古代人
「えっと、一人を除いてということは、どなたかはここによく来られるのですか?」
「はい、髪の長い方がよくここに来ては楽しそうに読書をしていきます。まるで幼い子どもが絵本でも読んでいるかのようで、とても奇妙でした」
シューさんが語る人物は、私の脳内で一人だけ該当している人物がいた。
それは、まさに同じベリル屋敷の同胞である【モモチ】だ。
召喚魔法やモンスについての書物があるという事も踏まえると。
やはり、彼一人しかいないであろうと予想してみた。
「ところで、シューさんもここにいるという事は、モンスや召喚魔法について興味があるのですか?」
「もちろん、私はそれを知りたくてこの学校に来ました」
それはまるで、モモと同じ目的のように聞こえた。
私はそんなミステリアスな存在である彼女。
その様子にすっかり探求心をくすぐられてしまった。
そして、彼女という存在についてもっと知りたくなった。
そんな事を思いながらシューさんをじーっと見つめた。
彼女の灰色の瞳はずっと見ていたくなる。
だが、見つめすぎるのもよくないと思っていると。
彼女はかすかに微笑んだ。
「そんなに見つめられると恥ずかしいですよ」
「あ、あぁ、すみませんすみません」
何度も頭を下げて謝り、再びペルツさんに視線を戻した。
すると、彼女はとてもやさしい顔をしていた。
その様子はまるで旧知の仲である様な安心感を感じた。
「大角さん、そんなに謝らなくてもいいんですよ」
「すみません、つい癖で・・・・・・」
「そんなに私の事が気になりますか?」
「それはもちろんっ」
「どのあたりが気になりますか?」
私はペルツさんの猫耳にしか見えないそれと。
先ほどからかすかに見え隠れする尻尾を指さした。
「もしかして、大角さんは古代人を見るのは初めてですか?」
「古代人・・・・・・?」
聞きなれない言葉。
だが、その意味が何かは分かる様な気がした。
「はるか昔にいたとされる人々のことですね」
「それはつまり、シューさんは私達のご先祖様という事ですかっ?」
「いえ、先祖というよりは兄弟姉妹という表現かと思いますよ」
「姉妹ですか?」
「えぇ、姿かたちは違うかもしれませんが、兄弟姉妹であればいいなと思っています」
なんだか心温まる言葉にほっこりした。
しかし、どうして【古代人】なんて呼び方をされるのかが気になった。
「でも、どうして古代人だなんて呼び方をされているのですか?」
「それは見てわかる通り、私たちは半人半獣ですから」
そうして、彼女は自らの耳や尻尾を動かしながら私に見せてきた。
その様子があまりにも可愛らしく。
思わず撫でまわしたくなる感情があふれ出たが、ぐっとこらえた。
「こ、古代人というのはみな半人半獣なのですか?」
「はい、ですが争いによって途絶えた種もいくつか存在しています」
「争い・・・・・・」
「我々は絶えず争いを繰り返して今に至ります、それは、まるで我々という生き物の運命に思えますが、私はそう思いたくありません」
なんだかとても大切なことを聞いているような気がした。
そして、シューさんから聞いた言葉をしっかりと受け止めた。
「つまり、争うのではなく、話し合いで解決できれば良いのでしょうか?」
「どうでしょう、互いに無関心の方が世界は平和な気もします」
「・・・・・・無関心ですか」
「えぇ、でも、歩み寄る必要もあります。だから、我々は地下から出てきたのです」
「シューさんは、地下に住んでおられたのですかっ」
更に好奇心をくすぐられる状況に、私はもうすっかり彼女の虜になった。
「ここ数十年で我々は地上に上がったのですよ」
「あの、それはどうしてですか?」
「約束の時が迫っているからです」
「約束の時?」
「それはですね・・・・・・ま、また今度のお楽しみということで」
何やらシューさんは気まずそうな顔をした。
そして、隠れるかのようにローブのフードを深くかぶった。
すると、騒がしい音が聞こえてきた。




