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禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


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困ったときは風頼み

 そう思うと、ほんの少しだけアルバ様に同情した。

 そして、この状況に少し不満を感じた。


「あ、アルバ様は真剣そのものでしたっ」


 ふと出た言葉、その言葉を吐いてしまった口を、すぐに手でふさいだ。


 しかし、その声は確かに師匠に届いた様子であり、彼は私をじっと見つめてきていた。その表情は堅く、怖さを感じた。


「すみません、余計な事を言ってしまいました」

「いい、弟子がそう思ってくれている事を俺は嬉しく思う、俺がやった事はあまりに子どもじみていたからな」

「・・・・・・え?」

「実のところ、俺はアルバに危機感を感じている」

「危機感?」

「あぁ、大切な同胞であるが故に、優秀であるが所為に、俺はアルバに魔女として大切なものを見つけてほしいと思っている」

「大切なものというのは一体何でしょう?」

「アルバは今、高みを目指すために知識と力を際限なく手に入れようと必死になっている。

 それは悪くない事だが、その道はあいつにとって破滅へとつながる危険な道だという事だ」


 不穏な言葉が次々とあふれ出てくる。


 しかし、師匠の顔は真剣でありその言葉一つ一つに大切なメッセージが込められているように思えた。


「新たな道を見つける事、そして、その道を整備し、誰もが歩けるようにすべきだ、それは、知識と力のある者の宿命であり、そうあるべきだと、俺は思っている。

 このままだとあいつは、誰もついて来れない、茨の道を突き進み、闇に吞まれてしまうかもしれない」

 

 私は師匠の言葉に込められたメッセージを理解しようと試みた。


 たくさんの言葉が頭の中がおぼれてしまいそうになりながらも、私は一つの答えを思いついた。


「つまり、一人で抱え込むなという事ですか?」


 私の言葉に師匠はびっくりした後、かけている色眼鏡をスッと上げて頭にかけると私に歩み寄ってきた。


「そうだ、それこそ魔法の根源たる部分だっ」


 興奮した様子の師匠はどういう訳かその場で涙を流し始めた。


「し、師匠?」

「いやぁ、弟子と出会ってまだ間もないというのに、こんなにも深い所でつながりあえる関係性になれるとは、こんなに嬉しい事はない」

 

 どうやら私の答えは師匠の心に強く響いた様子だった。

 しかも、涙を流すほど感動してくれている事に驚いた。


「俺たちは今、言葉というコミュニケーションをせずともつながりあえた、現代人が忘れてしまった最古のコミュケーションだ」

「な、なるほど」


 私は師匠の言葉たちにただ相槌を打つ事しかできなかったが、師匠がうれしそうなのは微笑ましくあり。

 私もどこか師匠に認めてもらえている様な感覚に喜びを感じていた。


「いやはや、思わず興奮して語ってしまったな、すまない弟子よ許してくれ」

「いえいえ」

「しかし参った、こんなにも愛らしい弟子がいるとついついおせっかいを掛けたくなってしまう。しかし、それでは弟子の純粋で無垢な好奇心と成長を妨げてしまうかもしれない、あぁ、師匠になるというのはこんなにももどかしい事なのか」


 師匠は天を仰ぎながらあたふたとしていた。

 その様子はどこか新鮮であり、暗い雰囲気を壊した。


 そうして、師匠はしばらく思い悩んだ後、決意したかのように「よし」と声を上げた。


「決めた、決めたぞ大角さん、いや弟子よ」

「はい、なんでしょう?」

「いつでも頼ってくれ」


 師匠は随分と緩んだ表情をしながら笑顔でそう言った。


「え、いつでも頼ってよろしいのですか?」


 私がそう言うと師匠は険しい顔になった。


「いや、やっぱり出しゃばるのは良くないかもしれない」

「え、えーっと」

「あーだめだ、わからん、今までこんな事したことなかったから、わからん」

 

 師匠は頭をかきむしりながらそう言った。

 つくづく感情の起伏が激しい人だ。

 しかし、その様子は面白く人間味があふれているように見えた。

 そう思って見ていると、師匠は突然スンッとおとなしくなった。

 もう、この場所は師匠の独壇場であり、一人芝居でも見ている様だった。


「いや、大切なことを忘れていたよ」

「大切な事ですか?」

「風の声を聴くんだ」


 それは不思議な言葉だった。

 聞きなじみがなくどこかファンタジーな表現であり。

 私は思わず心を揺さぶられた。


「それは、どういう事でしょうか?」

「困ったときの風頼み、俺たち風属性に所属する者は、みなこの教訓を心に秘めているものだ、覚えておくといい」

「あの、風の声を聴いたらどうなるのですか?」

「それは聞いてのお楽しみだ、きっと助けてくれるだろう」


 師匠はまるで話をうやむやにしている様な言葉で締めくくった。


 半信半疑に思える不思議なアドバイスに困惑しながらも、師匠は一息ついてこの場を去ろうとしていた。


「じゃあ俺はそろそろ・・・・・・あぁ、それから安心してくれ、俺はアルバを大切に思っているからこそ今日ここでこうした事をした。それだけなんだ」

「そうなんですね、それを聞いてなんだか安心しました」

「あぁ、じゃあまた」


 師匠の言葉に私ひとまず安心した。

 それから、私は師匠と別れ再び女神像の近くで鍛錬をつづけることにした。

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