39
心の中で咲良の可愛さを表現する言葉を絶叫しまくっていたら、唐突に、冷水をかけられた気分に落とされる。
「瀬能さんの、呼びやすいように呼んで頂ければ……」
……ん?
随分と他人行儀な呼び方をされた気がするのだが、気のせいだろうか??
まさかよもや、『約束は果たして貰うし、その誓いとしてキスは要求するけど、恋人になるかどうかはまた別問題です』なんて、複雑なことを言いだしたりするのか!?
恋愛初心者には、その心理が全く理解できないのですが!!?
そういえば、後継者に嫁が来なくて大変だと、同級生の寺の息子(長男)が言っていた。
もしかして、教会もそうだというのだろうか。
後継者として婿は要るが、恋人は別ですとか、そういうことになったりするの!!?
「咲良は、その……随分と、かしこまった呼び方をするんだ、ね?」
他人行儀とか自分の口からまろびでたら、嫌でも現実と向き合わなきゃいけなくなりそうだ。
肯定された時のダメージが少ないように、遠回しな言い方をさせて貰った。
だってさっきまで、運命的な再会を果たした初恋の人とドッキドキの初キッス!
か〜ら〜の〜初カノもゲット!?
……って流れだったはずなのに!!
テンションも、最高潮に上がっていたはずだろ!!!??
なのにここに来て、苗字にさん付けして呼ばれたんだぞ。
自分が浮かれた勘違いをしていたのではないかと、急速に冷静になって、さすがの息子も落ち込んだわ。
今ならパンツの中に、納められそう。
僕だけ有頂天に舞い上がり、浮かれポンチになっていたということですよね。
キモくてスミマセン。
心がベキッ! と盛大に折れる音が、聞こえた気がする。
「えっと……ですね。
瀬能さん、随分格好良くなってたから……その……
ちょっと、距離を置かないと、冷静で居られないっていうか。
学校での自分の態度とか振り返ったら、馴れ馴れしくしたら、今更……迷惑なんじゃないかって、思って……」
ちがったぁぁぁぁぁあっっッ!!!!!
良がっだァァァぁぁあッッッっっ!!!!!
大丈夫。
咲良も僕を好いている。
間違いない。
……違いない、よな?
だよね??
そうだよ。
幼い頃約束をしたって言ったって、ソレを互いに覚えていたからって、今も有効か自信がないのは、きっと、咲良も同じなんだ。
その確認の意味も込めて、キスを要求したのだろうに、僕の暴れん棒のせいで、水を差されてしまった。
そのせいで、未だに距離感を掴めずにいるのだろう。
僕自身は、何が起きて中断するに至ったのかを分かっている。
しかし彼女からしてみれば、変な音に驚いて自分が目を開けてしまったから、事が中断されてしまった。
そういう状況なのだ。
不安になっても、おかしくはない。
自分のおっぱいに視界が遮られて、僕の下半身がどんな状態かなんて、分かるはずがないのだし。
いや、把握されてしまったらヤバいから、このまま一生知らずにいて欲しいけれど。
それこそ学校で‘’おっぱい王子‘’と呼ばれていることを、彼女は知っている。
その上廊下でぶつかった時に、勃ちあがった息子を眼前に見せつけられている。
今この状況で、ズボンを破壊するレベルでまた勃起させていることが彼女に知られてしまえば、流石に幻滅されてしまう。
『どんだけ発情しやすいんだ、この無節操童貞』……と。
理想のおっぱいを持つ女神に、蔑まれた目で見下されてしまったら、僕は今度こそ再起不能に陥るだろう。
いや、この際だ。
咲良相手ならば、Mの扉を開けば問題ないか?
いやいや。
王子のイメージから更に遠ざかるし、ダメだろう。
その場合は咲良にSになって貰わなければいけなくなるし。
……ボンテージに身を包む咲良、か……
溢れかねないおっぱいが非常に好いですね!
ハッ!
あかん。
妄想が暴走している。
今の妄想で再び大きくなった息子を悟られないためにも、これ以上距離を置かれては困るな。
「迷惑なんかじゃ、ないよ」
言って、抱き寄せて……失敗した。
彼女に下半身を見られないように、距離をこれ以上置かれないようにと思ってした行動だったのだが……
うん、考えれば、分かったはずだよね。
おっぱいが!
ぷわっと!!
むにゅっと!!!
腹部に当たって、そりゃあもう、超! 絶! 気持ちイイ!!!
あぁ〜……、ヤりたい。
……自然と。
そういう欲求が、自分の内から湧いて出たことに驚いた。
ED云々の理由があったとは言え、本当に今まで、性的欲求を感じたことがなかったから。
おっぱいは確かに好きだが、造形美としての意味合いが強い。
持ち上げて重量感と、自分の肉体では絶対に感じることのない柔らかさを感じる楽しみ方も、好いとは思う。
だが諸々の行為が、イコール性的欲求、およびそれの発散とはならなかった。
本気で、自慰すらしたことがないんだ。
男として何か欠落しているんじゃないかと、ガチで悩んだものだが……
なんてことはない。
咲良じゃなきゃ、ダメだった。
それだけの話なのだ。
ある意味、咲良の言う‘’呪い‘’という言葉は、本当のことだったのかもしれないな。
僕が咲良のことを思い出せなければ、彼女は僕に心開いてはくれなかったろうし、こうして触れる機会もなかっただろう。
そうなると、咲良じゃなければいけない僕は、その他の女性では反応することもままならず、一生EDのまま、一生童貞のままこの生を終える所だったろうから。
だからって、こんなあからさまに反応をしなくても良いと思うが。
肉体目当てなのかと、勘違いされてはいけないじゃないか。




