終末予言
伸ばされたペラさんの手はとても美しく。
思わず、私が手を伸ばしてしまいそうになった。
だが、その気持ちを抑えながら二人の様子を眺めた。
すると、シューさんがペラさんと握手をした。
「あなたとは仲良くできないとは思いますが、手を取り合う事は必要だと感じます」
シューさんの言葉はどこか、心象の悪い様子だった。
しかし、ペラさんは笑った。
「・・・・・・ふふっ、面白いわねあなた」
仲良くはできないけど手は取り合いたい。
そんな事を言いながら握手する二人は歪に見えた。
そうして、私達は、当初の目的のために図書室の地下へと場所を移した。
図書館地下へと到着すると、ペラさんは、この場所に訪れたことがなかったのか、あたりを見渡しながら興味津々といった様子を見せていた。
相変わらず人の出入りが少ない図書館の地下で席に着くと、ペラさんは私の隣に座り、ペルツさんは私の正面に座った。
するとすぐにペラさんが口を開いた。
「それで、シューはどうしてベリル屋敷にやってきたの?」
「私は大角さんとお話しがしたくて来たのです」
「へぇ、どんなお話?」
「これからの未来についてです」
「未来?」
「はい、この先我々が直面する運命を伝えておきたいのです」
「へぇ、それはどんな未来、運命なの?」
「・・・・・・あの、私は大角さんとお話しに来たのですよ」
シューさんは少しむすっとした様子でペラさんを見つめた。
するとペラさんは「あら、そう」と、はにかみながら返事した。
なんだか不穏な空気を感じ取った私は、すぐさまこの場を和ませることにした。
「え、えっと、私はシューさんの話をちゃんと聞いたいますので、どうぞそのまま続けてください」
私がそう言うとシューさんは、私に対しては、不安そうな表情を見せた。
「そうですか、大角さんがそう言うのであれば続けます」
「はい、お願いしますシューさん」
「単刀直入に言うと、この世界は、もうすぐなくなってしまいます」
ペルツさんは、そのかわいらしいお口からとても軽やかに衝撃的な単語を吐き出した。
それにより、一瞬でその場の空気が固まり、思わず生唾を飲み込むと、彼女は続けて喋り始めた。
「破滅の引き金は急速に成長し始めた邪悪なものであり、ありとあらゆるものを巻き込む事になります。その運命から誰一人逃げることはできません」
果たしてこれは何かのおとぎ話か何かと思って聞いた方がよいのだろうか、それとも真剣に向き合うべきなのだろうか?
とにかく、どちらかと言えば、平和ボケした私の頭では、彼女の話にはついていけなさそうだった。
しかし、隣にいるペラさんはどこか興味深そうな様子で、シューさんをじっと見つめていた。
「ねぇ、それは本気で言っているの?」
「私は約束を守るために、そして古代人としての使命を全うするために地上に出てきました。当然本気の話です」
「終末論っていうのは、退屈を嫌う私にはきょみのある話題だから、思わず信じてしまいそうになるけれど、何か根拠でもあるのかしら?」
「我々古代人に伝わる終末論を今から語ります」
なんだか緊迫感あふれる状況に緊張していると、突如として声が響き渡ってきた。
「その話、私にも聞かせろっ」
会話に割って入ってきたのは声の主は、真っ赤な髪色をした小柄な人だった。
その人は小さな体と大きな態度をしながら現れた。その様子はどこか校長先生を彷彿させた。
「【占星学】の【天川・ローズ】だ、確かお前は古代人の魔女見習いだったな、実に興味深い話をしているなっ」
そういいながら先生私たちのもとへと歩み寄ってきた。
彼女の表情はどこか険しいものだった。
そして、シューさんに興味津々といった様子であり、真っ先に彼女に詰め寄った。
「お前の名前は?」
「シュー・ペルツェンと言います」
突然の出来事にペルツさんも少し驚いた様子を見せていた。
当然私も驚いているし、占星学の先生と初対面した事に、少しワクワクしていた。
「そうか、で、古代人の言い伝えとやらでもうすぐこの世界が破滅すると言うのか?」
「世界の破滅は我々の課題であり、共に乗り越えていかなければならない任務でもあります。そして善悪を超越した人々が待ち望んだ理想郷を完成させる事になります」
天川先生は腕を組み、何度かうなづきながらペルツさんの話を聞いていた。
その様子はとても真剣であり、よくある予言に対して真剣に向き合っているかのようだった。
「もう少し詳しく聞かせてくれ」
「混沌とはすなわち【全】だと語られています、かつて、均衡を生み出すために必要だった境界が緩み、この世の、あらゆるものが溶けあう事になります。それは、繰り返される創世の前兆です」
「創世の前兆か、興味深い・・・・・・他には?」
「始まりの合図は静かです。夜空が一層近くなり、太陽に嫌われた無垢なる少女が日の元に現れる。
それから、後を追うように43人の王子達が太陽を取り戻しにやってくる。その時、我々の約束は果たされるであろう、と、予言には記されています」
まるで絵本の読み聞かせでも聞いているかのような気分になりながらも、どこか納得のできない曖昧な言い伝えに頭を悩ませていると、思わず口をはさみたくなった。




