻ってくる前には、鎮めなければいけないよな。
愛娘が暴漢に襲われていると、勘違いするやもしれない。
こんな状態では、弁解も出来ない。
何を言っても、ただの言い訳にしか聞こえないだろう。
僕自身も、同じ状況なら「何寝言ほざいていやがるんだ」と、出会い頭に一発は殴る自信がある。
ちょっと心に余裕が出来てきて、思い至ってしまった。
……僕はどうやって、家に帰れば良いのだろうか。
「志栖佳……君は、どこまで覚えていますか?」
君付け呼びも、オツですな。
しかもちょっと呼び名で距離を縮めたかと思ったら、敬語口調が戻ってしまうとか!
何!?
君は僕を、萌え殺す気か!!?
黒髪清純派の見た目で敬語キャラ。
しかも巨乳。
滅茶苦茶おいしいです。
ご馳走様です。
「全部思い出せたかって聞かれたら、自信はないんだけどね。
咲良の調子がいい時に近くの公園で遊んだこととか、結婚の約束をしたこととか。
二人で考えたデザインのドレスを作ろうなんて言ったことなんかは、おぼろげながら思い出せたよ」
下着から服までの総合プロデュースをしたいっていう将来の夢も、結局、彼女との約束があったからこその夢だったんだろうな。
描き溜めたデザインの数々も、多分幼少期、彼女と埋めたらくがき帳をめくると、似たようなものが出てくることだろう。
思い出せた物のいくつかは、完全に彼女と考えたデザインが元になっている。
今はそのらくがき帳は確か、父さんが管理してるんだよな。
いつだったか巻き込まれた事件の、裁判の資料に貸してくれって言われて、そのまま返して貰ってない。
咲良とのことが思い出せた今、何が何でも返して貰わなければ。
咲良はふふふと小さく笑い、背中までは腕を回すこもができないためか、僕の脇腹の部分の服を、キュッと掴んで身を寄せた。
可愛いと思う反面、少々身体が強ばる。
……セーフ!
その程度なら、息子は当たらない!!
「いっぱい、約束した事あるんですから。
少しずつ、叶えてくださいね?」
言うと抱き寄せたことで僕の腕の中に収まっていた彼女は、その頭部をスリスリと居心地良さそうに頬ずりをして、僕の胸へと寄せる。
彼女は上目遣いでニッコリと昔と変わらない、いや、それ以上に魅力的な顏で微笑んだ。
キスをしようとした時とは、別の意味で心臓が痛い。
心を撃ち抜かれたかのようだ。
顔が……熱い。
今僕の顔は、先ほどの咲良よりも赤く染まっていることだろう。
締まらない。
恋愛経験値が皆無だと、情けないところばかり見せることになってしまう。
汚名返上。
名誉挽回をしなくては。
今のままでは、ただ慌てふためいているのを誤魔化している変態でしかない。
それじゃあ、と一言前置いて、日頃の成果を見せつける。
少しは男っぽい、頼れるところもアピールしないとだしね!
ふわりと彼女を横抱きに持ち上げる。
いわゆる、お姫様抱っこだ。
昔叶えようとしたけど腕力が足らずにできなくて、いつか、と約束をした事柄のひとつだ。
これならおっぱいが身体に当たることもないし、息子が彼女に見られる心配もない。
そんな謀略があるのは、もちろん内緒だ。
そう、思ったのだが……
咲良のおっぱいと、彼女自身の乙女思考を、甘く見積もり過ぎていた。
そうだよな。
小さい頃はずっとプリンセス・ストーリーばかり読んでいたのだ。
そしていつかお姫様になるのが夢なのだと、言い続けていたのだ。
僕の根幹がそこで形成されたのと同様、彼女だってその頃に、彼女たる要素の基盤を作り上げていたに違いない。
すなわち、現状を説明すると、『想い続けていた結婚を約束した男の子と久しぶりに再会したら、格好良く成長していて、昔とは違う男らしさも持っていて、自分をお姫様抱っこしてくれている』ということである。
その少女漫画的ロマンティックな演出に、‘’相手はヘタレ童貞ED‘’なんて事実は映らない。
‘’勃起したナニを隠すため‘’とか。
‘’おっぱい最高! イェーっ!!‘’とか。
そう言う不都合な事実があることを、彼女は知らないのだ!
感極まった咲良は、再び涙を流しながら抱きついてきた。
先程とは違い、嬉し泣きだ。
それ自体は、僕も嬉しい。
これから彼女と一緒に歩んでいくことになるであろう将来のことを考えると、とても喜ばしいと思う。
しかし。
しかし、だ。
妹たちにする感覚で持ち上げてしまったために、上半身を支える腕を、彼女の肩ではなく、ウエストの位置に持って行ってしまったのだ。
そのせいで抱き上げた時、僕は彼女を見上げる形になっていた。
……その結果。
抱きついてきた彼女のおっぱいにより、僕は見事に呼吸器官を塞がれ、危うく窒息しかけてしまった。
苦しさにもがき、気道確保のため、顔を上へとズラす。
おっぱいとおっぱいの、間からだ。
平たく言うと、今僕は、咲良の谷間から顔を覗かせている状態というわけだ。
窒息死寸前という危うい状況と引き換えに、ぱふぱふと言う楽園のような心地よさを味わうこととなった。
これ即ち、至福のひと時なり。
締まりのない、だらしのない顔になりそうだ。
いかん、気を引き締めねば。
だが、その直後。
彼女から贈られたファーストキスにより、僕は見事、撃沈した。
パイ射の如くおっぱいに鼻血を撒き散らし、のぼせて目を回し、気絶することとなったのだった。
情けない醜態を晒したと言うのに、咲良は僕に幻滅するでも、呆れるでもなく、衣服を汚され怒ることすらせずに、甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
昔と変わらず、優しい良い子である。
しかも、チャックのことには触れず、血で汚れたことを理由に、お兄さんの服まで貸してくれた。
良い子すぎて泣けてくる。
はぁ……
好きな女の子の、しかも理想のおっぱいが、そこにあるのに。
こんな状態では、揉むたびに輸血が必要になってしまう。
鼻血だけで済めば良いが、毎度高揚しすぎて気絶していては、何もできない。
将来の夢も、彼女との約束ももちろん大事だし、重要だ。
しかし、何より!
彼女のおっぱいをいつでも揉みしだけるように、己を鍛えなければ!!
揉みたいおっぱいがソコにあるのに、見るだけのオアズケ状態では、僕の精神がもたない!!!
心の中で握りこぶしを作り、なんともまぁ欲望まみれの誓いを、十字架と心配そうな顔をしている女神像に立てたのだった。
鼻血は無事に止まり、借りた服に着替えも済ませた。
そのあと。
改めて互いの気持ちを、言葉で確認し合った。
これからよろしくお願いしますと言い合い、結婚を前提としたお付き合いを始めることが決まり、無事僕は、人生初の彼女ができたのだった。
揉みたいおっpがソコにあるのに!
プロトタイプ、これにて完結です。
ご覧頂き有難うございました!
コレを元にした作品も執筆予定です。
更新した際には、ソチラも是非宜しくお願い致します。




