挫く
その二人とは、仲睦まじげに歩いてくる師匠とアルバ様の姿だった。
二人は談笑しながらやってくると、私の姿に気づいた様子を見せた。
「おっ、大角さんじゃないか、ちょうど良い所に」
師匠は気さくに話しかけてくれた。
だが、アルバ様はあからさまに不機嫌な顔をしながら私を見つめていた。
師匠は、私の持っている杖に目を向けながら歩み寄ってきた。
「ほぉほぉ、杖道の練習かな弟子よ」
師匠は顎をさすりながら私の近くまでやってくると、アルバ様に聞こえない位の声つぶやいた。
「はい、構えすらろくにできないものですから、しっかりと基礎から頑張ろうと思いまして」
「そうか、そいつは良い心がけだ。杖道は魔女としての体を鍛えるために必要なものだ、無理せず継続を心がける事をすすめるよ」
「はい、ところで、お二人はどうしてこちらにいらしたのですか?」
「あぁ、実はアルバが【キン】に興味を持ってね」
師匠の言葉を聞いて私は心臓がキュッと締め上げられた感覚を覚えた。
思い返せば地下庭園で【ナギ】の呪文を使ったことは記憶に新しい。
もしも、それが、アルバ様に影響を与えていたとしたら、アルバ様が【キン】に興味を抱いてしまったのは私の責任になるかもしれない。
「あのぉ、もしかしてこの間の出来事のがきっかけだったりするのでしょうか?」
「あぁ、地下庭園での出来事かな?」
「はい」
「多分、その時にかなり影響を受けたらしくてな、しつこく俺に聞いてくるんだよ」
「す、すみません、私が身勝手な事をしたばっかりに」
「その点は心配していない、むしろ、そのおかげで地下庭園から脱出できたはずだからな、俺もあそこへはよく行くから、事情は分かっている」
「そうでしたか」
「あぁ、ちゃんと秘密は守られている。だが、困った事にアルバが諦めの悪い男であり、向上心の塊の様な男だ。
興味があるものには、とことん食らい尽いてくる、だから、そいつを少しばかり打ち砕こうかと思っているのさ」
何やら不穏な言葉が聞こえてきて少し戸惑った。
だが、ここでしびれを切らした様子のアルバ様がこちらへやってきた。
「リードさん、彼女と何を話し込んでいるんですか?」
「ん、あぁ、大角さんが杖道の鍛錬をしていたからちょいとアドバイスをしていただけだ。さぁ、いくか」
「え、あぁ、はい」
師匠は自らのリズムでこの場を取り仕切り、女神像の方へと向かっていった。
そして、アルバ様はわずかに私に目を向けた後、師匠の後を追いかけた。
なんだか、よからぬことが起こりそうな状況の中。
私は鍛錬に集中する事ができずに、二人の様子を眺めてみたくなった。
ちょうど近くの出来事であり、会話の内容もしっかりと耳に届く距離だ。
そして、私は耳を済ませることなく二人の会話を聞いた。




