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揉みたいおっPがソコにあるのに!  作者: 可燃物
プロトタイプ

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30

 四十代後半か、もう五十代に乗ってるか。

 招き入れてくれた男性は、記憶の中にいる神父様とは、随分出で立ちが違う。


 僕の記憶の中の神父様は、こんなに頭頂部は薄くなかったし、もっと細身だった。

 はっきり言ってこんなハゲデブのオッサンじゃない。


 十年の月日とはこんなにも残酷なのか!?



 まぁ僕も、天使と称されていたあの頃とは、だいぶ違う。


 ……なにせ、おっぱい王子だし。

 それを抜きにしても、髪色は濃くなり、背も随分と伸び、外見はかけ離れている。



 全くの別人という可能性もあるけどな。


 教会って責任者が変わったりすんのかな?

 もし当時のことを知らないのなら、本当に茶をしばいて終わるだけになる。


 それなら、家族を心配させたらいけない。

 早く帰りたいのだけれど。



「あの……神父さ「牧師です」


 神父と牧師の差はイマイチよくわからないけれど、食い気味に否定する程度には、間違われたくないということなのだろう。


 顔面に張り付いている笑顔も、心なしか怒りを含んでいるように見える。

 きっとマンガなら、十字の怒りマークが頬や頭に付いている所だろう。



「牧師は教え、導くもの。

 神父のような聖職者とは異なります。

 私は、先生と呼ばれることが多いですね」


 聞いてもやっぱりよくわからないけれど、牧師と神父は全然違う役職で、この人は牧師だから間違えんなよってことね。



 聖書の内容を教える人だから、教育者的な立場にあるのかな。

 だから先生って呼ばれているとか。


 もしくは、裏の幼稚園の関係者でもあるとか。

 幼稚園の教諭も、牧師のような恰好をして、みんなで祈りを捧げる時間があったし。



 ん?

 そういえば……記憶の中の”神父様”が、卒園式の時に、賞状を渡してくれた覚えがあるな。


 そういうのって、通常は園長先生が行うものなんじゃないのだろうか。


 園長先生と教会の責任者が同じってことは、あり得るのか?

 宗教やっている人の兼業って、良いのだろうか??



 招き入れられた教会の中は、記憶の中と同じで、随分簡素だ。

 よく教会と聞いてイメージするような、マリアの像も、キリストが磔られている十字架もない。



 いや、十字架自体はある。

 とてもシンプルな、ばってんのやつが。


 照明は年代を感じさせるもので……悪く言うと、随分古ぼけている。

 手入れはしっかりされているからか、ボロいとは思わないが。



 てっきり、懺悔室と言うものに入れられるのかと思ったのだが、腰を下ろすように指定されたのは、綺麗に並べられた長椅子の一つだ。


「キリスト教と聞いて大衆がイメージされるものは、カトリックが殆どですからねぇ。

 ここはプロテスタントの教会です。

 懺悔室もなければ、聖母像も、絢爛豪華な十字架や装飾もありません。


 ……父なる神は、常に私たちと共におわせられます。

 なので罪の告白などは、心の中で行えば神は聞き届けて下さいます。

 特別、他者に懺悔をする必要はありません」


 カトリックやらプロテスタントやら、そういえば歴史で習ったっけか?

 宗教革命とか、宗教戦争とか。


 戦争を起こすくらいだもんな。

 同一視されたら、そりゃ怒るか。


 同じ神様をあがめている宗教でも、随分と違うもんなんだな。



 テレビで見たことのあるビッグ・ベンやサン・ピエトロ大聖堂なんかを思い浮かべながら、眼前に広がるしょぼい内装を見上げる。


 仏教でも浄土宗とか真言宗とか色々派閥もあるし、質素な寺もあれば豪華な所もある。

 感覚的にはそんな感じか?



 宗教系の幼稚園に通ってはいたが洗礼? だっけ?? を受けてクリスチャン・ネームを貰うということもしていない。


 家に神棚も仏壇もない身としては、いまいちピンとこない感覚だ。



「……と言う建前こそありますが、人間は誰かに口で紡いだ文句を聞いて貰いたいと言う欲求が、多かれ少なかれあります。

 話したいことがあればお聞きしますし、対面してでは憚られるような内容でしたら、懺悔室もどきならありますよ」


 いや、もどきって。



 この人、さっきから神父の持つイメージらしからぬ発言ばかりするな。


 神父じゃなく牧師、か。

 間違えたら、チクリと刺すようなお小言を言われそうだ。



 教会の奥の方を指さされるが、そんな長居をするつもりはない。

 それにこの人が、あの牧師だったとして、僕のことやあの子のことを覚えているとは限らない。



 十年以上前、裏にある幼稚園に、たった二、三年通っただけの子供を覚えている人なんて、そうそういないだろう。

 例え幼稚園の関係者だったとしても、だ。


 この辺は独身世帯が少ない。

 そのため毎年、あの幼稚園では何十人と卒園して行っているだろう。


 その全てを覚えていられる人なんて、そうそういない。



 僕も、当時()()()以外に仲良くしていた人ですら、名前や顔を思い出すことは困難だ。


 特に、()()()なんて登園が出来ないことも多かったし……途中で、いなくなっている。



 有益な話を聞くことが叶わないのなら、早々に帰るつもりでいる。

 誰か他にいる訳でもないし、ここで充分だ。



「いえ、こちらで大丈夫です」


 言いながら、勧められた席に座った。



 牧師のオッサンはにっこり微笑むと、奥へ一度引っ込み、両手に湯呑みを持って戻ってきた。

 ……まぢで茶飲み仲間が欲しかっただけだったりするのか?



 お礼を言って湯呑みを受け取ると、中身はコーヒーで、湯気を立てていた。


 教会で。

 湯呑みで。

 コーヒー。


 なかなかにシュールである。


 これで番茶だったら、違和感にめまいでも起こしそうだな。

 いや、湯呑みには合っているか。


 教会には、微塵もそぐわないけれど。

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