武道着と杖
ペラさんの言葉に私はすぐさまその通りに動こうと思った。
だが、突如として服の袖が引っ張られた。
一体何事かと袖に目を向けた。
すると、そこには不満げな様子で私のの袖をつかむモモチの姿があった。
「なぁカイア、お前も体を動かすのは苦手だろ?」
「それはそうですけど」
「人には得手不得手がある、無理に体を動かして怪我でもしたらどうする。そんな事になるより、ここで本を読んで知識を身に付ける方がよっぽど有意義に決まってるだろっ!!」
確かに共感したくなる言葉だった。
けれど、私はそれ以上に杖道というものに興味があった。
だからこそ私はモモチの誘いを断った。
「あの、手を離してください」
しかし、モモはまるで意地でも離さない様子でぎゅっと握りしめていた。
だが、その手はペラさんによって強引に引きはがされた。
挙句の果てにはモモチはペラさんに頭を叩かれていた。
「いい加減にしなさい、つべこべいわずについてきなさいっ」
そうして二人は図書室を後にして、私もそのあとを追った。
自室に戻ってすぐさま武道着に着替えた。
そして、クローゼットの中に保管されている杖に目を向けた。
一本はきれいな装飾がされた杖であり、もう一つは質素なものだった。
おそらく質素な方が練習用の杖なのだろう。
そう思って質素な杖を持って部屋を出た。
部屋を出ると、すぐにペラさんとモモが待っていた。
モモチはふてくされた様子で武道着を着ていた。
だが、その姿はとても似合っており、思わず見惚れてしまう程だった。
「モモチ、武道着とても似合ってるよ」
「ふんっ、そんなこと言われてもうれしかないぜ、マジで最悪の気分だ」
モモチは不貞腐れた様子でそう言った。
そうして、私たちはペラさんの案内のもと武道場へと向かった。
そこには、すでに同期の魔女見習い達が集まっていた。
どこか、緊張感のある雰囲気が漂っている武道場の雰囲気。
その様子に少しばかり飲まれそうになった。
しかし、視界の端にピョコピョコと動くものが見えた。
私は、すぐにその違和感のする方向を見た。
そこには、先ほどまで一緒に話していたシューさんの姿があった。
彼女は耳をピコピコと動かしながら一人ぼっちでたたずんでいた。
その様子を見て、すぐに彼女のもとへと行きたくなった。
だが、その前にペラさんが私に話しかけてきた。
「カイア、ちょっといい?」
「はい、なんでしょうか?」
「本当は杖道について色々と教えたかったのだけれど、アゲハの事が心配だから彼女の所に行きたいの」
ペラさんは申し訳なさそうに両手を合わせながら私にそう言った。
「え、えぇ、お気になさらずどうぞ、また今度、機会があればぜひ」
「えぇ、もちろんよ、じゃあね」
そういうとペラさんはいそいそとこの場を離れていった。
ヤグルマ先生との一件の後。
ペラさんはアゲハさんの事を気にかけている様子だった。
事あるごとに彼女のもとへと足しげく通っている様であり。
かなりアゲハさんを心配しているらしい。
更に、その事でアルバ様との関係が悪化しているという話も聞いた。
あぁ、アルバ様と言えば・・・・・・
あの一件以降、アルバ様と顔を合わすことはあれど挨拶も会話も無い。
どうしてこんなことになっているのだろう。
もしかすると私がいつまでも【アルバ様】と呼ぶのがいけないのだろうか?
でも、それが幼い頃からの習慣であり、そう呼ぶべきお方。
それを辞めろと言われるのであれば。
私は、彼の事をなんてお呼びしたらよいのだろうか?
そんな事を思い悩んでいると、突如として警笛の様な音が聞こえてきた。




