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とある執事の日常 ~お嬢様の中の人は多分ギャル~  作者: コシノクビレ
第三章 セーラ服の女神

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第四十一話 古代神殿の試練 ー中編ー

 守護者が動き出す前に、俺は素早く周囲を確認する。


 祭壇の間は円形で、直径はおそらく五十メートルほどあるだろうか。天井は遥か上にあり、柱が八本、円周に沿って立ち並んでいる。


 守護者は祭壇の前に立ち、まるで動く石像のようにこちらを見据えている。


 ゴゴゴゴゴゴ――


 低い音が響き、守護者の身体から石の破片が剥がれ落ちる。その下から現れたのは、ミスリルのような金属光沢を持つ、巨大な身体だった。


 高さは五メートルを超える。


 全身を覆う金属製の鎧。両手に握られた、人間の背丈ほどもある巨大な剣。そして額には、四つの魔法陣が刻まれている。


 赤く光る目が、俺たちを捉えた。


『依代を求める者よ。力を示せ』


 声が、頭の中に直接響く。


「全員、戦闘態勢!」


 俺が叫ぶと同時に、全員が武器を構える。


 お嬢様が気にするとは思えないが、緊急時なので言葉が崩れているのは許してほしい。


 セバスチャンが細剣を抜き、俺の左に立つ。


「先ほどの試練は心の強さを試されたという訳ですか」

「ああ、数発打ち込めば強力な攻撃耐性にすぐ気付く。その考察以外考えられない」


 俺は剣を抜き、守護者を睨む。


「あれで試練が終わっていたらあの地獄の6日間が無駄になるところだった」


 思い出したくない修行をつい思い出し、顔をしかめる俺とセバスチャンだったが、視線は守護者から切らさない。


「バルにゃんとかだったら気付かず永遠と攻撃してそうw 脳みそ筋肉で出来てるし」


お嬢様が杖を構えながら、軽い調子で言う。


「そ、そそ、そうですわね」


 オクタヴィア嬢の声が妙に上擦っている。


 思わず視線を向けると、彼女は大剣を握りしめながら汗だくで目線を泳がせていた。………見た目は可憐な少女だが、残念ながらうちのお嬢様と同じく普通ではなさそうだ。


 だが、今はそれを追求している場合ではない。


 いよいよ守護者が、仕掛けてきた。


 巨大な剣が振り上げられ、そのまま真下へと叩きつけられる。


 ドォン――!


 衝撃波が広がり、地面が砕け散る。俺たちは咄嗟に散開し、攻撃を回避する。


「お嬢様、バフを!」

「了解ー!」


 お嬢様が新しい杖を掲げると、その先端が眩く輝き魔力が渦を巻く。


「全員全マシマシ! 多め硬めー!お残しは許しまへんで~」


 色々混ざっている上に時代を感じさせられる。


 瞬間、光が俺たちを包む。


 身体が軽くなり、魔力が全身を駆け巡る。筋力が、速度が、防御力が、上がっていく。


 グリムとセリオスが作った杖の性能に加え、お嬢様の身体理解がバフの効果を跳ね上げている。今までのバフも凄かったが、それと比べても効果が段違いだ。


「セバスチャン!」

「承知しました!」


 俺たちは左右から守護者へ突撃する。


 守護者の動きは遅くはない。だが、我が両親と比べれば雲泥の差である。


 俺は影の魔力を剣に纏わせ、大きな剣を上段に構える守護者の足を狙う。


「影断ち!」


 黒い斬撃が空気を裂き、守護者の足に命中する。


 ガキィン――


 けたたましい金属音が響き、守護者の身体が大きく揺れる。手ごたえ十分だ。


 すると、守護者の額の魔法陣が一つ、淡く光った。


 間髪入れず、セバスチャンの攻撃が続く。


「水月!」


 水の魔力を纏った細剣が、守護者の腰部に突き刺さる。


 再び金属音。そして二つ目の魔法陣が光る。


 その隙にオクタヴィア嬢が大剣を振りかぶる。


「炎よ!」


 非常にシンプルな掛け声により炎の玉が飛んでいく。


 ドガァン――


 凄まじい衝撃だが三つ目の魔法陣はまだ光らない。


「よーし! あたしも負けないよぉ!!!」


 最後にお嬢様が勢いよく杖を振り上げ、守護者に向かって走る。


 そして――


「えい!」


 可愛らしく杖で守護者を叩く。


シュン…


「え? あれ?」


 光っていた魔法陣が、全て消える。


「「「え!?」」」


 俺たち三人の声が重なる。


「あれ? なんか消えちゃったんだけど」


 動揺が広がるが、考えている暇はない。


 守護者が再び剣を振るい、俺たちは散開する。


 そこから、試行錯誤が始まった。


 俺とセバスチャンが攻撃し、魔法陣を二つ光らせる。オクタヴィア嬢が今度は大剣で攻撃し三つ目を光らせる。そしてお嬢様が攻撃すると――また全て消える。


 次は順番を変えてみる。オクタヴィア嬢、セバスチャン、お嬢様、俺の順。結果は変わらない。


 セバスチャンの攻撃により二つ目の魔法陣が輝き、お嬢様の攻撃、最後に俺が攻撃をすると、その瞬間光っていた魔法陣が消灯する」


「いやなんでやねん!」


 お嬢様が思わずツッコむ。


「あたしだけハブられてんの!? マジありえないんだけど!」

「い、いや、今回は最後私が攻撃したら消えたのでお嬢様のせいではないかもしれません……」

「でも、うちだけまだ一度も光らせてないよ!?」


 確かに。俺は守護者の攻撃を回避しながら、額の魔法陣を凝視する。


 四つの魔法陣。


 四つ目はまだ分からないが、今の所それぞれが異なる色で光っている。


 俺の攻撃で光るのは黒。セバスチャンは青。オクタヴィア嬢は赤。


 そして……お嬢様は……?


