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おっぱいのことを考えずにはいられないのは、僕のサガと言うものだ。
であるがしかし、今は真面目に話をしなければならないだろう。
多分。
いやいや。
多分ではなく、絶対に。
歯止めが効かなくなったら、本当、無遠慮に妄想していた、アレやコレやをしてしまうかもしれない。
押し倒してR-十五指定じゃ到底足りない、未成年者お断りな展開になりかねない。
だって、あのおっぱいだし。
大きければ良いと言うわけでは、決してない。
だが彼女が所有しているあのおっぱいは、筋肉も程よく付いているため、きちんと根元から支えられていて、重力に逆らっている部分がキチンとある。
上向きで、豊胸の様にとってつけたようなゴム鞠のようなものではなく、形も非常に整っているように思える。
全身のバランスを見ても、確かに大きい。
ただ立っている、それだけで自己主張をする程にとてつもなく大きい。
だが、悪目立ちしているわけではない。
絶妙な肉の付き方をしているため、下品な印象を微塵も受けない。
まさしく、芸術品だ。
この芸術品を乱暴に汚さないためにも、第三者がいた方が良い気がするんだけど。
しかし無慈悲にも、彼女の父親である牧師は外へと消えて行き、彼女は扉の内側へと招き入れられた。
娘が可愛くないのか、牧師様!?
男はオオカミっていうのは、世代を超えた共通認識ではなかったのか!!?
ど、どうすれば……
少しずつ近づいてくる彼女から、つい、後ずさりしたくなる。
だが僕は椅子に座っている状態だし、露骨に立ち上がって逃げるわけにもいかない。
また傷付けてしまいかねないからだ。
腹を、くくるしかないのか……!?
どうせなら、そのおっぱいにくくられたいです!!
……ヤバイ。
思考がどうしても、おっぱいに囚われる。
こんなんで、まともな話が出来るのだろうか。
ゆっくりと歩みを進めてこちらへ近づいてきた彼女は、僕の座る椅子を通り越し、祭壇の前に跪いて手を組んで、祈りを捧げた。
十字を切らないんだな~とかぼんやり思ったが、先程牧師が「キリスト教の大抵のイメージはカトリック」と言っていた。
僕が想像した動作もきっと、カトリックのものなのだろうな。
そう自己完結させた。
随分長くその姿勢を崩さないように思えたが、実際は三~五分くらいのことだったと思う。
カップ麺ができる程度の、インスタントな時間だ。
十二年の歳月に比べれば、あっという間のことである。
口を開けない雰囲気に。
口を開かない彼女に。
多少悶々とする時間を過ごすことになったが、大人しく待つことにした。
精神的にも肉体的にも、クールダウンさせなきゃだし。
今は背を向けられているため拝むことが叶わないが、マジであのおっぱいは凶悪だ。
この限られた時間の間に、慣れなければならない。
無条件の全面降伏すら辞さない。
そう思わせるだけの攻撃力を持っているからだ。
学校で僕の息子は、あのおっぱいの正体に気付いて、反応をしてしまったということなのだろう。
確かに廊下でぶつかった時に、間違いなくあのおっぱいが当たったのだから。
さすがおっぱい王子の息子だ。
やるねぇ。
……だがあの時は、あくまで潰されたものだったしなぁ。
いや、遠目で見ただけでも分かる、あの重量感とインパクトである。
見ただけで半分起きたのだ。
潰された状態だとしても、厚い布越しだとしても、当たれば反応してしまうのが、男の本能と言うものなのだろう。
初めてのことだし、知らんけど。
彼女が祈りを捧げる、ある種の荘厳さを感じる雰囲気のおかげで、瞬時に落ち着きを取り戻してくれたが、あのままの勢いで完全起床されていたらと思うと、恐ろしい。
話し合いをする前に「ちょっと一発ヌいてくるからトイレ貸して!」なんて言えるはずもない。
どんな最低男だ、僕は。
しかもED気味のせいで、自慰なんて生まれてこのかた全然したことがない。
借りたよその様の家のトイレで、あぁでもない、こぅでもないなんて、息子と語らいなんてしたくないぞ。
どんな言葉をかければ良いだろう。
どんな事を言えば良いのだろう。
彼女が祈りを捧げている間、考える。
いや、息子にではなく。
彼女に対してね。
思い出せたことは、割合としては多いと思う。
あの子と出会ってから別れるまで、約一年半。
その間で、あの子と過ごせた時間は、その半分にも満たない。
幼稚園児時代の思い出の中で、あの子がいる風景なんて、そう沢山はなかった。
印象に残りやすいイベント事にあの子が参加することは、ほぼなかった。
運動会も遠足も、身体を動かす行事に、彼女の姿はない。
忘れても仕方ない。
思い出したと、胸を張って言えるほどの量もない。
……それでも、今の僕を形成するに足る、印象深く、濃密な時間だったと断言できる。
裏表があったり、打算的な考えを持つようになっているが、女性を大切にしたいと思うその考えや、女性を美しくしたいと思う願望を僕の中に根付かせてくれたのは、あの子の身体の弱さと、大きくなったらお姫様になりたいという夢に、他ならない。
……あぁ、そうだった。
先生の下着をひんむいた時も、僕をたしなめてくれたのは、あの子だったな。
『女の子に許しも得ずに触るのも、ましてや下着を脱がせるなんて、そんな不道徳なことは、だれかれ構わずしちゃいけません!』って、お説教をされたんだっけ。
あの年齢の割りに大人びた言葉遣いは、この教会で培われたものだったのだろう。
五歳やそこらの子供の語彙力ではない。
その言葉と、ここで交わした最大限に重要な約束があったから、僕は暴走せずに、今日、この日まで過ごして来れた。
記憶としては忘れていたとしても、その契りが、まるでお守りのように、僕の歯止めになってくれていたんだな。




