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揉みたいおっPがソコにあるのに!  作者: 可燃物
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 厳重に幾つもの鍵をかけて、心の奥深くに沈めておいた記憶の箱を引き上げたら、弾け飛んだ。

 そんな気分だ。


 断片的な記憶と感情が、グチャグチャに混ざりあって、頭が酷く混乱している。



 それでも真っ先に確認したいことが、一つある。


「咲良は……まだ、心臓悪いの?」


「なんだ、アンタ知ってたの?

 万が一のことがあるといけないからって、親御さんからヨロシク言われているだけよ。

 ……って言っても、色々大変なのは変わらないみたいだけどね」


 さも彼女のことを知っていますと装った口調で、ペラペラと台帳を見ながら、ガンちゃんにカマかけのようなものをする。


 僕の中ではまだ彼女=あの子だと確信が持てなかったのだが……


 うん、やっぱり、()()()()()なんだな。

 いくら現状の彼女と、思い出の中のあの子のイメージが違っていても、思い出してみれば、やはり、面影はある。



 彼女と同じクラスの子が怪我で保健室を利用する頻度が高い時間帯に、必ずある‘’敷香咲良(シスカ サクラ)‘’の四文字。


 手術をしても、激しい運動が出来ないのだろう。

 もしかしたら、長時間外に居続けるのも、辛いのかもしれない。


 そのために、体育の授業のたびに保健室に赴いているらしい。



 今の時期はグラウンドが騒がしいことが多い。

 僕もそうだが、晴れの日の体育は外での授業になる。


 屋内の授業なら見学もできるのだろうが、直射日光を浴びて心拍数をいたずらにあげてはいけない。

 屋外授業では、それすら出来ないような体調ということか。


 捻挫の処置をする時にまっすぐベッドへ向かったのも、保健室を利用する時の癖だっただけなのかもしれない。

 台帳に名前を記入し終えたら、ガンちゃんの邪魔にならないよう、奥のベッドに引っ込みのが常なのだろう。


 ……「もしかして誘ってる!?」とか、変なこと考えてスミマセンでした。



 身体のラインが分かりにくいのも含め、彼女の病気のことを考えれば、あれこれ頷けることは多い。



 自律神経が乱れやすく、体温調節がうまく出来ないのだろう。

 のぼせの症状が出て暑くなれば、着ているものを脱げば良いし、アイスノンとか使って外部から身体を冷ますことも可能だが、寒い時に体温を自力であげることが難しい。

 しかし年頃の女の子なわけだし、あからさまに季節外れの浮いた格好はしたくないだろう。

 こんな桜の花も散った時期にホッカイロを持ち歩いていて落としたら、変な目で見られてしまうし。


 だから、見えない所で厚着をしていた。



 表情を崩さず淡々としていたのも、心拍数を上げて、心臓に負担を掛けないためか。


 幼い頃は声を出して笑うたびに、苦しそうにしていたもんな。

 たくさん喋って、少しでも興奮すれば息が上がっていた。



 思い返せば、ずいぶん重い病気だったのだろう。


 心臓の病気なのだ。

 そりゃそうだ。



 学年が一つ違う理由も、容易に想像できる。

 手術や入院の都合、また術後経過観察のために一年留年したのだろう。


 ガンちゃんの言葉を素直に信じるのなら、今は、昔よりはマシになったのだろう。

 ……そうだと、良いのだけど。



 しかし……呪いって、なんだ?


 生きていてくれたことは大変喜ばしいが、約束を守ってくれないと一生EDって、一体どんな呪いだよ。



 ……と言うか、そもそも!

 最初に約束守ってくれなかったのは、そっちじゃん!


 初恋相手は不治の病で死にました、なんて三文小説にもならない設定を抱えて、こっちはアレから十年以上生きて来たんだぞ。


 いや、今の今まで忘れていたんだけどさ。



 手紙が出せない状況にあったのか。

 そもそも、その約束を向こうが忘れていたのか。

 ……考えておいてなんだが、そうならとても悲しい。



 何せ家が会社をしているのだ。

 住所は調べれば分かる。

 引っ越しだってしてないし。


 住所不明のために出せませんでした、と言うことはないだろう。

 手紙だけ書いて、親御さんに託すことだって出来たはずだ。



 心臓が弱い。

 だから手術が必要。

 それを遠くでする。


 ……と言うことだったけど、それらの言葉からすぐに思い起こされるのは、移植手術だ。



 バチスタだっけ?

 昔ドラマで有名になった手術があるけど、あぁいう外科手術が必要な程、酷かったのだろうか??

 バチスタ手術は、今ではあまり行われていないんだっけ???


 普段全く興味が湧かない分野だから、分からないな。



 程度の差こそあれど、難しい手術なのには違いないし、今も身体に負担はかけられないようだ。

 それらは紛うことなき事実だし、僕の感情論で彼女を責めるのは良くないな。


 場合によっては移植手術が必要だけれどドナーが見つからなくて、薬による延命治療を続けていて「まだ手術をしていないしお手紙書けませんでした」ってことも、あるのかもしれないのだし。



 ……と一瞬思ったけど、ガンちゃんの言葉から考えると、無事に手術自体は終わっているし、万が一の危険性はどうしてもつきまとうし無理もできないが、今の容態は安定している。


 そう言うことで、まず間違いないだろう。



 やはり、向こうは向こうで‘’約束‘’を忘れてしまっている、と言うことなのか。


 ……寂しいな。

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