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だがしかし、彼女は約束を忘れても、僕のことは覚えていてくれた。
僕は自分の保身のために、彼女を忘れた。
同じ‘’約束を忘れている‘’と言う状況でも、この差は大きい。
まずは、謝罪をしなければ。
出来れば、すれ違うに至った経緯の真相解明のため、話し合いの場を設けて貰おう。
そして生きててくれたこと、再会できたことを喜び、祝いたい。
呪い云々は、もちろん気になる。
優先して良いなら、真っ先に問い詰めたい。
僕だって人並みに性欲くらいあるし、彼女が出来た時にアレしたいコレしたいと、ムフフな妄想を繰り広げることだってある。
ただEDの疑いがある以上、どうやっても妄想ですら行為に至れない。
えちえちな御本を読んでも、主人公を羨むことはあれども、自分を重ねてヌくことすら出来ない。
感覚はある。
しかし息子は起きない。
あっても少しの反応を見せるだけ。
精通してからこっち、夢精以外で射精の経験は……皆無なのだ。
……コレは、僕の年齢では、ずいぶん重症なんじゃないだろうかと、思うのだよ。
実際、なぜか保健室の冷蔵庫に冷やしてあるTEN◯Aを見つけてしまった時に、話の流れでガンちゃんにコッソリと例え話として相談したことがある。
その際に「日本の基準では性欲、勃起、性交、射精、極致感のどれかが欠ける、もしくは不十分なブツだと性機能障害と診断が降りるのよね〜 」と言われた。
ハッキリと。
つまり僕は病院に行ったら、完全に役立たずの烙印を押されると言う現実を突きつけられている。
性欲以外、全部無いんだぜ。
つまりEDどころかもっとタチの悪い、SDの診断が下されることが確定である、と。
現実って……非情だ。
「メスになれば良いんじゃ無いかしら!? 後ろ開発してあげるわよ!!」と意気揚々と手をワキワキと、絶妙な動きをされた時には、例え話だと誤魔化すことすら忘れて、半ベソをかきながら断った。
だって僕は……女の子が好きなんだ!
柔らかいおっぱいが、大好きなんだ!!
あんな大胸筋が盛り上がってる、柔らかくも筋張ってる雄っぱいなんて、愛せない!!!
流石に学校では、こんな会話はしてないぞ。
宅飲み現場の酒が入ってる席で、言われただけだからな。
あれ?
そう言えばあの時は恐怖で一杯一杯だっから気づかなかったが、ガンちゃんってあの口調なのにタチなのか??
いやまぁ、女性で攻めでドSの人だっているんだし、厳ついいかにもなオッサンが受けと言う場合もあるそうだし、オネェ口調は関係ないか。
全てが呪いのせいだと言うのなら、早く解呪して貰い、この苦悩から解放されたいと切望する。
男としての自信をこの歳から感じれないなんて、結構辛いものがあるのだ。
だが、無意識ながらもあの子のために培ってきた‘’王子のような僕‘’を、よりにもよって彼女に対して崩すわけにいかない。
順序を間違えたり、感情を暴走させないよう、気を付けなくては。
ついでにEDが一生モノにならないよう、息子も暴走させてはいけない。
触ったらダメなんだっけ?
条件がよく分からない。
暴走してはいけないと思えども、感覚がわからないし、貞操帯でも買った方が良いだろうか?
いくら下着分類になるとはいえ、流石に親に作ってくれというのは気が引ける。
不衛生だし、出来ることなら身に付けたくもない。
まずは彼女もそれを望んでいるようだし、彼女の言う‘’盟約‘’を果たそう。
約束を守れない嘘つきは、王子としてふさわしくない。
格好悪いしな。
それが何なのかは未だに詳細思い出せないでいるが、話し合い、折り合いをつけて貰い、その約束を果たせるなら果たし、どうしても出来ないなら、代替案で勘弁して貰おう。
一刻も早く、この呪いを解いて貰いたいし。
……いかん、本音が出た。
せっかくあの子に好かれたいと思い、長年体面を取り繕ってきたというのに。
そしてそれが自然と行えるほどに、癖付けされたと言うのに。
なぜよりによって、彼女のこととなると、それが剥がれてしまうのだろうか。
気をつけなければな。
思い立ったが吉日だ。
いくら知り合いだとしても、流石にガンちゃんは彼女の住所を教えてくれはしないだろう。
個人情報なのだから、仕方がない。
何度か招かれた気がするし、自力で思い出すしかあるまい。
そもそも住所が変わっていたら、思い出しても意味はないが。
一軒家だった気がするが……どうなのだろう。
なにより、彼女から聞かなくても、盟約とは一体何なのかも、思い出せるのなら自力で思い出してみせたい。
明日からゴールデンウィークだし、足が遠のいていた思い出の地を散策しながら、少しずつ思い出してみよう。
連休中にインティメイドアドバイザーの資格取得のための勉強は確かにしないといけないが、息抜きも必要だ。
散歩はそういう時にとても効果的だというし、ちょうど良い。
そういうことにしておこう。
あの悲しそうな顔が、頭から離れない。
彼女に、傷つけた詫びを、少しでもしたい。
両親に聞いてみても、良いかもしれないな。
幼かった僕が把握していなかっただけで、親なら何かしら、事情を知っているかも。
あの子が突然消えた理由なんか、その最たるものだ。
「ガンちゃん、僕、帰るよ」
「そうね〜
今日はおっぱい王子のお呼び出しは無いみたいだし。
……青春していらっしゃい」
ニヤニヤした下世話な顔から一転、真面目な顔をして見送りをされた。
乙女の勘よりもオネェの勘の方が鋭いと聞くが、今のやりとりだけで、何を察したのだろう。
男の勘?
そんなものは存在しない。
男は論理的かつ現実主義が多く、非論理的な第六感というものを基本信じないし、頼りにすることもない。
そもそも男は表情を読んだり、空気を読んだりすることが不得手だ。
勘というものを働かせられない輩が多いのだよ。
僕を含め、ね。
でも……青春。
そうだな、青春だな。
初恋の子と再会を果たして、その思い出の地を巡るとか、最高にアオハルしてるな。
無事に和解できたなら、その時にはあの子とも行きたい。
忘れていたことに苦言を漏らされることもあるが、思い出話に花を咲かせながら、のんびりと散歩をするとか、良いかもしれない。
踊るは僕の実技的な面と、彼女の病気の面で難しいかもしれないが、手を繋いで。
一緒に。




