慰安パーティ
「しかしまぁ、入学から今に至るまで退屈させないものね大角さん」
教頭先生による話題の矛先は私だった。
彼女は、私に目を合わせることなく天井を見上げていた。
そして物憂げな様子を見せながらため息を吐いた。
「す、すみません教頭先生」
「いいえ、校長の意向だから仕方がありません。ですが、あまりにも異質すぎるのは面倒ごとを増やす原因になってしまいますねぇ」
教頭先生はこれまでの淡々とした口調ではなく。
少しあきれた様子の感情のこもった話し方をしている様に思えた。
そして、教頭先生は私の事をじっと見降ろしてきた。
「いいですか、身の振り方には気を付けることですよ大角さん、あなたはただの魔女見習いではないのですから」
「え、はい」
「それから、私はこれからヤグルマ先生と楽しいお茶会を開いて楽しいお話しをすることになりますが、もしも、あなた達にも非があるようならばすぐに呼び出しますから、その時は覚悟しておきなさい」
教頭先生はどこか意味深な言葉を言うとこの場を去っていった。
その背中を見送ると師匠が即座に口を開いた。
「大丈夫だ、君達がどうにかなる事はおそらくないだろう。むしろ、学校側から最大限のケアが施されるに違いない。ただ、彼女についてはどうなるかはわからないな」
師匠はそう言ってアゲハさんの事を見つめた。
それに対して、ペラさんが手を上げて声を上げた。
「そこは心配しないでくださいリードさん、彼女の事は私がカバーします」
「そうか、それは頼もしいが困った事があったら屋敷の同胞に知らせるなり、遠慮なく俺にも頼ってくれ」
「ありがとうございます、それからカイア」
ペラさんはそう言って私を見つめてきた。
その様子はどこか悲しげであり、なんだか不安になった。
「な、なんでしょう?」
「今回の一件、彼女の事を許してあげてほしいの」
そういうと、ペラさんは俯くアゲハさんの肩に手を置いた。
そして、私はアゲハさんに対して恨みや怒りを感じていない事を伝えた。
すると、ペラさんは優しく微笑んだ。
アゲハさんは再び私に謝罪の言葉を述べて深く頭を下げてきた。
その様子に耐えられない私はたまらず頭を下げた
そうしていると、師匠の小気味よい笑い声が聞こえてきた。
「いやぁ、人付き合いってのは難しいもんだな。だが、それが人を成長させるものでもある。とりあえずは一件落着だ、今日は屋敷に帰って弟子、じゃなくて大角さんの慰安パーティーでもするか」
「わぁっ、またパーティですか?よかったわねカイア?」
師匠の提案にペラさんが嬉しそうにしながら私に微笑みかけてきた。
「ですが、パーティだなんて大げさではありませんか?」
私は大げさな対応に引け目を感じてそう口にした。
だが、師匠はまるで聞く耳を持たない様子を見せた。
「そんな事はない、ベリル屋敷では度々パーティーが開かれるものだ。嬉しい事や辛い事があった時は、みんなで分かち合って狂ったように盛り上がるのさ」
「賛成ですね、俺もリードさんに色々と聞きたいことがありますので」
アルバ様はそう言って。
そして、どこか真面目な顔つきでリードさんをじっと見つめていた。
「ん、俺に聞きたい事があるのかアルバ」
「はい、そこにいる大角さんとの関係や、おかしな呪文について聞いたみたいんです」
「え、おかしな呪文だって?」
二人の会話から不穏な空気を読み取った。
私はすぐに首を横に振って何も秘密を漏らしていない事を伝えてみた。
すると、師匠は「分かった」とでもいうかのように何度かうなづいた。
そして師匠はアルバ様と肩を組んだ。
「いい度胸だなアルバ、俺とのパーティーは夜通しだぞ、ついてこられるか?」
「も、もちろんです」
そうして、ひょんなことから始まった今回の一件はひとまず落ち着いた。
その後は、みんなでそろってベリル屋敷に戻る道中。
一羽のツバメが師匠の方にとまった。
ツバメの口には一通の手紙が咥えられており、師匠はそれを受け取った。
そして、ツバメは教頭先生の使いの鳥だと師匠は教えてくれた。
それから、届けられた手紙を師匠は口に出して読み始めた。
『本件は、ヤグルマ先生の独断専行による重大な逸脱行為であり、その責任は彼女がすべて負う事になる。また、本件にかかわりのある魔女見習い達に非は無し』
そうして、手紙の内容を確認した後。
決着のついた事件の慰労をすべく、ベリル屋敷でパーティが開かれた。
残念ながらアゲハさんが出席するということは無かった。
だが、ベリル屋敷では盛大なパーティが開かれた。
そしてその日、私はそれまでに関わってこなかった先輩達と今回の一件についての話をしながら、たくさんの交流をする事で夜をあかした。




