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禁忌を犯せし魔女見習いは、愛しの王子と幸せになりたい。  作者: しゃこじろー


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異議申し立て

 しばらくの沈黙が続いた後。

 ペラさんが「頭を上げなさい」と言ってきた。

 私はその言葉にゆっくりと頭を上げてみると、彼女は微笑んでいた。


「そんなに真面目に謝罪されたら私もそれに応えなきゃいけないじゃない」

「いえ、私はただ、謝罪の気持ちを伝えたくて・・・・・・」

「わかった、私はあなたの謝罪を受け止めます。そして、私はあなたの罪を許します。これでいい?」


 これまでに経験したことのないやり取りに頭が困惑した。

 私が知っている謝罪は頭を下げて無礼をした相手にこっぴどく叱らる。

 そして、相手が去るまで頭を下げ続けなければならなかった。


 それが、頭を上げて罪を許され、そして微笑みかけられてさえいる。


「もちろん、あなたがもう少し植物についての知識があれば、こんな事にはならなかったのだろうけど。今回の事は無理もない、あなたのせいじゃないわ」


 ペラさんは優しく頭をなでてきた。

 それはどこか懐かしい様な気持ちになった。

 しかし、そんなペラさんは唐突に真剣な表情を見せた。

 

「それよりも問題はここからよ、カイア」

「問題、ですか?」

「えぇ、あなたを嵌めようとした人がいる」

「え?」


 心当たりがあるとすれば、アルバ様が言っていたヤグルマ先生。

 しかしペラさんの様子からして、ここにいる女子生徒が何か関係があるのだろうか?


 そんな事を思って近くにいる魔女見習いに目線を移した。

 すると、彼女は気まずそうに俯いていた。

 しかし、そんな視線に気づいたペラさんが「違うわ」とつぶやき、続けた。


「カイア、彼女が全部悪いわけじゃない、一方的に彼女を責めるつもりはないのよ」

「では、一体どなたが?」

「問題は手引きした人物、私は今その証人として彼女を説得していた所なの」


 証人、そう聞くとなんだか重大な事件の様だ。

 それは、まるでサスペンス小説の世界にでも入った気分になった。


「そうだったんですね」

「えぇ、彼女は快く証人になってくれるみたい」


 ペラさんはそう言ってニコニコと嬉しそうな顔で笑いかけてきた。

 だが、証人になってくれるという魔女見習い。

 彼女は相変わらず視線が合わず、そっけない態度をしていた。


 そうして、場所は移り、私達はヤグルマ先生の研究室へとやってきた。

 すると、ちょうどそこでアルバ様と師匠に出くわした。

 二人は、私たちがやってくるのを持ち詫びていた様子だった。


「遅いぞクアトロ、お前が来ないと話にならないだろう」


 到着するなりアルバ様の言葉が飛び出した。

 すると、ペラさんは慣れた様子で「はいはい暑苦しい」とつぶやいた。

 そして手うちわで自らを仰ぎ、軽くいなした。 


「まぁまぁアルバ、彼女たちもちゃんと来たんだからいいじゃないか、それよりもう一人待たなきゃならない人がいる」


 師匠がアルバ様をなだめる様子を見せた。

 それにしてももう一人というのが誰なのだろう?

 そう思っていると、甘い香りが漂ってきた。

 それはいつぞやに嗅いだことにある匂い。


「あれ、この匂いどこかで嗅いだ事が・・・・・・」


 思わず口にすると、周囲の人達が私の事を見つめてきた。

 しかし、リードさんだけは微笑みながら「おこしだ」と口にした。

 まるで呪文のような言葉を師匠が口にした途端。

 私の背後にすさまじい存在感を感じた。

 振り返ると、そこには教頭先生が立っていた。


「おやおやリード君、こんな所に呼び出して一体何様ですか?」


 その声が聞こえてくると同時に思わず腰が抜けそうになった。

 そして、二度目となる教頭先生との出会いに圧倒された。

 相変わらずの存在感と、張り詰める緊張感。

 しかし、師匠だけは平然とした様子だった。


「教頭先生、俺はただの魔女見習いですよ、何様なんてこれっぽっちも思っていません」

「そう、それで用件は?」

「えぇ、おそらく教頭先生の耳にも入っていると思われますが、ここにいる魔女見習いが、錬金術の実技でちょっとしたトラブルを起こしました。

 そして、その罰としてここにいる大角カイアさんが、地下庭園で補修を受ける事になったんです」


 リードさんは私の肩をポンポンと叩いて紹介するように言った。

 すると教頭先生は、師匠に向けていた目を私に向けてきた。


「おやおや地下庭園で補修とは・・・・・・」

「えぇ、大変な事ですよこれは教頭先生」

「ですがリード君、口ぶりから察するに補修とやらは終わっているのですね」


 教頭先生は嬉しそうに笑いながら私を見つめてきた。

 かと思うと、すぐに師匠に視線を戻した。


「いえ、それは違うんですよ教頭先生」

「どういう事ですか?」

「終わるも何も、今回の補修は明らかに行き過ぎた指導であり、ヤグルマ先生の放任すぎる対応だと俺は強く疑問を感じています」

「そう、それで?」

「俺はベリル屋敷の頭領として、同胞である大角カイアに対する仕打ちを重く受け止めています。

 敷いては、この件の責任者であるヤグルマ先生に本件の真相を問い詰めるべくここに来ました。

 そして、教頭先生にはその立会人になってもらうと共に、この件について平等に裁定をしてもらいたいと思っています」


 つらつらと出てくる言葉。

 その様子に、師匠という人の偉大さを改めて認識した。

 すると、その言葉に教頭先生も納得した様子で首を縦に振った。


「そうですか、あなたがそこまで出張るという事は余程の事なのでしょう」

「えぇ、しかし本件についてヤグルマ先生は全くもって応答してくれません。まるで、後ろめたいことでもあるかのように研究室に閉じこもっておられます。なので、俺たちは研究室にも入れずここで教頭先生を待っていたわけです」

「そうですかそうですか、わかりましたリード君。本件の依頼をこの教頭が責任をもって引き受けましょう」

「本当ですか教頭先生っ!!」

「えぇ、任せなさい」


 好印象な返事にその場の空気は一気に明るくなった。

 そしてリードさんは教頭先生に頭を下げた。

 それにつられて私も頭を下げた。


「さぁ、そこどきなさい見習い達、私が今からその扉を開けますからね」


 そうして、教頭先生は私達をかき分けながらヤグルマ先生の部屋へと向かっていった。

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