 輝くときと輝かないときの違い、輝いていた魔法時が消灯する時の共通点は…


「お嬢様、一つ試してみたいことがあります」

「何?」


 お嬢様が振り向く。まだ少し拗ねた表情だ。


「私が止めるまで攻撃を続けて下さい。オクタヴィア嬢とセバスチャンは攻撃は控えて下さい」

「んーよく分からないけどわかったー!」


 お嬢様は杖を構え、光の矢を連続で放つ。


 キュインキュインキュイン――


 光の矢が守護者に次々と命中する。


 一発、二発、三発……十発……二十発。


 ようやく、魔法陣が一つ、淡い金色に光った。


「あ! やっと光った!」


 お嬢様が嬉しそうに叫ぶ。


「お見事ですお嬢様、あとはお任せください! セバスチャン!!」

「あいよー!」

「お任せください!」


 お嬢様の攻撃と入れ替わるようにセバスチャンが猛攻を仕掛けると、すぐさま二つ目の魔法陣が輝き始める。


「オクタヴィア嬢!」

「承知しましたわ!」


 すぐさまオクタヴィア嬢が大剣の一撃を喰らわす。これで三つ目。


 最後は俺の番。


 守護者の額の4つの魔法陣はそれぞれ異なる属性に紐づいており、光らせるには一定のダメージが必要になる。また、一度攻撃した場合は、その人間が光らせるまでに他の人間が攻撃してしまうと、それまでのダメージがリセットされるのではないか。


 オクタヴィア嬢のあとのお嬢様の攻撃、お嬢様の攻撃のあとの俺の攻撃、消えた状況全てを考えるとそれ以外考えられない。

 

 となると、三つ目まで順調に魔法陣が輝き、残る魔法陣はあと一つ。


「ぅおらぁぁぁぁぁあああああ!」


ガキィン――


 全員が見守る中、、、


パァ


 ビンゴだ。二つ目の試練は純粋な武力、それもチーム力ではなく個の力。それを一人ずつ証明しなければならなかったのだろう。


「ペカったぁぁあ!」


 ”ペカる”は話が大分変ってくる。黙っていて欲しい。


 何はともあれ、ついに四つ全ての魔法陣が光った。


「尊い!」

「やりましたわ!」

「オクタお嬢様お見事です」


 それぞれ思い思いに喜びを表現する。が、喜びも束の間――


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


 守護者の身体から、圧倒的な魔力が溢れ出したかと思うと、その全身が眩い光に包まれ、身体が更に一回り、いや二回り以上大きくなる。


『四つの魂、その力を認めよう。勇敢なる戦士たちよ――我が真の力を見せよう』


 守護者の威圧感が、桁違いになる。


 先ほどまでとは別物だ。


 魔力の濃度が、密度が、全てが異次元になっている。これはまずい……。


「テンションMAXぅぅぅぅ!!」


 いや、もうマジ黙ってくれ。いや腰抜かして身動き取れなくなるよりはマシかもしれないが、くれぐれも無謀なことだけは控えて欲しい。


「これぞラスボス感! マジ燃えるー!」

「れ、レティシア様、そういう場合ではなさそうですわ」


 オクタヴィア嬢が引き攣った笑みを浮かべる。


 セバスチャンも、珍しく冷や汗を流している。


「クラウス様……これは……」

「ああ。一撃でも受ければ終わりだ」


 守護者が、巨大な両手剣を振りかざす。


 その威圧感は、先ほどとは比較にならない。


 空気が、震えている。


「散開!」


 俺が再び叫び四人は咄嗟に飛び退く。


 ドゴォォォォォン――!!


 剣が地面に叩きつけられ、祭壇の間全体が揺れる。


 衝撃波が広がり、俺たちは吹き飛ばされそうになる。


 柱が一本、根元から砕け散った。


「これは……一撃でも受ければ終わりですね」


 セバスチャンが息を呑む。


「どうすれば……」


 オクタヴィア嬢が剣を握りしめる。


 その時、お嬢様がふと思いついたように叫んだ。


「オクちゃぁぁぁん!」

「は、はい!?」


 オクタヴィア嬢が驚いてお嬢様の方を振り向く。


「例のあれやってよ!」


 瞬間、オクタヴィア嬢の顔が真っ赤になる。


「え、えぇ!? い、今ですの!?」

「今でしょ! お願い!」


 お嬢様が真剣な表情で言う。


 ”例のあれ”とは何だ?


 オクタヴィア嬢には伝わっているのか、何故かその顔は耳まで真っ赤で、俯き今にも泣き出しそうだ。


「わ、分かりましたわ……」


 震える手で、大剣を握りしめる。目を閉じ大きく深呼吸し……覚悟を決め面を上げる。


 そして―― 

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