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揉みたいおっPがソコにあるのに!  作者: 可燃物
プロトタイプ

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 そう言えば、彼女は僕の名前を認識しているが、僕自身は彼女の名前すら聞いていない。

 今更だが、やっと気付いた。



「そうですね……」


 なんだかフェアじゃない気がして、名前を尋ねようと思ったが、彼女が口を開いたので慌てて口を噤む。


 逆に彼女は僕の問いに答えるべく、口元に人差し指を持っていく。

 少し考えるそぶりを見せてから、あの愛らしい笑みを浮かべながら、その様相とは裏腹に、正反対の物騒な言葉を吐いた。


「言うなれば、呪いです」


「の、のろい!?」


 予想だにしていなかった、余りにも非現実的かつ非科学的な発言に、思わず素っ頓狂な大声が出る。



 いや、だって。

 呪いって。


 何? 流行ったアニメの影響でも受けてしまった??

 九字とか結んだり、唱えたりするのが趣味だったりするのかな???


 厨二病なんて言葉があるけれど、中学二年生に限らず、罹患すると生涯抜け出せない人も中にはいるそうだし。

 高校生になったばかりの彼女なら、まだその最中だとしても、不思議ではない……か?????



「ちょっと、瀬能く〜ん?

 アタシがいない時勝手に保健室使わないで……って、あら?」


 僕の声は、存外響いていたらしい。


 近くまで戻って来ていたのだろう。

 ガンちゃんは、足早に近づいてくる音とともに、無断利用をしていたことを咎める言葉を言いながら、保健室を覗き込んできた。



 しかし想像していたものと違う光景が、目に飛び込んできたようだ。

 目を丸くして、一定の距離を保っている僕と彼女を、交互に見比べる。


 保健室の主(ガンちゃん)不在のままフィッティングをしていて、トラブルが起きて口論をしていたか、昼に引き続きまた暴走しているとでも思ったのだろう。

 僕はちゃんと言いつけを守る、良い子ですよ。



 だがガンちゃんは僕ではなく、彼女の方を見て、一気に顔色を青くした。


 え、もしや彼女が僕に、あ〜んなことや、そ〜んなことをされたとでも、勘違いなさってます?

 流石にそれは、失礼じゃないか??



「あ、アンタ……

  発作でも起こした!?」


「いいえ、大丈夫です。

 それと瀬能先輩は、怪我をした私を介抱してくださっただけです。

 もう終わりましたので、失礼します」


 言ってガンちゃんに向かって一礼した後、僕を一瞥すらすることなく、彼女は保健室から退室していった。



 ……僕には何もないのね。


 当然か。

 彼女からしてみれば僕は、自分のことを忘れてしまっている薄情者なのだから。



 それにしても、ガンちゃんめ。


 これから質疑応答を始めますって時だったのに。

 イヤなタイミングで戻って来やがって。


 まぁ、最悪、どう言うこっちゃと、彼女の腕を掴んだり組み敷いたり、乱暴な扱いをしてでも問いただそうとする結果に陥っていたかもしれない。


 乱入者が来たおかげでそうならずに済んだのだ。

 良かったと思っておこう。



 ……女帝()から散々教育的指導を受けている僕が、そんな愚行に至るとは、到底思えないが。

 女性に無体を強いるなんて、一生モノのトラウマになりかねない。


 おっぱいを持ち、おっぱいを慈しみ、おっぱいを育ててくれる女性に対して、拝み敬いこそすれど、暴力で自分の思い通りにさせようだなんて酷いこと、するわけがない。



  ……と、いうか……発作?

 記帳し慣れているようだったし、やはり身体が弱いのだろうか??



「アンタ……あの子に何したの?」


「何もしていませんよ。

 手首を捻ったらしく、手当に来たのですが……

 どうやら、法螺だったようです」


 ガンちゃんはジト目で見てくるが、完全に誤解だ。

 全く意識をせずに、セクハラに該当しかねないことは起きたけれど、そこに関して彼女は全く気にしていないようだった。

 ならば僕は何もしていないと、胸を張って言える。


 結局、彼女の手首に巻かれる予定だった湿布は、未だに僕の手の中にある。

 フィルムを剥がしてしまっているし、使わないわけにいかないが、どうしたものか。


 そんな瑣末なことはどうでも良くて。

 いや、勿体無いしどうでも良いってことはないのだが、それよりも優先すべきことがある。



「ガンちゃん、彼女、何て名前?」


「あら、珍しい。

 女の子はスリーサイズ以外、興味ないんじゃないの?」


 失敬な。

 確かにスリーサイズの把握と下着のフィット感以外、基本的には女性の情報を率先して収集しようとは思わないのは事実だ。

 しかし女体の造形以外に、興味が全くないわけではない。


 ただ、関心を引くような人がいないだけで。



 それに、女性の名前を僕の方から尋ねる時だって、たまにはあるぞ。

 昼休みのメガネの先輩とか。


 後日改めてフィッティングをする時や、経過観察のために必要だからと聞いておいた。



 ……あぁ、そうか。

 純粋に業務関連外となる女性に対しては、興味を持つことが少ないのか。


 家族を除くと、過去、皆無と言っても良いかもしれない。



「シスカ」


「ん?

 なに??」


 ガンちゃんが名前を呼んでくるなんて、珍しい。


 普段は男子生徒には‘’アンタ‘’と言う。

 女子相手でも、苗字か同様に‘’アンタ‘’呼びだ。


 母さんの知り合いって事で何度か家に来たことはあるが、我が家で暮らす人間は全員、当然苗字が同じ‘’瀬野‘’だ。


 苗字で呼んでたら、誰を指してるのか分からないじゃん。

 なので家の中でなら名前で呼ばれることはあったが、学校では初めてじゃないだろうか。



「違うわよ。

 あの子の名前。

 シスカ サラって言うのよ」


 ガンちゃんの告げた名前に、一気に脳みそが活性化される。


 ……その名前に、聞き覚えがあったからだ。



 慌てて保健室利用履歴の台帳を見る。

 最新の、一番下に書かれた名前。


 一年三組敷香咲良(しすかさら)



 ……間違いない。

 僕の記憶と照合された女の子の名前と、一致する。


 だけど……嘘だろ?



 彼女は……死んだはずだ。

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