表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/70

杖の仕組み

 リチャードさんの親身な対応のおかげか、杖道に関する意欲が高まった私は、杖道の実践授業が終わった後。


 自らの杖を肌身離さず常に持ち歩いてみる事にした。

 最初は、杖を持ち歩くことに抵抗を覚えた。


 しかし、学内を見ていると、思いのほか杖を片手に歩いている人がいたり、中庭で杖をクルクルと器用に回しながら持っている人も見かけられた。


 時には本格的に杖道の訓練をしている人もいた。


 そして、今更ながら魔女見習いにとって杖というものが親身なものだと認識した。

 私は周囲に溶け込めている事に幸せを感じながらも、その輪には入っていく勇気がない。

 だがら、自己鍛錬のためにベリル屋敷へと戻って杖道の構えの訓練をやってみる事にした。


 ベリル屋敷の裏庭、女神像と動くアザミがある陰気な場所。

 ここは人が訪れることはほとんどなく、一人でいるには最適な場所だ。

 そうして、私は心を落ち着かせながら杖道の基本の構えをとってみた。


 構えをとるだけでも、下半身へ負担がかかる。

 私は、今すぐにでも座り込んでしまいたくなった。

 けれど、何とか持ちこたえながら鍛錬に励んでみた。

 すると、突然何者の話しかける声がした。


「わっ」


 思わず声を上げてしまい、あたりを見渡してみた。

 すると、そこには誰もいなかった。

 代わりに、女神像の周りにいるアザミが私の声に反応してざわめいた。

 静寂の中、胸元から控えめな声が聞こえてきる事に気づいた。

 そして、それが、ネックレスに宿る【幻獣】の【スー】のものである事に気づいた。


「あっ、スー?どうしたの?」

「いやぁ、カイアが杖道の訓練をしているものだから思わず話しかけたくなってね。驚かせて悪かった」


 二人きりの時はたびたび会話することもある相手。

 だが、いきなり話しかけられるのは、いまだに慣れていない。


「そうだったんですね、少し驚いただけですから大丈夫ですよ」

「そうかい、それよりもカイア、杖道は鍛錬の一つだがその杖にはどんな役割があるかは知っているかな?」


 突然の質問に対して私は持っている杖を見つめながら少しだけ考えてみた。  

 しかし、質問の答えとなりそうな言葉が見つからなかった。

 なので、座学で学んだ知識を口にすることにした。


「杖は魔女にとって大切な護身道具です、そしてこれは練習用の杖です」

「そうだね、しかし、君の持っている杖は鍛錬用とは言いながら、杖頭と石突の部分に特殊な細工がされている」

「え、そんな細工がされているのですか」

「あぁ、それをくれた人は君の事をとても気にかけているのだろうな」

「雄才様が私を気にかけてくださった・・・・・・?」


 遠い存在だったはずの雄才様。


 それが、離れて過ごす事になり、初めてその存在を身近に感じられる様になるのは、とても不思議な感覚だった。


 けれど、スーが言った事に私はとてもうれしい気持ちになっていた。


 それは、私という存在が少しでも雄才様から気にかけて貰えたかの様な、そんな小さな喜びだった。 


「随分と嬉しそうだね、カイア」

「い、いえ、なんだかほっとしたというか、私はいてもいいのだという気持ちになれたと言いますか」

「おやおや、随分と気の小さい言葉を口にするんだねカイア、君はいてもいいんだよ」

「そ、そうでしょうか?」

「もちろんだ、私はいつだって君の味方だ」


 それは、まるで恋物語に出てくる素敵な男性の甘い言葉の様であり。


 私は、それがあの素敵な一角獣の口から出た言葉だと思うと、より一層魅力的に思えた。


「な、なんだか照れてしまいます」

「照れることはない、それよりもその杖を大切にするんだよカイア」

「え、もちろんです、練習用とはいえこれは雄才様からいただいた大切な杖です、肌身離さず体の一部の様に愛します」

「それはいい、では話を戻すが杖には魔法を受け止める力があるという事は知っているかな」

「魔法を受け止める?」

「そうだ、しかし、これはあくまでも君の特殊な杖を前提に話すことだから、それを忘れないでくれるかい」

「はい」

「いわゆる杖頭、上を向いた部分は魔法を受け止め吸収する力を備えている。そして石突の部分は杖頭で受け止めた魔法を放出する力がある」

「なるほど、では、もしも魔法をかけられそうになったら杖で対処することが可能という事ですか?」


 そうして、私は杖をくるくると回してみた。


「そうだ、さらに言えば、杖の中間にあたる杖幹では魔力を留めることができる」

「留めるというのはどういう事でしょうか?」

「杖頭で魔法を吸収し、そのまま石突から魔法を受け流すのではなく、杖幹で留めることで相手の魔力を利用することも出来るという事だ」

「へぇー」


 思わず出た感嘆の声にスーは静かに笑った。

 その様子を見て私は思わず顔が熱くなった。

 しかし、それ以上に興味深い言葉の数々に私は夢中になっていた。


「その、とどめておくのはどうすればよいのですか」

「杖をクルクルと回すんだ、そうすれば魔法を杖に留まる」

「え、回し続けなければならないという事ですか?」

「必ずしもそうではないが、そうした方が安全だという事だ」

「安全ですか、安全はとても大切なことです」

「そうだ、そして・・・・・・」


 スーとの会話を楽しんでいると、誰かがやってくる気配を感じ取った。

 そして、すぐにスーとの会話をやめて気配のする方向を見た。

 すると、ちょうど二人の人の姿が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