悪魔的所業
「それで、どうなんですかヤグルマ先生?」
「どう、と言われましても、私はその様な補修をさせた覚えはありません。何を言っているのか分かりません」
急にとぼけた様子を見せるヤグルマ先生。
それに対して師匠は畳みかける様に言葉を発した。
「そうですか、しかし先生は先ほど大角さんに対して無事に帰ってきた、といいましたが、それはどういう意味だったのでしょうか?」
「そ、それは・・・・・・」
「大角さんとロイ君は、どこから無事に帰ってきたのですかっ!?」
「それは、し、知りませんっ!!」
完全にしらを切り通そうとする先生。
その様子は、もはや開き直っており、不満気な顔をしていた。
「ちなみにですが、ここにいる大角さんとロイ君から補修内容についての証言は取れています。勿論、補修の際に用いられた卵もこちらで保管しています」
「な、何のことか一切わかりませんねぇ」
「・・・・・・そうですか、では、ひとまずこの話は置いといて、次は違う問題について話します」
つぎの話に移行しようと最中、突如としてペラさんが声を上げた。
「リードさん、私達からも言いたいことがあります」
師匠の話を遮り声を上げたのはペラさんだった。
こんな緊迫した空気の中でも、堂々とした様子を見せる彼女。
そして、彼女は名も知らぬ魔女見習いと共に師匠の横に立った。
「わかった、さぁ、こっちへ」
師匠の言葉にペラさんは頭を深く下げて感謝の言葉を述べた。
そして、頭を上げて喋り始めた。
「私がここに来た理由は一つ、ここにいる魔女見習いが先生を経由して大角さん《《悪魔的所業》》を行ったということです」
「なにを突然、私は何もしていませんよっ」
ペラさんの口から発せられた【悪魔的所業】という言葉。
その恐怖を覚える言葉に、ヤグルマ先生は強く反発した。
「さぁ、話してくれるかしらアゲハさん」
名も知らぬ魔女見習いは【アゲハ】と呼ばれ、彼女はペラさんの言葉の後に大きくうなづくと口を開いた。
「私は、自らの醜い嫉妬心からヤグルマ先生の言葉に誘惑され、悪魔的所業を行ってしまいました」
その言葉にヤグルマ先生は眉間にしわを寄せて驚いた様子を見せるとアゲハさんに歩み寄ろうとする様子を見せた。
「や、やめなさいあなた、何を言い出すのですかっ?」
ヤグルマ先生の行動に師匠が即座に止めに入った。
その、あまりにも素早い仲裁に先生はすぐさま立ち止まった。
そして、先生の様子が余裕がなくなってきている様に見えた。
「さぁ、気にしないで続けてっ」
師匠の言葉にアゲハさんは静かに「はい」と返事をすると彼女はつづけた。
「私は、先生からある提案を持ち掛けられました。それは、ここにいる大角さんを錬金術の授業中に貶めるというものであり、具体的には、大角さんに実験用の素材を誤って渡すというものでした」
その言葉を最後まで聞いた瞬間。
彼女の姿に見覚えがある事に気づいた。
そう、錬金術の実験で素材を渡してくれたのは彼女だ。
そして、すべてのつじつまが合っていく感覚を覚えた。
それはどこか心地よくもあり。
それでいて、悲しい気持ちになってしまった。
「結果的に、大角さんではなくクアトロさんが彼女をかばったことで、彼女は被害を受けてしまった。そんな最悪な結末を見て、ようやく自分がしている過ちに気づきました」
淡々と喋るアゲハさんはどこか苦しそうな様子だった。
その様子に隣にいたペラさんは優しく彼女の肩を抱いた。
「私は、本当にやってはいけない事をしてしまいした」
そう言うと、アゲハさんは私の方を向いて頭を下げた。
そして「ごめんなさい」と震える声でつぶやいた。
私はその謝罪に対して、まだ整理のつかない心で必死に考えてみた。
しかし、どの様に反応したら良いのかわからず。
その場であたふたしていると、アルバ様が声を上げた。
「お前がやった事は紛れもなく、最低最悪な悪魔的所業だ。謝罪だけで済むと思うなっ!!」
強烈な言葉と思えるアルバ様の発言に思わず彼を見つめた。
すると、アルバ様はとても真剣にアゲハさんをにらみつけていた。
アゲハさんは頭を下げながら「はい」と小さな声でつぶやいた。
すると、そんなアルバ様にすかさず歩み寄ったのはペラさんだった。
彼女はアルバ様に歩み寄り、彼の胸辺りに指を突き立てた。
「あなたに言われなくても、十分にわかってるわっ」
ペラさんは強めの口調で言った。
その後、アルバ様とペラさんによるにらみ合いが始まった。
だが、師匠によって仲裁され、脱線した話は再び元の路線に戻った。




